イメージと現実

道路工事の現場を通りかかった。
パワーショベルがアスファルトの道路を《バリバリと》剥がしていた。
さて、こういった場合、アニメや映画ではどんな効果音が当てられるだろう。
漫画ではさしずめ、
「ガガガガッ」「ゴゴゴゴッ」「ドン」「ズシン」あたりだろうか。映画ではきっと、重量感があって腹に響くような音が鳴るだろうと、想像できるのではないだろうか。

だが、僕が実際耳にした音は、まるで違うものだった。イメージとは異なる軽い音だったのだ。
「ビリビリ」「パリパリ」と、堅焼きせんべいをかじる音のような、もしくは、くたびれた薄い木綿(例えば着古して薄くなったシャツ)を引き裂く音のようなものだった。
え? と思った僕は、立ち止まってそれをしばらく見ていたんだ。こんな光景、生まれて初めて目にしたわけじゃあない。でも、頭の中にあった音のイメージは、実際のそれとは大きく違っていた。

あなたは、こういう話を聞いたことがあるだろうか。

スポーツ中継のバックで流れるサウンドは、その場で録音されたものではない。正確に言えば、その場で録音されたもの《だけ》ではない。優秀なサウンドエンジニアがミキサーブースに付きっきりで、膨大な数のサンプリング音源ライブラリとともにスタンバッているのだ。もちろん、予めピックアップした《それっぽい音素材》満載で。
例えばスタジアムの歓声、スキー選手が雪をバサッとかく音、ダンクシュートのリングがぐわわんと揺れる音……様々な音が、テレビ視聴者を盛り上げるために追加されるのだ。

これは、ゲームの表現力が高まり過ぎてしまったことが発端だという。作り込まれたシーンにおけるサウンドエフェクトの臨場感が、現実を大きく超えてしまったのだ。そりゃあそうだろう、いくら録音技術が優れていても、その場にいる観客よりずっとはっきりと、スポーツのサウンドを《一つ一つクッキリと》聴き取れるなんて、とても不自然なことだ。
そこからスポーツ映画に波及し、スポーツドキュメンタリーに広がった。
視聴者の感性は、フェイクのサウンドをプラスオンされたものでないと、臨場感を味わうことが出来ないほど鈍くなってしまったらしい。
だから生録の音では満足出来ない視聴者には、フェイクのサウンド効果をプラスする必要があるのだと《番組の製作者たちは思い込んで》いる。

これ、英国のラジオ番組で三年ほど前に特集が組まれて、一般に知れ渡ったことだそうで、その番組はかなりの聴取率だったらしい。僕はそれをPodcast配信で聴いたのだけれど、とても面白い番組だった。

こうやって、人は自分自身が心の中に描いたイメージに、簡単に騙されてしまうのだろう。

さて、この感じ、何かに似てはいないだろうか?

例えば《食》。
明らかに不自然な色調、工業製品のように画一化された形状の野菜や果物、肉製品たち。そうしないと売れないからと生産者は言う。
そういう食品を眼にして、美味しそうだと思ってしまうイメージの貧困と、そこに乗る販売者と生産者。消費者の側にも責任の一端はある。
そして、それが当たり前のものになり、
《魚が切り身のまま海を泳いでいる》と思い込む子供たちを生む。
《牛も豚も鶏も、味だけでは区別できない》子供たちを生む。
《野菜の味の個性、クセは失われ、気の利いた“やり過ぎの”調味料に演出された味》イコール美味しい味だと思い込む子供たちを生む……。

僕は表現者として、人間のナマの感覚に鋭敏でいたい。
世の中のフェイクを全て否定する気はないし、全て見破れる自身も毛頭ない。でもね、感覚を研ぎ澄ましていたいものだなぁと、いつも思っているのだ。

そんな感覚の変化と、それによる人間自身の変化を描いたサイファイ作品が、『奇想短編集 そののちの世界8 五感の嘘』だ。

 

あなたの五感は本物なのか!?
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気になったら、ぜひAmazonでチェックしてみてほしいな。
五つ星レビューもついた『五感の嘘』はこちらから!

 

では、いつかこの記事が、誰かの役に立ちますように!

