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Affinity Designerで日本語縦書きの荒技!

最初に断っておきますが、これは裏技です。
僕が日本語縦書きしたいケースでは充分実用的ですが、本格的なデザインには向かないと思います。ご承知の上で読み進めて頂けますと幸いです。
(僕の場合:電子書籍の表紙にタイトルなどを入れる用途がメインなので)

さて、Affinity Designer、素晴らしいソフトです。
「これで日本語縦書きさえ出来ればどれほどイラレの牙城を崩す位置に近づけるか」と言われ続けて2年ほどでしょうか。
僕自身、発売された頃からずっと使っていて、それさえあればなあと思っていました。

でも、日本語の縦書きを実装するのって、相当難しいんですよね。
世界的にみれば縦書き文字はごくごく少数派。
そのために開発リソースを割くのはかなり厳しいと想像されます。

日本人が作成した日本語のアプリですら、完璧な縦書き対応を実現しているものは少ないのですから……。

・約物の位置と回転が、種類によって異なる。

例えば、「。」や「、」について見ると──
 横書き:1文字のスペース内で右下にあります。
 縦書き:右上です。向きはそのままですね。
「─」については、
 横書き:1文字のスペース内で、上下センター、左右は文字幅いっぱいです。
 縦書き:1文字のスペース内で、左右センター、上下は文字幅いっぱいです。向きは90度回転しています。


・行間と文字間の考え方を逆転させなければならない。

 文字自体の向きは同じなのに、横書きでは文字の左右が文字間。縦書きでは文字の天地が文字間になります。
 単純な問題のようで、実は結構難しそうなのですよね。
(技術的なことは分かりませんが、縦書きをうたっているアプリで横書きから縦書きに変更すると行間がおかしなことになる場合は、そういうことなんじゃないかと思います)

使っている側はあまり意識していませんが、開発には高いハードルがありそうですね。

となれば、待っていても日本語縦書き正式対応は難しそう。
いろいろといじっている中で、ちょっとした裏技を見つけました。
今回はそれをご報告(前置きが長い!)

方法としては2つあります。
どちらも横書き文字を強制的に縦に整列させる方法ですが、文字間と行間を読み替えることで、それなりに調節も可能です。

まず1つめ。
文字ボックスを用います。


 
とっても簡単ですね。
文字ボックスに文字を打ったら、横幅を一文字分程度に縮めるだけです。
最初から縦に細い文字ボックスを作っておけば、縮める手間も不要です。

次です。
まずラインを引きます。


 
メニューバーの「レイヤー」から「テキストフレームに変換」を選択し、文字を打ちます。
この方法だと、最初から縦書きになっているので見やすいですね。

ということで、どちらの方法もほぼ手間は同じ。
何か有意な差はないかといろいろ見てみましたが、どちらでも好き好きということで。

はい。
え、これで終わりじゃつまらない?

そうですね。

これらの方法には、大きな欠点があります。
vert03

冒頭の内容にあったとおりです。
句読点が全て変な位置にありますし、「──」が横向きになっています。

これを、直していきましょう。
出来るんですよ、ちゃんと(ちょっと面倒ですが)。
まずは読点(、)から。


(ちょっと途中で間違えていますが、それはご愛嬌……)

読点の位置が調整出来ましたね。
左右位置を調整したい時は、改行を挿入して段落を変えてしまうのがミソです。
こうすれば、上下左右とも自由に文字位置を調整出来ます。

次は「──」の回転です。

これは、先ほどのようにはいきませんでした。
残念ながら、オブジェクト自体を分割してちまちま直すしかないようです。


(わざわざ動画にするようなものでもありませんが……。実は、罫線は縦横が別文字として存在しています。今回の場合は、縦用の罫線を打ち直せばいいだけなのですが、ね。「──」「││」)

さて、役に立つか立たないのか分からないような微妙な内容でしたが、お楽しみいただけましたでしょうか?

今回の記事、もちろんAffinity Designerで縦書きしたい人が対象なのですが、もう一つ目的があります。こういう記事が書かれることによって、日本語縦書き需要の大きいことが、Affinityを作っている会社さんに届くと良いなあと思っているのが本音だったりもします。

では、本日はこれにて!

Happy designing!!

センスと技術

「グラフィックデザイナーはなぜミリ単位にこだわるのか?」

こんな質問に対して「なぜも何もない。当たり前のこと」と考えるようになるあたりが、センスを発揮できるための技術のベースラインではないかと思うのです。

いきなり偉そうなことを、とお思いでしょうか?

