詩を書いているとき
自分が、
詩人になったような気がする
ことが、
たまあに、
ある
小説なんかを書いているとき
もう、
自分がいっぱしの小説家先生に
なったような気がする
ことが、
ときどき、
ある
とっきどき、
だよ
でも
書き終わったとき
そんな気持ちは
どこか見えないところに
ぜーんぶ
逃げていってしまうよ
たまに、
絵を描いているときは
ただ、
無心に描いている
絵描きになったような気は
したことがない
歌なんか歌ってるときは、
ただ、
一生懸命、
上手に歌わなくっちゃと、
何かに追われている
でも、
楽しまなくっちゃね、
好きなんだからって、
自分に言い聞かせてみたり
冷静に、
ここをこうやって直さなきゃって、
思ったりする
それでも、
好きで好きでしかたがなくて、
下手くそで泣きそうになっても、
やめることだけはできない
それでも、
いいよね?
怖いものを知ってると
自分の姿がよく見えてしまうんだ
見えないほうが
知らないほうが
らくちんなことだって多い
周りが見えないだけで、
そう思うだけで、
それでもいいと
思うことがあっても
それではだめだと
思うことがあっても
ときには
それでもいいと
思うことにしよう
──ね?
淡波ログに掲載した作品を中心に書き下ろし作品を加えた初の詩集『猫になりたい』。
乾いた心にするりと忍び込む、読みやすい詩編を多数収録しています。