ほんとうに世の中には

ほんとうに
世の中には

ヒルやダニのような人間がいた
ヒルやダニに失礼なのだけれど

どうして
そんな人生に耐えられるのか

自分のものではないものを
笑いながら壊し
奪ってゆく

あなたは
心から微笑むことはあるのか

あなたは今
勝ったと思っているのだろう

あなたは今
ちょろかったと笑っているのだろう

あなたを許せない気持ちは
やがて薄れていくだろう

あなたの心の中に溜まり続ける醜い膿は
決して洗い流されることはないのだ

もしもこの先
心から
幸せにしたいと思う誰かが現れたとき
あなたの足下にはその膿が絡みつき
あなたが軽やかに
飛ぶことを許さないだろう

私はあなたをいつか許すけれど
あなたの足下の膿は
溶けることなく薄まることなく
あなたを縛り続けるだろう

あなたがそうやって誰かの血を
耐え難いほど醜い唇で
吸い続ける限り

私ではない誰かが
あなたを許さない限り

数えきれない誰かが
あなたを許さない限り

それでもあなたは
幸せを感じることがあるのだろうか

その人生は
生きるに値するものなのだろうか

欲望

威嚇
虚勢
恫喝

せめて
そんな人生のあり方に
憧れる若い魂のないことを

微笑みのない心に
勝ち負けという価値観に
憧れる若い魂のないことを




世界的な株価の暴落を一つのきっかけに、株式市場で”サタン”と呼ばれた男、貝塚剛は、そのあり余る資産を更に拡大させようとしていた。
貝塚の秘書になって三年目を迎えた牧村は、エスカレートする彼の欲望の引き起こす異常な争いに巻き込まれ、翻弄されていく……。

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