同盟セミナー第四回に参加

と、題名に書くと、前回のような詳細なレポートを期待してくださると思うのですが、済みません。今回はさらりと行きます。
実際、会場でメモったのは1,300字あまり。これをきちんとまとめると、どう考えても数時間は必要なのです、僕の能力だと……。
で、そこは諦めさせてください。ちょっと、今それだけの時間を確保することが困難で、でも時間を空けると熱が冷めてしまうし、で……。今回は感想的な記事ということに。

昨日のセミナー『佐渡島庸平氏×鈴木みそ氏「凡庸な作家のサバイバル戦略──結局どうすりゃ売れるのさ」』もとても良かったです。基本的には自分のやっていることが間違っていないことと、もっともっと《コンスタントにコツコツと》やらなきゃいけない、ということを確認し、力を貰った半日でした。

ちょっと関連ツイートを貼ってみます。まずは登壇者の鈴木みそさんから。

 

筋トレ、というのはもちろん肉体の筋トレのことなのだと思いますが、これは対談中でお話されていたことと大いに関係があると想像しています。
《一度だけ会ったすごい美人より、しょっちゅう会うそこそこの人と恋に落ちる。》つまり、コンスタントに顔を見せることでこそ、魅力が伝わる。
それから、
《ファンとの関係を継続的に密接に構築することで、新作品の下地を作れる。》
《作家へのファンのあり方にはLOVEとlikeがある。作品へのLikeを作家へのLOVEに変えることでブランドが創られる》
《コンスタントな情報発信が場を温める。それは、そののちグッズが売れることにも繋がる》

とにかくコツコツと続けること。それだけがブレイクを連れて来る。だから、日々の活動は筋トレ。日々鍛え続けていないと、チャンスが来たときにつかむことも、気付くことも出来ない。だから、自分を鍛えまくるのだ。そんな覚悟が、かいま見えるツイートなのでした。

いやあ、鈴木みそさんほどのプロがここまで仰ってるんです。僕らヒヨッコは、覚悟して臨まねばなりません!

これは僕のメモをベースにしているので端折っていますし、対談者の佐渡島庸平氏(とにかくスゴイ方! でした。こんな方に売って頂けたら最高ですが、例によってお話できませんでした。ダメ波です)のお言葉とも混ざってますが、具体的で濃い内容の発言には大いに刺激されました。

そして理事長鷹野さんのツイート。(冒頭の鈴木みそさんのツイートは、これへの返信ですね)

そしてこちら。

小嶋智さんが実況なさっていたので、それもちょっと貼らせてくださいね。リアルな感覚。

 

これ、僕も「おおーっ」と思いました。

それから、Cironさん。

 

最後に、僕のメモからもう少しだけ書いておきますね。

《急に食いつかなくても、コンスタントにやっていれば少しずつ溜まっていく》
《自分のやっていることの棚卸しをしよう。“何のために”、“どういう事をやっていれば”、“今それはどうなっているのか?” Googleトレンドで分析して、次のプッシュを決めるのだ》

《何でもそうだけど、ブレイクするまでの曲線はすごく緩やか。ドン! とブレイクするのは貯めていた人だけだ》

【7/26 追記:もう一つ、心に残った言葉を。
 「いい作品なら黙っていても見つけてもらえると思うのは、白馬の王子様を待つのと同じ。自分自身で読者を見つけに行くのだ!」
 ね、これ、心に刻んでおこう! コツコツ活動が辛くなったとき、思い出すんだ。自分が動くことが全てなんだから!】

どうでしょう?
勇気が出ましたでしょうか……。

一緒にがんばりましょうね!

では、この記事がいつか誰かの役に立ちますように!

方向音痴の秘密が一つ分かったかも

こっちへ行こうと頭では分かっていたはずなのに、全然違う方にいつの間にか行っている。

それが何故なのか?
今日、一つの答えが出た気がする。

今日は二つの道間違いをした(一つはニアミス)

朝、妻を習い事に送って行ったのだけど、途中まではよく通る道、どこで曲がればいいかもちゃんと理解していた。で、車を運転しながら妻と話し込んでいたら、いつもの道に行きそうになった。
「ここ曲がるんだよ!」
と妻に叫ばれて、どうにか曲がれた状態。ふー。
そこではまだ、なんの気づきもなかった。いつもやらかしてることだからね。