僕自身、偉そうなことをのたまえるような素晴らしいセンスの持ち主ではありませんし、本職のグラフィックデザイナーでもありません。それはもう、作ったものを見ればわかることなので深くは追いませんが。

でも、デザインを学び、多少は仕事にも生かしながら日々を送っていると、わかってくることがあります。

本当にセンスの良い人は道具を選ばない。でも、技術は仕上がりを左右する。そして道具もやっぱり仕上がりを左右する。
それは、時間の問題でもあるし、自分のこだわりにどこでケリをつけるかというポイントの幅や位置(ポイント=点だけど、その中には大きな揺れ幅がある)が、技術とツールによって簡単に影響されてしまうことがあります。

ひとことで言うと、技術があってツールを使いこなせれば、試行錯誤に掛かる時間が削減できるということ。そうすると、自分の施したデザインに対して完成度を追求する時間の余裕が生まれたりする。その完成度は、手作業でやっていた頃より高いような気もするし、逆に甘くなったような気もします。

最終的な判断をする局面では厳しくなったのかな? 最初のデザインを上げる段階では甘くなったのかな?

極端に言えば、僕が学生の頃はパソコンもなかったし、デザインの全ては手作業でした。
クロッキー帳に鉛筆で何度も何度もアイデアスケッチを描いて、少しずつ理想形を探してゆく作業をどこまで詰められるかが、凡人の僕らに与えられたテーマであり宿命でした。そして、「これだ」と思ってから色を入れる。その時にはもう迷いはなくなっていて、ひたすら筆を動かし続ける。

今は、違います。

いきなり色面を置ける。完璧に真っ直ぐな線で構成された色面を自由自在に変形出来るし、アイデアを瞬時に画面上に落とせます。アイデアがなくたって、何となく画面を埋めることもかんたんです。バランスが悪ければいくらでも調整が効くし、それこそ紙上で行なう作業の何百倍も効率的にデザインを詰められます。

ただそこで勘違いしたくないのは、ツールが描きだしてくれた完璧な図形は完璧なデザインではないということ。

ぱっと見の完成された雰囲気に騙されてはいけないのです。

正解はいくつもあるけれど、どれでも正解なわけではない。ちゃんとした正解は、やっぱりある(いくつも)。

デジタルですべての要素がきちんと配置されていると、それだけでバランスよく見えてしまうことがあって、僕たちの感覚はついそれに騙されてしまいそうになります。

でもね、それは勘違い。そのデザインが何を目指して始められたものなのか、何を意図してその色を選んだのか、何のためにその形があるのか、もう一度立ち返らなければそこに潜む問題は見えてこないのでしょう。

形に落とす前によく考える。ぱっと見にカッコいいふうのものを作ってしまう前に、自分がどうしたいのかもっともっと悩む。そんなことが必要なのかもしれません。

完全アナログの時代、一度塗ってしまった色はもう戻せませんでした。ガッシュを上塗りして修正しても汚くなるばかりで、結局は一からやり直すほかなかったり。だから、僕らは息を止めて──誇張とか比喩ではなく本当にぐっと息を止めて──、白い紙の上に絵の具を置いていったのです。

アナログ時代と現在のデザイン行為の違い。そんなことを考えていたら思い出したことでした。

考え抜いて、決めて、一気に迷いなく描き切る。

そんなふうにデザイン出来たらいいんですけれど、ね。

デザインという行為にとって、今は今で、いい時代です。もちろん時間あってのことですが、ミリ単位の迷いを完璧になるまで調整出来るのだし、絵の具も紙も無駄になりません(いや、でも実は電気代のほうが高いのかもしれませんよ)。文字のスペーシングを調整するときなんて、ミリでも粗過ぎる。コンマ何ミリがデザインの善し悪しを分けてしまいますし。

そう、冒頭で書いた技術というのは、実は手先の技術やデザインソフトを操る技術の話ではありません。

・美しいバランスとは何だろう?

・この色がこのくらいの面積で置かれるなら、あの色はどのくらいの面積にするべきか?

・この色がこのくらいの彩度なら、あの色はどのくらいの彩度であるべきか?

・この形がこのくらいの強さなら、主張なら、あの形はどのくらいの強さにするべきだろう?

・この密度で「主たる要素」が配置されるなら、どこにどのくらいの「空間」を、「抜き」を用意するべきだろう?

僕はデザインの先生ではないので、あまりはっきりとしたことは言えません。でも、こういう基本的な技術を身につけた上にこそ、自分ならではのセンスというものが輝くんじゃないのかな。

そう、思うのです。

ちょっととりとめのない感じになってしまいましたが……。こだわって、考え抜いて、迷い抜いて、いいデザインを創りたいものですね!

では、今晩はこのへんで。

また、明晩!

