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音楽作ろうぜ2:Blenderで出来るとことん意外なこと!

さて、今回は前回の反省も含めてシーンファイル全体を見直し、パワーアップを図りました。
流れとしては前回記事「音楽作ろうぜ:Blenderで出来るとことん意外なこと!」の続きになりますが、下記のポイントを改善しました。

・FPSを遅くすることで、処理落ちが減少しました
・FPSを16に変更し、16分音符の長さで割り切れるようにしました

上記の2点によって、リズムが安定しています。

・アニメーションをもう少し音楽と連動するようにしました

更に一手間をかけ、作成した音楽とアニメーションは別々にレンダリングし、2点の動画ファイルを書き出した上で再度VSEに読み込んで1ファイルに合成しました。これによって、音楽、動画ともに処理落ちがなくなりました。

完成品がこちらです。


(こちらは小サイズ低画質版です。高画質版はこちらをどうぞ──たいして高画質ではありませんが……)


では、前回のおさらいを少々。

・Macでは、QuickTime Playerで生録します
・録った素材をトリミングして保存し、BlenderのVSEで開きます

今回はここからですね。

まずはBlenderのレンダリング設定にて、FPSを16にします。
16fps
音符の長さは倍々で増えていくので、最低限2の倍数のFPSにします。前回は三連符なども想定して48FPSで始めたのですが、どうもそれだと処理落ちが激しくなるようで、いろいろ試したあげく最低限の16FPSにしました。
これでもまあ、テレビアニメ程度の滑らかさは確保できるのでいいかな、と。

1秒あたりに16分音符が32個、2フレームで16分音符1つくらいにすると、完成動画と同じ早さになります。
これは音楽のテンポで言うと、T=120です。歩くような速さ、ちょうどいいですね。

読み込んだ音素材を並べ直します。
まずはドラムトラックです。

素材の移動は、マウスクリックで選択し、「Gキー+マウスの動き」ですね。

バスドラを4分打ちにするため、コピーして8フレームごとに並べます。
4つ並ぶと1小節分ですね。
ハイハットを8分打ちに、4分の裏にスネアを並べます。
スネアは、最後の裏拍にも1つ付け加えて雰囲気を出します。
これで基本リズムの完成です。
どう見ても、DAWソフトの画面ですね〜(笑。

下からバスドラム、スネアドラム、ハイハットです
下からバスドラム、スネアドラム、ハイハットです

2小節目は1小節目全体をコピーして、リズムを少々加え、ベースのフレーズも加えます。

16ビートのノリを加えるため、4分音符一つおきにハイハットの16分裏拍を弱く加えます。
(いわゆる、「チッチキチッチキ」のリズムです。言葉にするとなんてまだるっこしいんだろう!)

上3段がベースです
上3段分がベースです

ベースのフレーズは、最初に録音したのがC(=ド)の音です。Blenderのピッチ指定では標準のピッチが1.000という数値で、これを2.000にすると1オクターブ音程が上がります。これを割り振って半音あたりの数値を出しました。

こんな感じです。実際は再生させてフレーズを確認しながら並べていきます。
こんな感じです。実際は再生させてフレーズを確認しながら並べていきます。
完成してから気付いたのですが、これは単なる割り算であって、音階の12個の半音を均等に割り振っただけのものです。これでいわゆる12平均率になると思い込んでいたのですが、どうやらそんなに単純なものではなかったようです。
 まあ、もともとの音程が怪しいのでそれほど正確にならなくてもいいや、という考えで進めました。
 そのため、キャプチャGIFに表示されているピッチの数字は正しい音程ではありません!
 正確に作ってみたい人は、Wikiなどで《平均率》を調べてみてくださいね。正しい数値の表が載っていたりしますので。

ピッチの入力ボックスの上にはボリュームもあります。
録音が大き過ぎ、小さ過ぎの素材はここで調整しましょう。もちろん、音楽の表情に合わせて音符の強さを調整するのもこのボリュームで。

音符の長さについては、それぞれのストリップの右端にある三角をドラッグすればオッケー。
こちらのEdit Stripでも調整できます。

右クリックで調整が効かない場合は、Edit StripのLengthで伸ばせます
右クリックで調整が効かない場合は、Edit StripのLengthで伸ばせます

ベースが入って以降の全体をコピーしてリピートさせ、10秒分のトラックが出来ました。

コピーしたら、適宜、必要に応じて表情を加えます。
コピーしたら、適宜、必要に応じて表情を加えます。

続いて後半部分です。
latter

最上段が「うー」という声、次が「あー」で、3段目が「あー」の低い声です。
音程のGIFアニメに戻って見ると、ピッチの下にパンがあるのですが、残念ながらこの設定は「元の音素材がモノラルの場合のみ」効果があるようです。
Blender内でステレオの音をモノラルに変換する方法が見つからないので、これは今回は使用できず、ということになりました。

コーラス部分の繰り返しには、ベースも加えています。オクターブ違いの2音を加えて厚みを出しているのが分かるでしょうか。
適宜、ドラムの音なども加えます。

最後に前半のドラムフレーズをコピーして、全体の構成が出来上がりました。

でも、これだけでは完成版の音楽とかなり違いますね。

さてさて、完成版のエフェクトはどうやったんでしょうか?

気になりますねー。
気になった方は、来週の第三回目を乞うご期待!!

ではまた〜!

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音楽作ろうぜ:Blenderで出来るとことん意外なこと!