二つめ。今は日本独立作家同盟のセミナーに参加するため、渋谷に向かっている。で、乗換駅の直前でグッスリと落ちてしまい、乗り過ごしてしまった。そこから慌てて再検索して、経路を変更。間に合いそうな行き方が見つかった。駅を降り、サインに従って移動。そこまでは緊張感が持続していた。が!
その乗換駅は以前通勤に使ってたことに気が付いた。それが運の尽きで、気が付くと当時の通勤路をテクテク歩いてた。ホームに着いて、ふと見上げると、検索した路線と違う。
うわわわ、と思って引き返し、駅員さんに道を聞いた(いや、その道だって知ってた筈なんだけどさ)。

で、今、電車に乗ってる。

そこで、ふと気付いたのだ。方向音痴の精神構造に!(大袈裟すぎねえか?)

要するにだ、知らないところにいて、ふと何か知っている記号を目にすると、回路がそっちに切り替わってしまうんだな、パタンと。それはもう見事な切り替わり方で、今までの緊張感が一気に消え失せて、何も考えずに行動してしまうのだ。

んん〜、いいことに気付いたなあ。次からはこれを気にしていれば、道を間違える寸前に気付ける、かもしれない。運が良ければ。

さあ、そろそろ目的地だ。

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

ケプラーズ5213の作品ページを更新

今日はごく短い記事です。
ずうっと放っておいた『ケプラーズ5213』のCG ブレイクダウン映像 for ブックトレイラーがようやく完成しましたので、ケプラーズの作品ページにリンクを追加し、リンク画像も新規作成して差し替えました。
作品ページに行かなくても下記からどうぞ!

 

CG制作のWIP画像とレンダリングされた各要素を時間軸で並べたブレイクダウン映像はこちらです
CG制作のWIP画像とレンダリングされた各要素を時間軸で並べたブレイクダウン映像はこちらです

 

いつもどおり、CG制作とコンポジット(合成)はBlender、映像編集はMotionで行なっていますが、まだMotionの機能がよく分からず、実は大半の編集はBlenderの映像編集機能で行ないました。Motionでやったのは文字入れや最後の仕上げ程度になります。

では、ぜひご覧くださいませ〜!

 

『さよなら、ロボット』最新情報!

楽天KOBO電子書籍ストアにて、いよいよ『さよなら、ロボット』の無料配信が始まりました。kindle storeへのプライスマッチ申請がこれからなので、お急ぎの方(いないか?)はこちらからどうぞ!

『さよなら、ロボット』は、大人も子供も楽しめる空想科学小説です。
舞台は、謎の奇病「グラマン氏病」が蔓延する近未来。この不治の病によって、人類は存亡の危機にさらされようとしていました。
主人公の森池マサルはジャーナリストで、グラマン氏病に冒されている父ケンイチの命を救うため、この奇病の謎を追って世界を駆け巡ります。治療法が確立するまで冷凍睡眠によってその命を永らえさせられているケンイチですが、あるとき《財団》の医師によって、目を覚まされます。
取材旅行から帰ってきたマサルは自分より見掛けの若い父と再会します。が、そんなとき、介護兼ペットであるロボット、シードが突然姿を消します。
でも、姿を消したのはシードだけではなかったのです。数千万体にもおよぶ世界中のロボットたちが、突然大移動を始めたのでした。そして、誰も予想しなかった大事件が巻き起こります。
ロボットたちは、いったいどこへ?
マサルはグラマン氏病の謎を解くことは出来るのか?
そして、世界は……?

こんなお話、いかがでしょう?
(ストアにある小説の紹介文より上手く書けたかも!)

本当はこの機会に表紙も差し替えたいと思ったのだけど、そうするとせっかくのARコンテンツ(ここ参照!→作品ページ内なのでご安心を)が動かなくなってしまうので、今回は見送ることにしました。知ってる人は知っているジュナイオのサービスが12月15日で終了するので、それまでは同じ表紙で行こうかなと思っています。まあ、表紙の画像認識に悪影響を及ぼさない範囲で帯などの改変はしようかと思っていますが。
さて、ここでいきなり話題が変わりますが、ちょいと振り返っておきましょうか。