ヘタウマとウマヘタのあいだに

○○をどうした方がいい。っていうことじゃないんだけど。
ただ、難しいよなあと思った。
誰もが目指しているところに向かって歩いているんだけど、その道筋はいろいろある。

ではまず、表題について自分なりにちょいと定義してみる。

1.技術的にはヘタだけど、センスがあって雰囲気が出ている。なんか良いよな、と思うのが、ヘタウマ。

2.技術的には上手いけど、センスがなくて面白みも雰囲気もない。つまんないなあ、と思うのが、ウマヘタ。

3.技術的に優れ、センスも良い。雰囲気と個性も備えていて、コレは良い! と思わずにいられないのが、ウマウマ。

4.ヘタだし、センスもないよな。どんなに頑張ったってダメなんじゃないの? と思ってしまうのが、ヘタヘタ。

──お伽噺風に、図示してみる。

その旅は、どこへ向かう?
その旅は、どこへ向かう?

 

ヘタウマなひとは、自分にセンスがあることに気がつかないことがままある。

ウマヘタなひとは、自分にセンスがないことに気がつかないことがままある。

ヘタウマなひとは、うまくなりたいと思うことがある。巧くなればもっとずっとうまくいくと、思いたい。
そのままの方が良いかもしれない可能性には、なかなか気づくことができない。

ウマウマなひとは、ただ、好きで続けていたらそうなったのかもしれない。他人の目から見てどんなに努力しているように見えても、
「楽しいからやってるだけだよ」って、
たくまず、力まずに言えるのかもしれない。

ウマヘタなひとは、努力の方向がずれているのかもって、気がつけないのかもしれない。

ヘタヘタなひとは、学ぶことを忘れているのかもしれない。自分を知るには他人を知るのが近道なのかもしれないとは、思わないのかもしれない。

ヘタウマなひとは、罠に落ちやすいのかもしれない。
──巧くなりさえすれば、という罠。


さあ、今のあなたは、今のわたしはどこにいるだろう?
そして、どこへ向かって行こうとしているのだろう?

まず、それを知ることから始めてみよう──か……。
(結論も、アドバイスも何もないけれど)

じゃ、本日のざれ言はここまで!

挿し絵を《容量の軽い》扉絵データにするために、加工しよう。

はい、どうも!
ついに終わりましたよ、挿し絵が!

と、言っても、描くのが終わったという話です。
結局2枚をいちから書き直し、6枚を部分的に修正しました。
本日全ての絵をスキャンし、扉絵にするための加工を始めたところです。これがまた、手間が掛かるんですよね。電子本のデータができるかぎり重くならないようにしたいので、白黒2値のGIF画像にしても汚く見えないよう、明るさなどを調整しています。

今日は、挿し絵などを入れる場合に参考になるかもしれない簡単な画像処理の話をしてみましょう。
では、まず見本を貼りますね。

元のイラストをスキャンし、そのまま扉画像としたもの。画像の大きさは、Kindle用の表紙画像サイズと同じ2,560×1,600ピクセルとしました。

標準画質で保存したJPG画像。データは141KBあります。
標準画質で保存したJPG画像。データは141KBあります(もちろん、ここに貼った画像は縮小したものですが)。

これでは紙の色が暗くて変ですので、明るさを補正します。いろいろなやり方がありますが、今回は「レベル補正」を用います。例はPhotoshopですが、GIMPやKRITA、メディバンペイントでも同様の機能はあります。

Photoshopの「レベル補正」
Photoshopの「レベル補正」

一番右の白い部分が、紙の色(明るさ)を示しています。このグラフの下にある白い上向き三角が、《これより明るいものは無視して》という設定です。紙の色より左側に持ってくることで、それより明るい色は全て真っ白になります。
それだけだと絵の線までつられて明るくなってしまいますので、真ん中の灰色の上向き三角を右に動かします。これはグレーレベルといって、《ここの明るさをグレーとします》ということです。もっと明るい部分をグレーと解釈させることで、黒い線をぐっと締めることが出来るわけです。

せっかくなので、メディバンペイントで「レベル補正」をしたところのキャプチャも用意しました。

メディバンペイントの「レベル補正」
メディバンペイントの「レベル補正」

見掛けは違いますが、考え方は同じです。入力側の右端にある三角を左にずらすことで、紙の色を白くします。線の色を黒く締めるために、真ん中の三角を(こちらの場合は)左にずらします。メディバンペイントの場合は入力と出力に分かれているので、「入力されたグレー値はもっと暗いです」と教えてあげることで、暗い側をより暗くします。
(専門的な説明ではありません。あしからず)