ども。

今回は今まで誰も考えつかなかったことを!
と思ったんですが、実はとっくにやってる人がいました。

最近見つけたんですが、アドオンを作った方がいて、Blenderを作曲ソフトみたいに使うことが出来るんですよね。
でも、それはソースがGithubに置いてあったりして、説明は英文だし、そこまでしてやらないよなあ……というのが正直なところ。

今回は、標準仕様のままで音楽を作ることに挑戦しました。

せっかく音楽を作っても、Blenderからはmp3などを保存することは出来ません。
でも、動画として保存できますよね。
じゃあ、ついでに何となくの動画も作っちゃいましょーということで、今回はこんなものを作りました。
(完成度には目をつぶってくだされ……挑戦することに意義が……)


ちょっと再生の遅れがあるのはご愛嬌。もう少しうまくタイミング調整できるようになれば、それなりに使える?

(恥ずかしいので音は小さめに!)

これ、最初に音素材を録音した以外は全てBlenderです。
特別なソフトを使うのはズルってことで、マック標準でついているQuicktime Playerを使って音素材は録音しました。

「おいおい、録音して加工するならAudacityとか使えばいいじゃん」
とか、そういうのは言いっこなしですよ。
あくまでも、Blenderで何でもやりたいという方が対象なので……!

──ということで、
【Blenderが使えれば誰でも出来る、Blenderでの音楽作り!】
の、前編です。


ではまず、音素材の録音です。

Quicktime Playerを起動します。

(Winバージョンで録音できるかどうかは分からないのですが……)
(Winバージョンで録音できるかどうかは分からないのですが……)

 

ファイルメニューから「新規オーディオ収録」を選択します。
2rec

こんな画面が出ます。
3rec

赤いボタンを押すと、録音が開始されます。
「え?」
何を録音するか、ですって?
もちろん、声ですよ。
マックに向かって、適当に声を出しちゃいましょう。

 

こんな風に、どんどん新しく録音して、音パーツを用意します。

僕は、口ドラム(カッコよく言うと、ボイパですね)を録音しました。
僕は、声ドラム(カッコよく言うと、ボイパですね)を録音しました。

 

失敗してもいいんです。
QuickTime Playerはトリミング機能があるので、上手くいったところだけを切り出せますからね!

 

05trim

上手くいったところだけをトリミング中
上手くいったところだけをトリミング中

 

声ドラムの音と声ベース、「あーー」という声、「うーー」という声を録音しました。

トリミングが済んだら、m4aで保存します。
トリミングが済んだら、m4aで保存します。

BD バスドラム
HH ハイハット
OHH オープンハイハット
SD スネアドラム
あとは、読んで字のごとくですね……

 

■さて、いよいよBlenderにいきますよ。

起動したらVideo Sequence Editor(VSE)を開きます。
08

 

「add」メニューから「sound」を選択し、
09

音素材の保存フォルダでサウンドファイルを全選択します(aキー)。
10

 

一つのトラックに、隙間を開けずずらりと並びました。
11

 

あ、これ再生してもダメですよ〜。単なる素材ですからね……。

このままだと音の出方が分かりにくいので、音の波形を表示させましょう。

ほら、これだけで音楽ソフトっぽく見えてきたでしょ!
ほら、これだけで音楽ソフトっぽく見えてきたでしょ!

 

Nキーを押してプロパティを表示させ、中ほどにある「Draw Waveform」にチェックを入れます。

さてさて……というところでまさかの時間切れですねえ。
あー残念。

では、続きは次回!
next

可愛くなきゃだめですか?

先日たまたま、CG関連の方との会話を辿って和牛先生という有名なCG講師の方のTwitterアカウントに行き着きました。
Blenderのマニュアル本を(紙で)出版している方なのですが、プロフィールをたどったらAmazonへのリンクに行き着いたので、踏んでみて驚きました。

そこには、僕が昨年購入したポストカード絵本が掲載されていたのです。
当時は、これがBlenderで作られたものだなんて考えもしなかったのに!


ミニチュアの写真?
いや、CGと写真の合成かな?
くらいに思ったけど、深く考えることもなかったのですね。

うーん、甘い甘い。
よーく見ていれば、これがフルCGであることは分かったはずですし、著者名から検索すればBlender作品であることも分かったはずですから!

まあ、そこで今回の僕は考えたわけです。

こういうの、自分も作りたいなあ……と。
もともと、Kindleで電子書籍を作る時に、マニュアルの中に絵本などの作り方の説明があって、ずっと気になっていたのです。

これまでにいろいろとCGの絵を作っていますから、それらを集めた画集を作るのもいいなあと。
前述のもののようにストーリー性というか、それぞれの絵の関連性は低いですが。

そこで、妻にちょっと言ってみたところ、
「えぐいからねえ」と一言。

「あ」

ダメですかね?
可愛くないと、受けないですかね?

グロい絵が好きなひとがいれば、ひたすらかっちょいい絵が好きなひともいますよね。
まあ、僕のはいずれでもない……。

可愛くもない、グロくもない、かっちょよくもない……

「えぐい……」

そんなこんなで、今、CG画集を作るべくちょこちょこ過去のデータを再レンダリングしたりして、手を入れています。

どうですかね、
──可愛くなきゃ、ダメですか?