・まずはARって何?
スマホやタブレット(昔はPCにWEBカメラという組み合わせだった)、はたまたグラス型端末のカメラに写っている映像に、デジタルコンテンツを重ね合わせて表示し、《現実を拡張する》こと、ですね。
日本では最初に流行ったのが《セカイカメラ》に代表されるジオタグ型でした。今は画像認識から動画や3DCGを出すタイプが主流です。今どきは立体認識、環境認識などもありますし、塗り絵タイプなんてのも流行っていますね〜。

・ジュナイオって何?
ドイツのメタイオ社が展開していた世界的なARアプリとそのサービス。何しろ機能が豊富で、追随するものがないほどのすごいアプリでした(個々の機能では優れたものもあるけど、その開発性、機能追加のしやすさ、シナリオの自由度、オープンな開発環境など、最高のARと言っても過言ではなかったのです)。
そしてこの春、アップルがメタイオ社を買収したことによってジュナイオのサービスは終焉を迎え、世界中のAR開発者にものすごいショックを与えました。僕も仕事上、大変な思いをしました。これで食えなくなった開発者も大勢いると言います。
僕は個人的にもその開発者登録をしていて、『さよなら、ロボット』と『孤独の王』でそれぞれコンテンツを制作して公開しています。

・『さよなら、ロボット』のARコンテンツってどんなの?

詳しい説明はこちら(画像をクリック)
詳しい説明はこちら(画像をクリック/冒頭のリンクと同じですが……)

 

ね、面白そうでしょう?(強引)
残念ながら、このジュナイオサービスはこの冬の初めで終わってしまうのだけど、日本でメタイオ社の代理店をしていたサイバネットさんから素敵なお知らせが届きました。ジュナイオ用に作られたARコンテンツの多くを移植できる独自サービスを始めるんですって!

これを個人向けにフリーで開放することは無さそうなので、やはり『さよなら、ロボット』のARコンテンツはいったん終了せざるを得ないんですけど、ちょっと将来に希望を残してくれた感じがします。それに、来年になればアップルがメタイオの技術を基にした、オープンで新しいARプラットフォームを始めてくれそうな予感も大きいですしね!

今日はちょっとITな感じで迫ってみました……。

では!

このタイミングで、もう一つ白状しておこう

KDP(Kindle Direct Publishing)本、つまりAmazonのKindle Storeで出版している個人作家の本として最長とも言われる僕の『孤独の王』ですが、ちょっとした記憶違いで間違った数字を発信していました。
いつだったか、うろ覚えの数字を元に、『孤独の王』は1,300枚ですよー。と、呟いた淡波。何人かの方に「それはスゲー」「それ、最長」みたいに言っていただき、すっかりその気になっていたのです。

あるとき、自分で作った『孤独の王』のブックトレイラーを見て、目が点になりました。《渾身の千二百枚》って書いてあるじゃないですか!

ほら、ね。
……ね。(クリックするとYoutubeで見られますよ〜!)

 

それで、再度原稿フォルダをチェック。書き終わったときに20字×20行でレイアウトし直して、ページ数を計算したメモがどこかに残っていたはず、って。
ホラ、これ。

スクリーンショット 2015-07-20 19.32.06

 

メモどころか、フォルダのタイトルに入っている……。しょっちゅう見てるはずなのにね。これ、《壁紙効果》ってやつですね。“あまりにも頻繁に目にしているものは、その意味が失われてしまい、壁紙の模様のように目に入っても脳に入らないものになってしまう”、というやつです。
名言ですね(あ、ググっても出て来ませんよ。これ、僕が今作った言葉ですからw)

と、いうわけで、『孤独の王』は正確に言うと1,232枚です。今日の記事の直接のきっかけはこちら。
昨晩、ヤマダマコトさんとのTwitterやりとりでこんな会話があったのです!

さすがです。Kindleで読んで、原稿用紙換算の枚数が分かるなんて、ちょっとびっくりですよね。ヤマダ氏にはとっくにバレていたということで、本日の告白タイムでした。

さあ、皆さん、もう一回繰り返しましょうね〜。

『孤独の王』は1,232枚!

 

つまらん記事で済まん!