ついでにGIMPの画面も。GIMPでは、名称が「レベル」です。こちらはPhotoshopとほぼ同じですね。さすが、フリーのPhotoshopを目指しているソフトだけのことはあります。

GIMPの「レベル」
GIMPの「レベル」

さて、では次に保存です。
いろいろな端末で、パッとページが開くようにしたいので、出来るだけデータを小さくします。先ほどのレベル補正済みデータをJPG標準画質で保存すると、約141KBでした。これを、JPG最低画質で保存してみます。ほとんど白黒の画像なので、画像の荒れは気にならないはず!(画質が分かりやすいように、大きく載せますね)

レベル補正後、JPG最低が質で保存
レベル補正後、JPG最低画質で保存。ファイル容量は約90KBです。

これで、約90点の画像を入れると8MB。これで充分だと思う方もいるでしょうが、もっとずっと軽くできます。最も軽くなるのが、GIF形式です。線画イラストなので、思い切って白黒2色のみのデータにしてしまいます。つまり、中間のグレーを全てなくしてしまうわけです。線を滑らかにするためのアンチエイリアス処理※も掛かりませんからアップで見るとがたがたになりますが、解像度が高い画像なので心配はいらないでしょう。

白黒2値のGIF形式で保存。ファイル容量は40KB
白黒2値のGIF形式で保存。ファイル容量は40KB。ぱっと見て、違いは分かりませんよね?

※「アンチエイリアス処理」という言葉を聞いたことがない方のために、アップ画像を並べてみますね。

上、アンチエイリアス処理あり。下、なし。
上、アンチエイリアス処理あり。下、なし。

電子書籍を読むとき、挿し絵をここまでアップにしてみる読者はいないでしょうから、原寸ではまったく分かりませんし、むしろくっきりして見やすかったりする場合もあります。

では、本日はここまで!

カラー画像にはまた別のやり方がありますが、もしも参考になれば幸いです。

じゃ、また明晩!

表紙に理想的なサイズはない!

本日、作家のくみた柑さんからのツイートを読んで、驚いたことがあった。Amazon KDPの出版者用サイトにある「カタログ・表紙画像の作成」コーナーに、こんな記述があるというのだ。

そう、Kindle用の推奨表紙サイズが、また変わってしまってるという。
先日の記事で書いた推奨サイズは1,563×2,500ピクセルだったけど、新しい情報を見ると、これが変わっていた。縦横比は1:1.61で、1,590×2,560ピクセルが推奨サイズとなる。これまでより若干大きくなったことに加えて、わずかに縦長になった。そして、これまでよりわずかに黄金比に近づいた。

なんでなんだろう?
こんなに微妙に変えなくても、黄金比ピッタリにすればいいのに。とも思うけど、ちょっと調べてみた。
新しいKindle Paperwhiteの画面サイズは1,072×1,448ピクセル。比率で言うと、1:1.35だ。まあ、よくあるパソコンの画面比率に非常に近いもので、Kindleの表紙比率とは何の関係もないように思えた。まあ、例えば画面上の本棚に並んだ時のレイアウトとか、そのあたりも関係しているかもしれないけど、ね。

と、いうことで、またまた釈然としないのだ。でも、これは逆に言うと、比率なんて別にどうでもいいということなのだ。A版、つまり文庫本などの比率(白銀比)が好きなひとはそれで作ればいいし、パソコン画面の比率がいいと思う人はそれでいい。黄金比がきれいだと思う人はそうすればいい。それだけなのだ。

画面(=表紙)の中で、
《書籍のタイトルやイメージが魅力的に見えること》
そして、
《手に取ってみたいと思わせること》
これが一番大事なんだから。

新しい比率の三分割法デザイン用テンプレを用意したので、もし使いたい人はこちらのリポジトリーからどうぞ。ちなみに、大きさこそ違うけど、見た感じではまず前回のものとの違いは分かりませんよ。

では、この記事がいつか誰かの役に立ちますように!

おい、黄金比!