Cyclesの影に色を付ける

ツイッターを見てくださってるBlender好きなひとにはもうお分かりかと思いますが……

先日、漫画家の藤原佑介さんがつぶやいてらして、ちょっと興味を持ったんですよね。

僕の場合、Cyclesでレンダリングするのは
「フォトリアルの表現をしたい場合」と、「アンリアルにしたい場合」の二通り。

こんなですね。

なつかしいな、これ。4年くらい前の画像だ……
なつかしいな、これ。4年くらい前の画像だ……

アンリアルの場合は、こんな。

知る人ぞ知る「とろろ姫のテーマ」のPVですねw
知る人ぞ知る「とろろ姫のテーマ」のPVですねw

で、この中間というのをあまり考えたことがなかったんですよね。
まあ、このへんは別として。

これの制作は、ちょっとずつ進んでます……
これの制作は、ちょっとずつ進んでます……

リアルにしたい場合は、Cyclesは物理系のレンダラーなので自動的に影に色がつきます。環境からの反射光に応じて、影にも色が乗るわけです。
例えば物理スカイを使った屋外シーンであれば、影にはちゃんと空の青味が入ります。
逆に、アンリアルなものの場合は、そもそもレンダリング時間を早くするためというのが一つの目的だったりするので、影を使わなかったりします。
アンビエント・オクルージョンで間に合わせれば充分だったり、接地感の悪さをごまかすためには上の画像のようにへんなリフレクションを入れたり、とか……で。

で、影に色を付けたいというつぶやきを読んで、僕もちょっと調べてみたんですよね。
そんなフェイクがCyclesで出来るのかな? と思いながら。

結論を言えば、簡単に出来ました。
今のところ分かっている方法でいえば、やり方は二通り。

一つは、マテリアルをいじる方法。
もう一つは、レンダリング結果に対してコンポジットでいじる方法。
どちらもシンプルです。

それぞれのノードセッティングと、簡単な解説を載せますね。

Shadow Rayの濃度をマスクにして、ディフューズからーに透明色を乗っけると考えると分かりやすい。
「Shadow Rayの濃度をマスクにして、ディフューズカラーに透明色を乗っける」と考えると分かりやすい。
上の設定でのレンダリング結果。
上の設定でのレンダリング結果。

要は、マテリアルの出口にMix Shaderを追加して、もとのMaterialにTransparent Shaderの色を乗っけるわけですね。それが合成される度合いを、Shadow Rayで調整する。ということです。

さて、このLight Pathノードですが、たくさんアウトプットが並んでいます。いろいろと試してみたくなるのが男心というもので……。

試してみて面白かったのがこの二つ。

Ray DepthをFactorに接続すると、影だけではなくて周囲にも色の影響が出る。より自然な感じがする?
Ray DepthをFactorに接続すると、影だけではなくてオブジェクトにも色の影響が出るので、より自然な感じがする?
Ray Lengthを接続。これは不思議な感じ。擬似コースティクスを生成するのに使えるかも!
Ray Lengthを接続。これは不思議な感じ。擬似コースティクスを生成するのに使えるかも!

マテリアル・ノード、いろいろいじっていると面白いですね。

では次、コンポジットで行なう方法です。

事前にレンダー設定内の「pass」でShadowにチェックを入れておくことが必要です。レンダリングされた影の要素に、Color Rampで着色します。
事前にレンダー設定内の「pass」でShadowにチェックを入れておくことが必要です。レンダリングされた影の要素に、Color Rampで着色します。

オブジェクトのシャドウ側にも色が着くので、リアリティに勝ります。しかも、レンダー後にいくらでも変更できる。
オブジェクトのシャドウ側にも色が着くので、リアリティに勝ります。しかも、レンダー後にいくらでも変更できるのが面白い。影の色だけアニメーションさせるとかも。

道のりは長そうだけど、いろいろ面白い効果が狙えるかも。

ぜんぜんコースティクス風にはならなかったけど、ね。
ぜんぜんコースティクス風にはならなかったけど、ね。

何かの参考になれば……。

じゃ、また明晩!

Blender:NPRのちょっとしたヒントに

final

ども、淡波です。

Blenderの習熟度で言えばまだまだ素人の域を出ないのですが、むりやり(w)仕事でも使っている関係上、結構いろいろ試してみたりはしています。

先週のブログ記事『今週の一枚:ん? なんか見たことあるような……』で、あるアニメーションを作っているということを書きました。

ある方から引き継いだBlenderのデータにアニメーションをつけていて、レンダリング時間を短縮するために様々なチューニングを施しているのですが、もし、Blenderをお使いの方が読んでいたら、きっと興味を持っていただけたのだろうなあ……と思い、今回の記事を書くことにしました。

さて、NPRってなんでしょ?
から、ですね。

CGをやっていると、「写真みたいにリアルにする」ことが一つの目的だったりします。NPRというのはその正反対で、ノン・フォトリアリスティック・レンダリング、つまり、「写真みたいじゃない画像化」ということです。

この『とろろ姫の歌』のPVもそうですね。こちらは平面のアニメ調ですが。
 

さて、今回最初にいただいたデータも、どちらかというとNPR系のマテリアル設定になっていました。レンダリング時間を短くするため、反射や透過などの処理は一切省き、ディフューズカラー(=拡散反射色)のみの設定です。こういった設定だと、「写真みたいじゃない」というか、人形劇っぽい感じになります。光沢のない塗料で人形を塗った感じで、ある意味リアルになるんですよね。

さて、その状態でレンダリングした画像がこれ。
レンダリング時間は約1分50秒です(core i7 dual Macbook pro)。
ノイズをある程度減らさなければならないので、サンプル数は100です。これでも、ちょっと絵がノイジーですよね。

先週より一人増えてますね。進行してる、という主張だったりして。

そして、今回チューニング済みのレンダリング結果がこれ。
レンダリング時間は約5秒で、実に22倍に高速化しています。サンプル数はたったの4です。
Cyclesレンダラーを使用していますが、これならInternalレンダラーと全く遜色のない計算時間ですね。むしろ速いくらい?

4s96

 

普通なら、ノイズだらけで見られたものではありませんが、こちらの画像だと、むしろオリジナル状態のレンダリングよりノイズが少ないですよね。

もちろん、オリジナルの自然な光の感じはまったくありませんし、雰囲気もかなり壊れています。でも、アニメーションを作る以上、レンダリングにかかる時間は最も大事な要素のひとつです。4,000フレームを100秒レンダリングすると、実に111時間もかかります。個人で、しかも「お手伝いで」作るCGのレベルではありません……!