記号の謎:?!と!?。

クエスチョンマークとエクスクラメーション(びっくり)マークをくっつけたこの記号。皆さんはどちらを使うとしっくり来るでしょう?
《?!》と《!?》。

僕は絶対《!?》派。絶対! だった……。

まずは字面。どう考えても、クエスチョンマークの円弧側の空間とびっくりマークの涙棒(今、命名した)の閉じ感が落ち着く。
次に意味。小説の登場人物の感じ方を考えると、まずは《びっくり》があって、その後で《疑問が頭をもたげる》、というのが自然な流れではないかと思うのだな。どうでしょ?

ところが、だ!

文字変換候補で出てくるのは逆の《?!》だ。ん〜、落ち着かない。デザイン的にも意味的にも、どう考えても変。まあこの記号を頻繁に使う人がどのくらいいるのか分からないし、これまでに読んだ小説の中でその使い方に対して疑問を持ったことはなかったのだから、そんなことを気にするのは余程の変態なのだろう。
でもね、ず〜っとこの《?!》を見ていると、なんとなく慣れてしまい、これもいいかな? と思ってしまう瞬間がある。その後で《!?》を見ると、なんだかバランスが悪いような気もしてくる。慣れのマジック。いやいや、それでもやっぱり僕は《!?》派だ。

そもそも、いわゆる《日本語の書き表し方》の参考書では、「《?》や《!》は原則用いない」と記載されているんだから、それを組み合わせた記号なんて完全に想定の範囲外だ。
(あ、ちなみに僕の使っている『新しい国語表記ハンドブック』では、カギ括弧の終わりには必ず句点を入れること、となっている。これは教科書法則だな。これを守っていると、小説の世界では??と思われてしまうのだから、実に難しいものだ)

と、いうことで、今のところ僕の中ではこの書き方に関して正解はない。誰か、正解をご存知の方がいたら、こっそり教えて欲しいな、と思う今日この頃。

では!

出版物の基本ルールってやつ

『さよなら、ロボット』無料化のために、Amazonのmobiフォーマットでは許されて、一般的なEPUBでは表示できないタグを修正する作業をしているんだけど、その中でいろいろと気付いてしまった。以前の作品とは言え、ちょっと基本ができていないことにびっくりしてしまったんだな。
どこまでがルールで、どこまでが作家の自由に委ねられる部分かの判断は難しいけど、明らかに現在の書籍(小説作品)に求められる基本を外れていたものがあった。それも含めていま、修正を行なっているところだ。

 

■ルールその1:《」》と《。」》

これは以前もどこかで書いたけど、基本中の基本とも言える書きあらわし方。もちろん、プロの純文学作品などでは平気で破っているものがあるし、それはオッケーなんだけど、それを素人作家がやると、「判ってない!」と言われてお終い。
気を付けなきゃいけないポイントなんだよね。

・カギ括弧を使うとき、閉じに句点を付けてはならない。

そう、これはそもそも教科書の基準に合致していないんだよね。小学生の時は、「○○でした。」って書くように指導されたし、作文もそうだった。
これは、まあ言ってしまえば商業小説のルール。だから僕も、最初は全然知らなかった。きっと、紙やインクが貴重だった頃、それに活字拾いが大変だった頃、少しでも手間やコストを下げるために考えられたんじゃないのかと、僕は想像している。《句点がなくともカギ括弧閉じがあることで、明らかに会話の終了が理解できるから不要》と、どこかで読んだ記憶がある。
僕の最初の小説である『壁色のパステル』を読んだ娘が、『カギ括弧の終わりに丸が付いてるよ』と言ったのが発端。妻もその言葉を理解できなくて、本棚の本を片っ端から引っ張り出して、会話文を見たんだ。それでびっくり、カギ括弧閉じの直前に、句点はない。一切ない。
それで、大急ぎで修正したんだ。初版を読んでくれた方は気付いたかもしれないな。
詳しいじゃないか、娘よ!
(彼女はすごい読書家で、一日3〜4冊を平気で読破していた。今は受験などもあってあまり読まなくなったけど、きっといつか小説を書く日が来るのではないかと密かに期待している)

で、この間違いがね、第二作の『さよなら、ロボット』にも残っていたというわけ。ヘイ、なんてこった!