Kindleのアスペクト比は黄金比だって話を聞きかじって、じゃあ表紙を黄金比でデザインしてみるのも悪くないかと思い、画像に補助線を切ってみたのだ。でも、実はこれ、黄金比じゃなかった。
微妙に違うのだ。

何となく釈然としないのだけれど、これが、Kindle用表紙画像の画面比率。推奨サイズの2,500×1,563ピクセルを正方形で切って行ったのが黄緑色の線。これが黄金比なら、永遠に同じ比率の長方形が生まれ続けるけど、四分割目でいきなり正方形二つになって終わった。これはこれで面白いし、きっと、何とか分割って名前でもあるのだろうな。美しいかどうかは別として。

(美大──しかもグラデ──出身なのにそんなことも知らないのか、って聞かないで。習ったけど覚えてはいないだけかもしれないし……)

NotGolden
Kindle用表紙の推奨サイズは1:1.599なのだ
Golden
黄金比は1:1.618 微妙な違いがここまで差を生む

 

そしてこれが、黄金分割。ぱっと見はかなり似ているけど、正方形で切られた領域が螺旋になってずっと続いているのが分かると思う。ただ、これも《概ね》に過ぎないのだ。黄金比は整数ではないので、整数でなければならない画素数に落とそうとすると、どうしても四捨五入が生じる。小さく分割するほど狂いが生じてきて、上の図で最も小さい四角形はもはやまったく黄金比ではない。

これが自然界であれば、全体として調和がとれる方向に縮小されていくので、だんだんおかしくなるということはないのだけど。

実際、一応引いた補助線を頼りにデザインを起こしてみようかと思ったのだけど、どうも変な縛りになってしまって、却って面倒なだけだった。数字に頼ってもロクなことはない。自分の感覚を信じてバランスを取ったほうがずっといいな、と思っただけだった。

そもそも黄金比にしても、学生時代には「そんなんもある」程度しか学んでないし、僕自身デザインに一度も使ったことはない。《黄金比は都市伝説に過ぎない》とも言われるしね。

と、いうことで、まあ身も蓋もない話ではあるので、もし表紙作りの参考にと思ってこの記事を読んだ人がいると申し訳ない。
ここでもう一つ、便利な──もっと便利で簡単な──分割法を紹介しておこうかな。

恐らく最もシンプルな、でもかなり強力な画面バランスの取り方。それが三分割法だ。
画面を縦横三分割するだけ。そして、四本の線が交わる四つの点に、デザイン上の重みを持ってくる。または、色面の分割をその線を頼りに行なうというもの。映画の撮影などでもよく利用されているから、知ってる人も多いのではないかな。
(でもね、実は僕も数年前まで知らなかったんだ。そういうものに頼ったことがなかったから)

Kindle用の表紙サイズに当てはめてみたのがこれ。
RuleOfThird

例えば、こんな使い方をすると便利なんだ。

・海と空の映った画像があって、海が主役。タイトル文字は海の上に書く。

左:補助線あり 右:補助線なし  三分割の交点を中心に重要な要素を配置

 

・海と空の映った画像があって、空が主役。タイトル文字は空の上に書く。

左:補助線あり 右:補助線なし  三分割の交点を中心に重要な要素を配置

 

どうでしょう?

特に考えないで配置しても、《取りあえず落ち着いた感じ》にはなってるでしょ?

これなら、悩むことなく、簡単にレイアウトのバランスが取れそうだよね!

Kindle用表紙推奨サイズのテンプレート画像をリポジトリーに用意したので、もし良かったら使ってみてくださいね。

 

では、この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

作品の表紙:共通デザインがあると、とっても便利!

昨日の記事で新作小説を公開しようと思った時に、一瞬、脳ミソが固まった。BiB/iでEPUB(今回から全て大文字に統一。この表記が正しそうなのでね)を公開するってことは、表紙が必要じゃん、って。

そこで、お! と思い出す。淡波e文庫ブランドは統一フォーマットがあるし、今回はプレーンな感じで行っちゃえば、すぐできるかなぁと。

これが統一フォーマット。見覚え、あるよね〜?
(これだけだとどうにも淋しいけど)

これさえ入っていれば、淡波e文庫の作品だと一目で分かるのだ!
これさえ入っていれば、淡波e文庫の作品だと一目で分かるのだ!

 

これは、『さよなら、ロボット』での試行錯誤が元になって、『孤独の王』でのフォーマット化に結実したもの。以降、僕の全小説作品は、基本的にこれを用いている。
(『光を纏う女』の掌編版で自作オープンオフィステンプレを活用したことは内緒。未発表だし)

この統一フォーマットをベースに、出来るだけシンプルに構成してみようと考えたわけ。何しろもう夜中だったし、寝なきゃいけないしで。そうしてデザインを考え始めたのだ。この新作はテーマが《波》だから、文庫のイメージエレメントである波線を利用すれば早いだろう。そう思うのは当然の流れだよね。

で、これが完成した表紙。

初のWEB限定公開作品『波』(昨日の記事から)

 

ちょっとした画像処理テクニックを使っているけど、作業時間としては10分程度だったかな。統一フォーマットがあって、そのためのテンプレを用意してあれば、とっても簡単にバリエーションを作れるという好例になったか。