雰囲気については手法を変えることで逆にプラスできる部分もあります。地面や山、背中のタンクなどは、面白い感じになっていると思います。しかも、絵はこれで完成ではありません。こちらをもとにしてコンポジットを行なった画像が冒頭にあげたもの。コンポジットのレンダリングにかかる時間は約1秒です。もちろん、オリジナル版を使う場合もそのまま完成ではなく何らかのコンポジットが必要なので、この時間は同程度ということになるでしょう。

好みはありますが、これはオリジナルの作者からもオッケーを貰いましたし、NPRのレンダリングとしては面白いものになったのではないでしょうか。

さて、前置きが長くなりましたが、本題です。

【超スピーディーにレンダリングが終わるNPRなんだけどちょっとリアルっぽいシェーダー】

タイトルも長いですね……。

ではまず、手前の人物の肌シェーダーを見てみましょう。

画像は幅2Kを超えていますが、プレビューレンダリングはなんと0.81秒です(左側の表示参照)。

この設定のミソは、基本となるシェーダーにすべてエミッション(発光)シェーダーを使っていることです。発光させれば光を受けませんので、GI計算は不要です。影も不要です。

だから、レンダリングの設定も、Light Pathsの値にすべてゼロを入れています。普通では考えられませんよね。

render
これぞ究極のレンダリング設定(?)

 

では、シェーダーの内容を簡単に解説しましょう。すべてエミッターなのに、ちゃんと立体感がありますよね。ノード・ツリーの左端に注目すると、「Geometry」ノードがあり、それが「Seperate RGB」に接続されています。
そう、先日恵比寿で開かれたBlendxJPに出ていた方はご存知の、「ノーマル」を使って上下の色を塗りわけるテクニックを使っています。
形状から面の向きの情報を拾い、その下向きの面にはちょっと暗めの肌色シェーダーを、それ以外には明るめの肌色シェーダーを当てています。
この二つが、Mix Shaderで混ぜられています。そして、何となく輪郭線らしきものを出すために、その先にはこげ茶色のエミッションシェーダーが合成され、ています。FacにFresnel(フレネル値)がインプットされているので、Fresnel値で制限された部分にだけこげ茶色が現われます。IOR(屈折率)が1.0未満だと、色の境目にグラデーションがつかず、塗り分けたようになります。0.95〜0.99くらいの範囲にあると、輪郭線のような効果が出ます。曲率と太さが比例するので、小さなオブジェクト(指など)ではほとんど線が見えないのが弱点で、逆に大きな面が同じ方向を向いていると、ベタ塗りになってしまう欠点もあります。

ゲームで良く使われる裏ポリテクニックを使った方が線は均等できれいかとは思いますが、この方法ならデータ量が倍になるのを避けられます。Freestyleの線は美しいですが、レンダリング時間が増えてしまいますし(「トロロ姫」は超ローポリなのでFreestyleを使っています)。

ちょっとFresnel値を変えたものを見比べてみましょう。

フレネル値=0.90
フレネル値=0.90
フレネル値=0.95
フレネル値=0.95
フレネル値=0.99
フレネル値=0.99

使いようによって、面白い効果を出せそうですよね。

今回は肌を例に取りましたが、どのシェーダーもほぼ同じ作りです。
もう一つ、ちょっと違うものを見てみましょう。地面のシェーダーです。水っぽい球を置いてみました。

このシーンの中で最も重いシェーダーです。
このシーンの中で最も重いシェーダーです。

まず、基本色の茶色です。左上ですね。
2色のエミッション・シェーダーを使ってFresnelで混ぜています。カメラから遠ざかる(角度が付くと)と明るい色になるようにして、距離感を出しています。
散在する岩と水球を見ると、地面への反射があります。反射の他にも地面への影のようなものがあります。不思議ですね。普通に考えると、発光している地面に影が落ちるはずはありません。

そこで活躍するのが、図中オレンジ色の枠で示したアンビエント・オクルージョン・シェーダーです。環境から遮へいされている部分に疑似的な影を落とすものですね。これは少々レンダリング時間を増大させますが、あるとないのではオブジェクトの接地感がまるで違いますから、ここは我慢です。
このアンビエント・オクルージョン・シェーダーも、単色だと地面の色をのっぺりさせてしまうので、2色に塗り分けて、地面の基本色と同じFresnelノードをつなぎます。

その先に繋がっているのが、反射を出すGlossyシェーダーです。あまりにもツルツルにすると反射がわざとらしくなりますし、反射をぼけさせ過ぎると、きれいに見せるためのレンダリング時間が増大します。映り方が自然になるようにRoughnessの値を調整し、これも遠ざかると自然に消えるようFresnel値で制御します。

さて、いかがだったでしょうか?

ちょっとまとめてみます。

・BlenderのNPRレンダリングは、実はCyclesでも素早くレンダリングできる
・基本シェーダーを全てEmissionにすることでノイズレスになる
・GI不要、レンダリング設定の値は全てゼロでOK
・立体感は形状のノーマルをうまく利用して出せる
・地面への影はアンビエント・オクルージョンで出す

■注意点です。
 全てが同値で発光しているので互いに影響を与えませんが、一つでも発光しないシェーダーがあると、それが光を受けてしまい、突然そこだけおかしな見栄えになりますし、ノイズが増えるので結果としてレンダリング時間が増大します。

僕の経験上、このやり方を使えばInternalレンダラーよりも速くレンダリング計算を行なわせることが出来ると思います。
シェーディング画面のキャプチャ動画とは異なり、DOFを調整できる(遠くをぼかせる)、反射を入れられる(しかもぼかせる)、という表現上の利点があります。

もちろん、OpenGLレンダリングでその中間の表現を目指す方法もあるのでしょうが、そこはまだ僕には未知の領域で(笑

また、進行状況を報告しますね。

では、今回はこれまで!