 

■ルールその2:《…》と《……》

ご存知、三点リーダというやつ。これも、基本ルールとして《二連続にしなければいかん》ということは知らなかった。いつ知ったのかも覚えていないけど、『孤独の王』以降は大丈夫じゃないかと思う(自信なし)。
もちろん、英字のピリオドを六回打つのはNGだし、コロンを倒して続けるのもダメだ。
これも、現在修正中。

 

■ルールその3:《――》と《──》

これはね、結構難しい。例えばMacの《ことえり》や《かわせみ》では、長音の変換で出てこないから。候補がこれだけ出るのに、文字の間に空間が入らない《──》を出すにはどうやったらいいのか、ずっと分からなかった。

この記号の候補はこんなにある!
この記号の候補はこんなにある!

 

ところで一方、インディーズ小説の電子雑誌である『群雛』の八月号に初めて短編小説を寄稿したのだけれど、そのときに読んだ表現統一ルール(BCCS準拠)に、この《──》の記述方法が記載されていたんだ。そこで初めて、この使い方を知ったというわけ。実際、どうやってこの記号を出したら良いのか分からなかったので、そのルールからコピペして使い回しているんだな。なんだか、原始人が火を絶やさないように木切れを燃やし続けているみたいでしょ?
《7/19追記:よいこのみんなは辞書登録しようね〜》

 

今、直しているのはこの三つ。

ちなみに、文頭に書いた《Amazonのmobiフォーマットでは許されて、一般的なEPUBでは表示できないタグ》というのは、ブロック引用で枠囲みをするもの。Kindle上では意図したように枠囲みで表示されるのだけど、EPUBではそもそもエラーメッセージが出て、Blockquoteタグから先は何も表示されないんだな。だから、どうやったら引用の雰囲気を出せるかどうか、いろいろとEPUBの表示を調べてみた。
《7/19追記:鷹野凌さんからご指摘いただきました! BlockquoteタグはEPUBでもオッケー。そう、僕のはxhtml内のタグではなく、CSSの記述の問題だったようです(そもそもタグの使い方自体もEPUBルールに従ってなかったりする……よくmobiで成立していたよな〜汗)。EPUBは複雑で奥が深い。いずれにせよ、枠囲みの引用表現は無理なようなので、以下の記述はイキ、ということで。》

そこで、ヘリベマルヲ氏の『Pの刺激』が参考になった。ある未完の小説の断片が、紙片に印刷されて街中に張られていたり、WEBに載ってたりするのだけど、その小説の断片に書かれた内容の見せ方が、ちょうど、僕の求めていたものに近かったのだ。

段落全体を字下げして、級数(文字サイズ)を若干縮小することで、引用の表現をしていた。これなら、基本的なタグで実現できるし、それを利用することにしたんだ。で、もう一ひねり欲しかったので、少しだけ文字色を明るくしてみている。Eインク端末でどれだけ再現できるかは分からないけど、例えばKIndle Paperwhiteの初期型でもグレースケールは16階調表示できるのだから、きっと90%グレーならそれっぽく表示されるのではないかと思って、これから実験に入るところ。結果はまた、ここに書こうと思っている。

現在のところ、明らかに間違っていると思われるルール上の間違いは上述の三点だけど、まだ出てくるかもしれないな。ひらがなに開くべきところを漢字で書いてしまっていたり、初出の人物名にルビを振っていなかったり、は、ご愛嬌。いずれまた、手を入れるかもしれないけどね……。

 

さて、この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

作品の表紙:共通デザインがあると、とっても便利!

昨日の記事で新作小説を公開しようと思った時に、一瞬、脳ミソが固まった。BiB/iでEPUB(今回から全て大文字に統一。この表記が正しそうなのでね)を公開するってことは、表紙が必要じゃん、って。

そこで、お! と思い出す。淡波e文庫ブランドは統一フォーマットがあるし、今回はプレーンな感じで行っちゃえば、すぐできるかなぁと。

これが統一フォーマット。見覚え、あるよね〜?
(これだけだとどうにも淋しいけど)

これさえ入っていれば、淡波e文庫の作品だと一目で分かるのだ!
これさえ入っていれば、淡波e文庫の作品だと一目で分かるのだ!