ここで使った簡単な画像処理のテクニックについても、追ってチュートリアルを書いてみようかと思っている。(リクエストがあれば……)

それと、知ってる人は知っている、例のオープンオフィステンプレだけど、使い方次第でバリエーションが作れるようになっている。ただ、自分で考えて加工する必要もあるので、ちょっと難しい部分もあったかもしれないな。今後、ワンタッチでいろいろ作れるテンプレ集を考えてみようか、とも思った今夜の淡波。

さて、この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

セルフ作家のための表紙ワークショップ……的な。

(前置きが長いです。本題はかなり後に出てきますので、ご面倒な方はスキップしてくださいな)

2年半ほど前、KDPを利用してセルフパブリッシングを始めようと思った時、まずは参考にしようとAmazonで様々な自己出版書籍を見て回りました。そのとき、最初に気になったのは表紙のクオリティでした。ぱっと見て、その本を手に取ってみたいと思うより先に、まずは素人っぽさが目に付いてしまって、何とも言えない寂しさを感じたものです。

実はここだけの話、一冊目の本をリリースした2012年、僕は他のセルフ作家さんの作品には全く興味がありませんでした。というより、自分の小説を出すことだけにしか興味がなくて、ストアに並んでいるセルフ作家の作品を「読む」という発想がまるでなかったのです。いやあ、ひどいですねえ、それで自分の書いたものを「他人に買って欲しい」と思っていただなんて!

これを読んでくださっている方の中にも、セルフ作家の作品を未読の方がいらっしゃいますでしょうか?

それは、もったいない!

僕が初めて読んだセルフ作品は、澤俊之さんの『440Hz』でした。澤さんのセルフパブリッシング・ノウハウ本を先に読んでいて、その中に書いてあった『440Hz』の想定読者層が、あまりにも自分にぴったりとはまっていたからです。ノウハウ本を読んだだけで文章の上手い方だということは分かりましたから、初めてセルフ作家の小説を読むことに対する不安はありませんでした。

そして、そこで眼からウロコが落ちまくったのです。
これはすごい! もう、びっくりです。普通に書店に並んでいても全然おかしくないクオリティ。“ギター小説”という独特なジャンル、読者を引きつける滑らかな語り口に、スナップの効いた、でもストレートなストーリー。夢中で読んで、シリーズ物を読むようになりました。
そこから、色々なセルフ作家の方の本を読むようになり、それに伴って、Twitterなどで他の作家さんとの繋がりも出来ました。今では購入済みの商業作家の本をほっぽって、次々にセルフ作家さんの本を読んでいるほどです。
澤さんのお名前を出してしまったので、他にも僕の好きな方の名前をいくつか書いておきましょう。

・広橋悠さん:『妄想する子供たち』が最新作。はっきり言って大ファンです。「芥川賞レベル」と評していた方がいましたが、そう思えるほど文学的で美しい文体、表現力をお持ちだと思います。

・藤崎ほつまさん:『キミコロ』という青春推理小説が素晴らしく面白いです。KDPでは頻繁に話題になる作品の一つです。

・牛野小雪さん:今盛り上がっているは『ターンワールド』ですね。このブログでも感想を書かせて頂きました。

・新潟文楽工房 ヤマダマコトさん:最新作『山彦』中巻が発売になったばかり。この方の文章も、書店に並んでいて全く遜色のないものです。『山彦』はサンカという山の民族をテーマにした物語です。民俗学や文化の香り漂う文学作品ですが、エンタメ性も強く、わくわくドキドキが止まりません。

・王木亡一朗さん:『アワーミュージック』という短編集しかまだ読んでいませんが、端正で文学的な表現が素敵です。表紙のおしゃれさでも定評がありますね。

他にも面白いなあ、と思う作家さんはいますが、このくらいにしておきましょう。(僕が言及するまでもなく充分に有名な方々は省かせて頂いていますし、僕が知っているのはほんのごく一部。素敵な本を出されているセルフ作家さんは、それこそ何百人もいると思いますよ!)