今週の一枚:ん? なんか見たことあるような……

C_whole_2500
○○さん

 

と、釣りタイトルにしてしまいましたが、まあ、見たことのある人はまずいないのかなぁとも思います。

実はコレ、ある方からデータをいただいてコラボ制作中の作品です(その方が制作途中のものを一回だけツイートしたみたいなので……)。
だいたいのモデリングと質感設定が済んだものを僕が再調整し、アニメーションを付けて、映像作品になる予定です。

最初にいただいた状態でも独特の雰囲気があってきれいな質感だったのですが、レンダリング時間があまりにかかってしまうため、僕の方でチューニングを兼ねて付け直し、結局かなり違うものになりました。これはこれで結構色気が出て面白いかなあと思いますが、どうでしょうね……。
(まあ、オリジナルを制作したご本人からは「良い」と行っていただけましたが)

それに、アニメーションを作るためにはレンダリング時間短縮のためのチューニングが必要なんですよ。これで最初の状態から10分の1くらいに短くなっていますから!

で、映像作品って、何のためのものかってのが、気になりますよね〜。何のためのものか。何かのためのものですよね、何かの……。
──さて、ヒント終わり。

この春、セルパブ界の話題をうっかり攫ったアレがね、また動いてるんですよ!
僕もこういう形ですが、参加させていただいてとても楽しいです。
(わ、分かりますよね……こ、ここまで言っちゃって……良かったのかな……)


おまけです。オリジナル状態の画像。

この、花のところに光が当たってるのがきれいなんですけど、時間短縮のために変えさせていただいちゃいました……
この、花のところに光が当たってるのがきれいなんですけど、時間短縮のために変えさせていただいちゃいました……(作者ご了解済み!)


はい、今日はここまで!

じゃね。

BlendxJPに行ってきたよ!

会場には、僕が作品を提供させていただいた画像を使ったポスターが!
会場には、僕が作品を提供させていただいた画像を使ったポスターが!

 

正直、びっくりした。2つの意味で。

まずは登壇者の方々のレベルの高さ。楽しいとか趣味とか言ってる場合じゃない。みんなガチで、Blenderを使い倒してる。深い。

2つ目は、ここまでCG業界の日常業務に浸透していたのかという驚き。僕自身、業務でBlenderをかなり使っているけど、それはあくまでも隙間的なというか、メインツールとは一味違う使い方だったりする。グループワークや他者とのデータ共有など考えると、メインはどうしてもやっぱりMaya、3ds maxになる。
もちろん、モデリングツールとして、UVツールとして、リギングツールとして、Blenderの機能は素晴らしい。Cyclesのレンダリングだって、ひと昔前の単体数万円レンダラーを完全に凌駕しているし、コンポジターの柔軟性だってたいしたものだ。スピード以外では。

そう思ってきたのが、時代遅れだと思わせられるくらいに、Blenderは業務の世界で認められている。
ちょっと前までは、そんなことを言うと負け惜しみだと笑われるような空気があったけどね、これはもう笑い事ではない。

Maya、3ds maxと並ぶメインツールとして使われても遜色のない時代が、本当にもうすぐそこまで来ているんだ!

はい、ここですっかり迷子になっているあなた。済みません。今回は文芸関連の話はありません……!
 Blenderというのはオープンソースで開発されている無料のCG制作統合ツールで、何十万円もするプロ用ソフトと遜色がないばかりか、優れた点も多々持ち合わせているというCGソフト業界を揺るがす存在なのです、はい。
(もちろん劣った点も多々あるけど、完璧なツールというのはないので、選択肢の一つになっていくことは間違いないだろうな……と!)

今回の記事は、そんなBlenderの日本におけるユーザー会であるBLUGの勉強会であるBlendxJPに参加してきた報告記になりますです。

 

では、最初の登壇者であるキャラクターの名手、友さんのお話から。
ある有名美少女キャラクターを、「持ち時間の30分でモデリングしてマテリアルをつけるところまでやりますよ」というつかみに会場がどよめいた。これは凄いぞ、って。
で、お話が始まって、友さんのユーモアセンスが爆発。
「やっぱり無理なんで、3分間クッキング形式で行きます」と。
どんどん次のシーンファイルを開くタイミングの絶妙さに、会場は爆笑
やはりモデリングはちくちく時間をかけてやることなので、マテリアル調整のTipsに絞って細かく説明してくださったのは大正解だったんではないかと。難しいと思われがちなノードエディターでの調整テクも分かりやすかったし、なにしろ楽しかったなあ。
で、友さんは、この日の解説に用いたモデルを使った次の著書(商業本)も執筆中なんだって!
絶妙に宣伝に繋ぐセンスも見習いたいっ!

お次の登壇者はアニメの作画監督である酒向大輔さん超メジャー級作品の製作中画面までたっぷり見せてくださった!)

※酒向さんはどこへリンクを張ったら良いか分からなかったので、画像検索結果ですw (あの作品の絵が!)

酒向さんは、アニメーションの絵作りをする時に3Dで一度全体の世界をざっくり立ち上げて、動きまで作ってからカメラアングルやレンズを決め、それをもとにして手で絵を描き、後工程に回すということをなさってる。より観客目線で、ダイナミックな演出が可能になったと。Blenderというツールを使うことで、構成力の勉強になる。画力は鍛錬するしかないスポーツのようなものだけど、上手にツールを用いれば効率的に学ぶことが出来る。絵描きは、いったん描いたものなら何も見ずに描けるから。うーん、その通り!

