たまたま先日ダン・ブラウンの『インフェルノ』の広告を見て思い出した。
ダン・ブラウンは好きな作家の一人だ。売り方としては《ちょっと難しげ》なイメージを押し出してるし、芸術や科学のうんちくが結構盛り込まれているので小難しいイメージを持たれがちだけど、僕は思いっ切りエンタメ系の作家だと思う。
手に汗握るジェットコースター的な展開、いわゆるアンストッパブル(=読み始めると止まんね〜!)とか、アンプッダウンナブル(読んでると本を置けね〜!)とか、もう、ハリウッド映画のよう。だから映画にしやすいのだろうけど。
SF風味のミステリーだったり、理詰めでどんどん進んでいってガラリとひっくり返したり……、もしかして自作と通じる部分があるのかも、ってところも、好きな要因の一つだったりするかな?
(あはは、世界的なベストセラー作家と無名のインディ作家を比べてどうするのさっ!)
感覚としてはマイクル・クライトンとシドニー・シェルダンの間くらいか。そこそこ下世話で読みやすく、知的な味付けもあるから「くだらない」というレッテルを貼られ難いところはマイクル・クライトン寄りか。
近作はちょっとしつこいと言うか濃いというか、『ダ・ヴィンチ・コード』にあった《ちょっと儚げな美しさ》みたいなものがなくなってるのが少々淋しいかなあ。
で、記事タイトルの『Diabolus』。
これ、よほどのダン・ブラウン好きでも知らないと思われる作品名だと思う。実はこれ、『Digital Fortress(邦訳タイトルはパズル・パレス)』のドイツ語版タイトルなのだ。
ダン・ブラウンの作品を読み始めた頃、発売される端からAmazonで購入していた(と言っても数冊しかないが)のだけれど、あるとき全く聞いたこともないタイトルの本をAmazonで見つけたのだ。
「わ、いつの間にか新作が出てる!」
と思った情報砂漠の僕は即ポチ。
事前情報を仕入れないで読む方が好きなタイプなので、作品紹介も全く読まずに作者名とタイトルだけで買ったわけで──。
家に届いたペーパーバックを開いて、びっくり。
「わ、英語じゃない! 読めないじゃん」
そこでAmazonの商品ページに戻り、ちゃんと《German Edition ドイツ語版》と書いてあることに気がついたのだった。
わー、バカだ。バカ過ぎる。
(そもそも、新作だったらハードカバーのはずでしょ!)
でも、そこでくじけたら淡波じゃない。
ちょうどその頃、僕は仕事でドイツの会社とちょいちょいやり取りがあって、挨拶程度でもドイツ語が出来たらいいなあ、と思っていたのだ。
この偶然も何かの必然さ!
そう思った僕は、突如としてドイツ語の勉強を始めていた。
愛用のiPod touchにドイツ語学習アプリをたっぷり入れて、文法の入門書を買って、コツコツと勉強したのだ。
3ヶ月後、何となく初歩的なルールっぽいものが飲みこめた気がしたので、大胆にも『Diabolos』を読んでみた。辞書を引きながら、ゆっくりゆっくり一文ずつ。
「お、意外といける」──1ヶ月ほどかけて、1章分を読んだ。
(ほんの数ページだよw)
これ、頑張って一冊読み切れば、かなり力が付くんじゃないの? と思ったのもつかの間。何だかんだと忙しくなって、いつの間にやら本もどこかへ仕舞い込み、アプリも全く開かなくなった。
でも、今さら英語版で買うのももったいないし、いつかドイツ語でもう一回挑戦しようかなあなどと思いながら、やがてドイツの会社との縁もなくなり……未だに読んでいなかったりするのだ。
まあ、そんなことでね、彼のデビュー作である『Digital Fortress(パズル・パレス)』だけ、まだ読んでないんだよなあ。新作の噂も聞かないし、やっぱり英語版を買っちゃおうかな。
なんてぼんやり考えていたりする今日この頃。
(いや、山のような積ん読の消化が先だろっ!)
と、いうことで、今日の自作紹介は『そののちの世界7 サタンと呼ばれた男』にしよう。
ダン・ブラウンの『インフェルノ』の冒頭には、ちょっとおどろおどろしい感じの映像作品が描写されているんだけど、『サタンと呼ばれた男』の冒頭シーンに置いた映像は、この雰囲気へのオマージュ的なものだったりする。内容は全然違うんだけど、映像の醸し出す空気感って言うのかな。両方読んだ方なら何となく分かるような──いや、自分でそう思って書いただけ、なのかもしれないけど、ね……。
世界的な株価の暴落を一つのきっかけに、株式市場で”サタン”と呼ばれた男、貝塚剛は、そのあり余る資産を更に拡大させようとしていた。
貝塚の秘書になって三年目を迎えた牧村は、エスカレートする彼の欲望の引き起こす異常な争いに巻き込まれ、翻弄されていく……。
ということで、また明晩!