ここでお名前をあげさせて頂いた作家さんの作品は、いずれも表紙が良いものばかりです。作品世界をイメージさせる表紙は、やはり無名作家の作品にとっては重要な要素だと、僕は思います。
(中には、「白地に文字のみ」という体裁でもヒット作があったりするようですが、作品が読まれるポイントは様々ですので、表紙が良ければ読まれる、という単純なものではありませんが)

さて、表紙の話に戻ります。

今でこそ、プロの方にお願いして素敵な表紙を作っているセルフ作家さんも多いですが、当時は《ワードで打った文字を四角で囲っただけ》《スナップ写真にとりあえず文字を乗っけてみた》レベルのものが多かったように思います。もちろん、それでもいいのですが、その場合、そこには一つの大事な要素が必要です。そう、デザインですね。
(澤さんの表紙はとてもシンプルなのものが多いですが、良いと思います。WEBのお仕事をなさっているだけあって、押さえるところはきちんと押さえたデザインになっていますね)

作家が自ら表紙を作るということは、デザインするということになります。美術やデザインの勉強をしたことがない方にとっては、頭の痛い作業なのではないかと思います。
僕は幸いデザインの専門教育を受けているので、グラフィックに関しては見る目があるつもりです。現役のグラフィックデザイナーではありませんが、アートディレクションが僕の商売の大部分なので。
(あ、自分の作ったモノに対してはちょっと評価が甘いかもしれません。そこは突っ込まないでくださいね。)

本来ならばこのブログで、少しずつ表紙デザインのノウハウを書いていこうと考えていました。でも、なかなかそれもままならず……。
たまたま、ある方の表紙画像にアドバイスさせて頂く機会があって(勝手に!)、少しだけお役に立てたかもしれないと思ったのです。それから、こんな方法もありかな、と思い付いてしまったのでした。(墓穴掘りまくりか?)
 

■ここで、ちょっと無謀なプランを立ててみました。

《先着10名様に表紙デザインの添削指導を行ってみよう》というものです。もちろん、お代は頂きませんし、見返りも求めません。セルフパブリッシング作品のクオリティアップが、セルフパブリッシング界の盛り上げに繋がると信じていますので。

見るポイントは、概ね下記の項目かなぁと思います。
・書体の選択、色、処理
・文字間、行間
・紙面全体でのレイアウトバランス
・画像の使い方、トリミング
・可読性と目立ち具合のバランス
我こそは、と思う方は、下記の要項をお読みの上、メールでご連絡くださいね。(10人なんてそうそう集まらない気がしますが……淡波じゃあなー、と思うひともいるでしょうし……)
 

【応募資格】

・セルフ作家であること、またはセルフパブリッシング準備中の非商業作家であること。
・対象は小説作品のみとします。実用書は含みませんので、ご注意ください。
・表紙はご自分で制作したものであること
・使用する写真や画像の著作権に利用上の問題が存在しないこと
→ご自分の作品、商業利用可能なパブリックドメインの画像、作者の許諾取得済み画像であること。もちろん、それがどういう経緯で作者さんの手元にあるのか、僕には分かりません。信頼だけがよりどころとなりますので、そこはご配慮ください。
・メールのほかに、Twitter、Google+などのアカウントを持ち、連絡が取れる手段が複数あること。
・淡波の赤字通りに表紙を作っても、売り上げが伸びる保証はまったくございません!
 そのことに同意してくださること。批判の材料にしないこと。
・自分としては、「そこそこ出来上がり」と思う表紙画像が既にあること。
 デザインできないので白紙とタイトルのみ、というものはNGとします。
 

【応募要項・必要な情報】

・作者名
・作品のタイトル
・作品の簡単な概要

・画像サイズ:1563×2500ピクセル、またはその50%程度に縮小したもの
(勝手ながらKDPの推奨サイズを基準とさせて頂きます)
 このサイズでないものは、その旨ご記入ください。
 画像をトリミングしている場合、全体の画像も合わせてご送付くださいますと、トリミングのバランスも添削できます。

・画像フォーマット:jpgまたはpng

・画像の容量:可能な限りメールで添付できるサイズ(10MB未満程度)にしてください。
 ご自分のサイトやFTPなど別の送付方法をお持ちの方は、容量に制限はありません。(常識と良識の範囲内で)

・送り先:awaあっとnewday-newlife.com
(あっとは@に置き換えてください。添削の戻しはメールへの返信で行ないます)
 

【添削の方法】

・表紙画像上に赤字を直接入れます。
・画像とは別途、その赤字の説明を書かせて頂きます。
・赤字の送付後、可能なら修正後の画像を再度ご送付ください。
 修正状態をチェックし、もっと良くなるポイントがあるかどうか検討します。

・表紙画像をご送付頂いてから、赤字の発送までには二週間程度掛かることがあると思われます。
 出版までのお時間に余裕を持って、ご送付くださいね。
 

【締め切り】

・特に締め切りは設けません。10名に達した時点で、このブログとTwitterでお知らせします。
 もしも応募数のカウントが間に合わなかった場合、締め切りのお知らせが遅れることもあるかと思います。その際はご容赦ください。

 
なお、もしも表紙画像に著作権上の問題が生じた際は、淡波亮作は一切の責任を持ちませんので、予めご了承ください。淡波亮作が行なうのは出来上がった表紙作品に対する添削のみで、画像に付随する一切の権限とは関わりがありません。

以上です。

それでは、奮ってご応募ください!