それにしても、酒向さんはBlenderを始めてから一年も経っていないとのこと。そんなに短期間で自動車やキャラクターの動きが自然に出来るところまでマスターなさってるところがもう、凄いの一言。やっぱり一流のひとは何をやっても凄いんだなあ……。

お次はプロの漫画家さんお二人が連続してご登壇(このお二人の話を聞きたくて参加した漫画家さんも多かったらしい!)。
プロの漫画家さんが、背景や小道具を作るためのツールとして、Blenderをばりばりに使い倒している現実をつぶさに見せていただいて、衝撃を受けた同業者の方たちも多かった模様。
何しろ、登壇者のお一人藤原佑介さんは、Blenderで効率化出来るから週刊連載が楽勝でこなせると仰ってるし、村川和宏さんも、全部自分一人でやるとした場合に、自分で描くよりBlenderでやる方が速いって言うんだもの。

Freestyleによる描画を手書きの線に近づけ、自筆の表現と馴染むように研究を続ける村川さんの求道的な姿勢、素晴らしい!

Blenderでいったん作っておけば、舞台となる街並みとか背景は必ず何度も出てくるし、小道具だって決まったものが登場人物といろいろな絡み方をする。確かに3Dで最初に作るのは大変だけれど(外注や素材購入という手段もあるし、フリーでDL出来るデータもあり)、アングルや見せ方が自由になるし、かなりの効率化になるという──。

藤原さんはご自分で効率化のためのアドオンも多数開発なさっているという猛者。プロ漫画家でありながらプログラミングまで! もう、凄いの一言。Blender作業の効率化をするために開発したアドオンを無償で公開してくださっているのも特筆モノ!
こちらは、部屋を簡単に作るRoom Toolsというアドオン。すごい!
スクリーンショット 2016-08-21 10.57.09

藤原佑介さんは、ご自分でも「(漫画家と言っていいのか)」、と仰っているとおり、いわゆる普通の漫画家さんとは違う、全く新しい職業形態を開発なさっている方、と言えばいいのかな。商業漫画のために3Dを導入するとメリットになる部分を、コンサル的な立ち位置から開発、3D作画、監修まで行なうという、かつては考えられなかった新しい職種なんです。

※なお、藤原さんの発表資料は、なんと本日から早速Boothにて発売してくださってます(版権系の画像はモザイク処理されています)。ポスターの画像データや発表の音声mp4、参考の自動車.blendデータも入って盛りだくさんです。気になる方はこちらへ! 

藤原さんのポスター
藤原さんのポスター。Blenderでこんな表現が出来る!

 

村川さんのポスター。これも全部Blender!
村川さんのポスター。これも全部Blender!

 

そして圧巻は、フリーランスのコンポジターでありマッチムーバー、クロノさん。カメラトラッキング業務の95%はBlenderで、他の有償ツールより優れている部分が多いとのこと。しかも超メジャー級映画でも使っているとのこと(作品名を聞いたけど、それはナイショみたい⇒作品名の出たツイートもあったけどね……w)。
Blenderのマッチムーブツールは良いという話は聞くけど、そこまでとは!(僕もそう言えば昨年、ホタルが飛ぶシーンを作ったことを思い出した。あれは難しかったなあ……)
やっぱり3Dソフトの中に入っているツールなので、単体のツールにはない使い勝手の良さ、3D機能の優位性があるそう。肝心の内容は、ちょっと高度過ぎて、大ざっぱな概要しか理解できなかった。情報の少ない中、自分で試行錯誤してベストなやり方(しかも商用ソフトより優れた方法)を導いているクロノさん。すごいなあ。

最後の登壇者はV-Rayのスペシャリスト、ハヤシヒカルさん。Blenderで使える外部レンダリングエンジンとしてのV-RayとRendermanのお話がメイン(タイトルが「走れCyclesレンダー」だったのに……というのはご愛嬌かw)。V-RayよりもRendermanのほうがBlenderへの統合が進んでいるので、設定としては少々取っ付きにくいけどオススメ、だそう。非商用なら無料だし。

その他にも、LT(Lightening Talk)が何本かあって、実はこちらもなかなかの濃さだった。ミュージック・ビデオの世界でも使われているとか、プログラミングでパラメトリックなモデリングをした形状を3Dプリンタで出している方とか……面白い、凄い話題が目白押しで!

スタッフの方々、たいへん素晴らしい会を主宰してくださってほんとうにありがとうございました! この場を借りて(てか、読まれない可能性大かもだけど……)、厚く熱く御礼差し上げます!

もう、「凄い凄い!」ばっかりで、圧倒されっ放しの一日だった。

こちら、スタッフであるBlender会の有名人、藤堂++さんと前田慈人さんによるポスターも、ご鑑賞あれ。

かっこいー!
かっこいー!
さすが藤堂さん、凝りまくり!
さすが藤堂さん、凝りまくり!

 

最後におまけです。実は名刺をどこかへなくしてしまい(最近ぜんぜん使ってなかった)、急遽会場に向かう電車の中で手書き名刺を作りました。コンビニでノートパッドと鋏を買って!

残った名刺たち。一枚、URLを間違えている。昨日配った中にも間違ったものがあったかもしれない……
残った名刺たち。一枚、URLを間違えている。昨日配った中にも間違ったものがあったかもしれない……

電車の中で鋏をチョキチョキ使っていたので、危険人物と思われなくて良かったなあと今さらながらに胸を撫で下ろす淡波です。

じゃ、また明晩!