 

これは、『さよなら、ロボット』での試行錯誤が元になって、『孤独の王』でのフォーマット化に結実したもの。以降、僕の全小説作品は、基本的にこれを用いている。
(『光を纏う女』の掌編版で自作オープンオフィステンプレを活用したことは内緒。未発表だし)

この統一フォーマットをベースに、出来るだけシンプルに構成してみようと考えたわけ。何しろもう夜中だったし、寝なきゃいけないしで。そうしてデザインを考え始めたのだ。この新作はテーマが《波》だから、文庫のイメージエレメントである波線を利用すれば早いだろう。そう思うのは当然の流れだよね。

で、これが完成した表紙。

初のWEB限定公開作品『波』(昨日の記事から)

 

ちょっとした画像処理テクニックを使っているけど、作業時間としては10分程度だったかな。統一フォーマットがあって、そのためのテンプレを用意してあれば、とっても簡単にバリエーションを作れるという好例になったか。

ここで使った簡単な画像処理のテクニックについても、追ってチュートリアルを書いてみようかと思っている。(リクエストがあれば……)

それと、知ってる人は知っている、例のオープンオフィステンプレだけど、使い方次第でバリエーションが作れるようになっている。ただ、自分で考えて加工する必要もあるので、ちょっと難しい部分もあったかもしれないな。今後、ワンタッチでいろいろ作れるテンプレ集を考えてみようか、とも思った今夜の淡波。

さて、この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

読後感の解説?:フクチカズアキ著『Hotel New Alabama』を読んで。

いつもどおり、はじめに断っておきたいのだけれど、これはいわゆる書評やレビューではないんだな。実は、今回はさらに一歩先に行ってしまう掟破りを強行するから、もう感想ですらない。

じゃあ何だっていうと、こういうことになる。

《フクチカズアキ著『Hotel New Alabama』を読んだ僕がずっと感じていた世界を使って、小品にまとめてみた》

だったら二次創作? っていうとそういうものでもない。
じゃあ何?

小説の世界観の中で僕は作者にもてあそばれ、自由自在に転がされていたんだけど、その心地よさの中で、ずっと僕の頭を支配していたヴィジョンがあったのだ。それはなぜか、小説の内容とはまるで関係のないもので、そこに出てくる世界も小説の提示してくれた不思議な世界とは大きく異なるものだった。異なるというより、何の関連性もないものだったのだけど、物語を味わうこととはまた別の次元で、僕の心はある風景の中に放り込まれていた。それはとても独特で不思議な体験だったので、そのイメージ自体を書き残してみようと思った。
だからこれは、『Hotel New Alabama』とは一見何の関わりもないし、感想にもなっていないのだ。でも、この物語を読まなければ、僕の中にこの世界が生まれることは決してなかった。だから、これはやっぱり、僕にとっての『Hotel New Alabama』の読後感なんだな。

さて、本題は縦書きで、BiB/iによるePubで味わってもらいたい。僕とフクチカズアキ氏の共作を読むような感じでね。
(フクチさん、勝手なことを言って済みません!)
 

『波』
 

あ、ちなみに、僕が普段書いている物語はこんなに曖昧模糊としたものではなく、どちらかというとシンプルで読みやすいものになってるんだけどね……。


 

さて最後に少しだけ、『Hotel New Alabama』の内容にちゃんと触れておかなきゃね!

そこは、《消滅》したい者が訪れる場所、ホテル・ニュー・アラバマ。そこを訪れた者は、存在が元からなかったことになってしまうという。主人公はその謎を解明するためにその場所にやってきた、はずだった。彼女を迎えるホテルは、どんな要望にも応えてくれる。そこで働くのは同じ顔の男たち。そして出遭う、それぞれに秘密を抱える宿泊客たち。
謎がどんどん深まる中、殺人が起こり、主人公は強制的に交替させられる。エピソードはプツリと切れる。

本の最後の1%まで、秘密は解き明かされない。結末や仕掛けをあれこれ想像して読むほうが面白いのか、僕のようにただただされるがままになって読むほうが面白いのか、それは、この本をこれから手に取るあなたが、自由に決めて欲しいな。

惜しむらくは、誤字脱字をもう少し減らしたい。
(いや、決して多いわけではなく、多分僕がそういう部分に目の行きやすい体質なだけなんだと思う)
内容は本当にとても良いと思う。面白くて気が抜けなくて、上手いなあ〜と。

多くの方に読んでもらいたいなあと思う本が、僕の本棚にまた一冊、増えたのだ。

淡波亮作の作り方