 

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

Open Officeで表紙を作ろう

セルフ作家の皆さん、表紙はどうやって作っていますか?
PhotoshopやIllustratorなどのプロ用ソフトを使っている方もいらっしゃるかと思いますが、やはりそれは少数派なのかなあとも思います。

“ワードでは思うようにデザインできないし、ペイントじゃなあ”

“MacのPagesやKeynoteならカッコよくデザイン出来そうだけど、電子書籍のサイズに合わせるのって難しそうだし、そもそもMacじゃないし”
とか。でしょうか?

僕はいつもPhotoshop(+Blender)なのですが、もっと誰でも簡単に出来る方法はないかと考えました。
そこで辿り着いたのが、フリーでオープンソースのソフトウエア、《Open Office》を使う方法です。
Open Office、ご存知でしょうか?

Windows、Mac、Linux、いずれのバージョンもあるオフィス統合スイートで、何といってもフリーです。Open Officeの中には《ワープロ》《表計算》《プレゼンテーション》《図形描画》《データベース》まで揃っています。この中の、《図形描画》をうまいこと使えないかという算段です。

基本的な使い方はMicrosoft Officeとほぼ同じですから、多くの方は(少なくとも会社員は?)使い慣れているのではないでしょうか。これも今回の選択理由の大きなもの。

ここで使い方をあれこれ書くより、一発でKindle用の表紙が作れるテンプレートを用意しました!

まずはこちらからダウンロードしてくださいね。

《6/1 追記:
早速つっこみが入りました。Open Officeは既に開発が中止されているので、Libre Officeを使えというもの。
残念ながら僕はLibre〜を使ったことがありません。Open Officeは毎日のように愛用していてるソフトなので、テンプレートを作ったり使い方の解説をする立場としては、こちらを選択しています。もし、Libre Officeに長けている方がいらしたら、Libre Office版を作ってくださいませんか? Open Officeもすぐに使えなくなるようなことはないと思いますが、Libre版を作った方はご一報くださいますと幸いです》
《6/2 追記:
忌川タツヤ氏から、Libre Officeで上記テンプレを読み込んでも概ね同じイメージで表示されるとのご報告がありました。どうもありがとうございます!》

テンプレートはこんな感じのものです。ダウンロードしたファイルを開くとOpen Officeが起動し(もちろん、インストールしてあれば、ですよ)、下のような画面になります。

表紙テンプレートの初期画面

 

実際の表紙の出来上がりイメージを貼ってみますね。こんな感じです。
ただし、パソコンは個々にインストールしているフォントが違いますので、(特にWindowsでは)このイメージ通りにならないケースが多いかと思います。そこは、見本を見ながら頑張って調整してみてくださいね。

こんな表紙が10分かからず完成! 画像サイズもKindle推奨サイズにピッタリです。
こんな表紙が10分かからず完成!
画像サイズもKindle推奨サイズにピッタリです。

 

パソコンの使い方、オフィスソフトの基本的な使い方はご存知の前提ですが、なるべく分かりやすく、テンプレートの使い方も書類内に記述しました。

こちらにも画像で貼っておきます。

説明その1
説明その1

 

説明その2
説明その2

 

テンプレート内の使い方には書いていませんが、文字間や行間の調整は以下の画面で行なえます。

A/Vのアイコンが文字間調整
A/Vのアイコンが文字間調整

 
簡単設定
簡単設定。行間は、この図内の一番下のアイコンをクリックしてくださいね。選択している文字に対する設定が出ます。

 

文字間、行間の大まかな調整は、これでオッケーです。細かく調整し出すと切りがないですし、本当は細かく調整しないといけないのですが、まあ、まずはこの辺りから挑戦してみましょうね。
このOpen Officeの図形描画で1文字1文字の間を微妙に調整するには、1文字ずつ文字ボックスを分離するしかありません。それはそれで大変な手間が掛かりますが、タイトルだけでもやってみてはいかがでしょうか?

もう一つ、背景写真調整のTipsを書いておきます。書籍の表紙は縦長、多くの写真は横長で撮影されていると思います。もし、写真をもっと右や左にずらしたいのに、写真の端が画面の端にぶつかってしまって動かない場合は、「トリミング」という技があります。
写真を右クリックし、「トリミング…」を選択します。
出てくる調整画面で、上下左右自由に削ることが出来ます。

画像のトリミング
画像のトリミング

それでは、是非ご利用くださいね!
(済みませんが、ご利用は自己責任で。。)

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!