今週の一枚─やっぱこれでしょ……

tororo

KENPのキャプチャだと思ったあなた、ハズレです。
今週一番のアワナミ的トピックは、やっぱりこちら。
『トロロ姫の歌』で決まりでしょう!

白井市の非公式ゆるキャラ《ジネンジャー》と、作家淡波亮作のコラボ企画第2弾。白井地底王国から姿を消してしまったトロロ姫の切ないテーマ曲です。

まあ、世間の人気動画と比べると(比べるな)、再生数は1億分の1くらいですが。僕のモノの中では最速での100再生突破のような気がします。
高評価が5つついてるし!

今回の動画のテーマは、ずばり《絵になる》PV。
え、なってないって?
それは言いっこなしですよ、ダンナ──。

・児童文学っぽい雰囲気で
・絵本になりそうなビジュアル
・3Dを使うけど、あくまでもベタ塗りのアニメっぽく
・線画の味と温かみを感じさせる
・どのフレームを切り出してもそれなりに絵になるもの
(もちろん、トランジション中は除いて、ね)

そしてもう一つ大事なのが、短時間で計算できる設定。これです。
この動画は1分40秒ほどの長さなんですが、通常、このくらいのものを作ろうと思ったら、数日間レンダリングしっ放しになってしまいます。
この暑さでそれは辛いし、レンダリング中は他の作業もあまりできなくなってしまうので……。それから、締切り。
まあ、こういったものを自作する場合、いつもは締切りなんてあまり設けないのですが、今回はジネンジャーさんに言ってしまったんですよね、
「遅くともお盆までには仕上げますー!」って。

歌のレコーディングは日曜日に無事終わり、映像の編集も半ばまで終わった状態でしたが、まだシーンが足りず、レンダリングの必要がありました。
いつもならこれで諦めるんですが、今回は最短2秒弱@1フレームのレンダリング設定(しかも初のフルHDサイズ)なので、手作業さえ追いつけば何とか終わりそうだ、と思って頑張っちゃいました。

Blenderで、Cyclesでレンダリングしてると、何しろきれいな絵を出すためには計算時間が膨大です。
ここで、今回のようなアニメ風限定のレンダリング時間削減Tipsを書いておきますね。

・マテリアルはすべてEmitterにします。
自分で光を出すことで、陰影のない絵になります。GIが不要なので、バウンスは0回設定でオッケー。ベタ塗りなので、リフレクションも透過もすべて0設定で。

・Freestyleは手書き風の味があるライン・スタイルにします。
サンプル数を極限まで減らしても、アンチエイリアス処理のかからないがびがびな線が逆に味になるのです。
⇒これ、超裏技でしょ?

今回はカリグラフィーのラインを使い、3D形状に沿うエッジの表情が、さらにいい雰囲気を出しています。

さすがにジネンジャーが登場する後半はポリゴン数も多いので、15秒〜最大2分くらい@フレームというものもありますが、お城やトロロ姫のシーンは1秒台でした。

このシーンでもフルHDで15秒くらい!
このシーンでもフルHDで15秒くらい!
このシーンは1分間に80フレーム計算出来ているので、1秒未満@フレームでした!
このシーンは1分間に80フレーム計算出来ているので、なんと1秒未満@フレームでした! アップで見ると、まるでインクが滲んだように線がざらついています。

 

そうそう、いちばん重かったのが、花畑のフライスルーです。どんどん花が開いていくシーン。レンダリングの時間自体は大したものではないんですが、事前計算とFreestyleの準備計算がかなり重かったですね。

このシーンで2分@フレーム。35フレームのシーンに2時間超です。
このシーンで2分@フレーム。35フレームのシーンに1時間超です。茎はパーティクル(Hair)でばらまき、花の部分は開くタイミングの調整があるため、一輪ずつ手で載せています。

それから、今回特筆すべきは、コンポジットを行なわなかった点。
通常、レンダリングを連番静止画で書き出して、それをコンポジターに読み込み、各種合成やカラコレを行ないます。
今回は、全フレーム、レンダリングしっ放し(仕事ならぜったい許されない、あり得ないって──笑)。
あとは編集ソフトで組み上げるだけという省エネながら、最初のカラー設計通りに出来上がりました。これも、Emitterマテリアルのみを使った2D調表現にしたから、最初から最後までイメージにずれが生じなかったんですよね。
今後、このやり方はかなり可能性があるなあと、結果にホクホクしている今日この頃です。

あ、歌はね……ちょっと濃すぎましたかね?
前回のテーマ曲とはがらりと変えて優しい感じに歌ったつもりだったのですが……。

最後に、Youtubeの動画を埋込んでおきますね。まだご覧になっていない方は、是非!

じゃ、また明晩!

MANUEL BASTIONI LABを使おう!(その19):1.3新機能─2

さて、最新バージョン1.3の新機能は、まだまだあります。今回は【血管・皺・腱】について見てみましょう。

とは言っても、《血管》などという設定項目は特にありません。リアルが信条のManuel Labですから、筋肉量の多い設定にすると自動的に血管や腱が浮き出し、年齢を上げていくと皺が刻まれます。
これを行なうのがDisplacement Mapです。

簡単に、解説します。

- Displacement Mapping -
 自分でポリゴンをモデリングして細かい形状を作るのではなく、貼り付けたテクスチャ画像の濃淡を形状の凸凹として自動的に形状を膨らませたり凹ませたりする機能。
 疑似的に明暗を付けて立体を複雑に見せるBump Mapとは異なり、実際に形状を細かく操作してくれます。
 Blenderの場合、あらかじめ形状を細かく分割してあれば複雑な立体になりますが、分割の少ないローポリゴン形状では、効果は出せません。そのため、形状データは重くなり、ビューポートでの操作も遅くなることがあります。

Manuel Labで筋肉量などに関連するパラメーターをいじると、内部で自動的にDisplacement Mapの画像を生成し、その画像を用いて凹凸を生成してくれます。

さっそく、その効果を見てみましょう。

標準体型(ただし、ヒーロータイプ)
筋トレ後!(tone=1, 筋肉量最大)
同じ筋肉量でやせ形に
同じ筋肉量でやせ形に (mass=-1)

いやあ、リアルですねえ、オリンピック選手みたいですねえ……。

次に、年齢を変えて顔を見てみます。

最も若い (age= -1)
最も若い (age= -1)
デフォルト (age= 0)
デフォルト (age= 0)
最も歳上 (age= 1)
最も歳上 (age= 1)

こちらもすごいリアルさです。ちなみに、今回のモデルは北欧系です。確かに、それっぽいです。

で、関係のあるパラメーターはこちら。

設定
(前回記事からの流用だったりして)

Character_ageを増やせば皺が増え、 Character_massを増やせば太ったことに関連するディティールが増し、減らせば痩せたことに関連する皺などのディティールが増します。Character_toneを増やせば筋肉量の増加と共に血管などが浮き出します。

シンプルですね。

そして、このパラメーターをリアルタイムで確認できるのが、Skin editor tools内にあるこの設定。

スクリーンショット 2016-08-07 11.26.58

設定を変更した後は、Update displacementボタンを押して画面表示に反映させます。

注意事項:プレビューに関しては表示させなくても構いませんが、「Update displacement」ボタンは必ず押してください。そうでないと、設定の効果がレンダリングに現われません。

Enable displacement previewがオンになっていないと、画面上では変化はありません。ちょっと言葉的にわかりづらいですが、「Enable」と書いてあれば、「有効化する」という意味なので、「今は無効」という意味になります。

subdivisionという言葉、今まで何度か出てきていますね。前回も書きましたが、これは、ポリゴンを自動的に(かつ滑らかに)細かく分割してくれる機能です。ローポリゴンだとdisplacementの効果が出ませんが、このsubdivision(=再分割曲面)によって、細かなディティールが表現されます。

つまり、両方をオンにしていると、動作が重くなります。でも、とてもリアルにプレビューされます。どちらもオフの場合でも、プレビューはされなくともレンダリングの際は効果が適用されます。なんとなく雰囲気がつかめた後は、プレビューはオフで構わないでしょう。

いかがでしょうか、作成したモデルが、更にリアルな感じになりましたよね!

さて、最後に、Manuel Labのドキュメントページの下の方に文字だけで書かれた、「その他の新機能」を(わかるところだけ)ちょっと訳しておきますね(これまでに触れたものは除きます)。

この中から、自分で試してみて面白そうなorためになりそうな機能を、次回は解説しようかなと思います。

その他の新機能

  • カスタムで付けたポーズを保存、読み込み可能に
  • 作成済みモデルを再度初期化できるオプションを搭載
  • 瞳のサイズを変更可能に
  • 首のカーブを設定可能に
  • 頬の膨らみと硬さを設定可能に
  • 左右均等の立ちポーズ(=Tポーズ)を追加

改善された機能

  • ファイナライズのボタンから、カスタムプロパティを削除
  • エラーと警告をコンソールにも表示しログファイルにも含ませるように
  • プロクシ(外部から読み込んだ服などをモデルに適用する機能)のパネルに、操作性を向上させるツール類を追加
  • 胸のモーフィング機能を改善
  • 表情のリセットボタンを追加

また、機能ではありませんが、GUIの改善や、様々なバグフィックスも行われています。
Manuel Labをお使いの方は、ぜひ、1.3へのバージョンアップをご検討のほどを──。


では、また次回!

もったいない

CG記事は、あなたのために書いているんだ。
そう、たまたまこの文章を読んでしまった、あなたのために。
CGの記事を読みたかったわけじゃないのに、淡波亮作に何らかの興味を持ってくれたかもしれないあなた。
たまたま電子書籍のことをWEBで見ていて、ここに飛んで来てしまったあなたのために。

CGのことを書いた記事は、基本的にほとんどのPVが検索からの流入なんだ。
CGに関して何か特定のトピックを知りたかった人が、検索結果にかかったこのブログへ飛んでくださる。
それはそれでひとつの大事な目的だし、初めてこの場所を訪れる人がたくさんいてくれることは、とても嬉しい。

CGのことを知りたくて来てくださった人が、
 「あれ? この人って小説家なんだ」と思ってくれることを、
 「面白そうな作品かも」と思ってくれることを、
 いつもちょっとは期待してる。
 そんな魔法みたいなことはなかなか起こらないけど……。

でもね──、
僕が一生懸命になって初心者向けのCG記事を書くのは、そうでない人にも読んで欲しいからなんだ。
ちょっと、バランスが悪いかもしれない。
CGのことを誰にでもわかるように書くっていうのは本当に難しいし、基本操作を毎回書くわけにもいかない。ある操作の続きモノ記事を途中から読んでも、何のことかさっぱり分からないだろうし……。

CGにまったく縁のなかった人にとっては、どうにも入りづらいかもしれない。
それは確かにそう。
そうも思うけれど、

ほんの少しだけ我慢して頑張れば、もしかしたら今までに見えなかった世界がちょっとは見えるかもしれない。

そう思って書いてる。

3DCGを作ることがが日常の僕にとっては、絵が描けない(と思い込んでいる)人が、一生懸命に頑張って線を引いたり色を塗ったりしていることが、まだるっこしく感じられてしまうことがある。
もちろん、ずっと描いていれば、描けば描くほど上手くなるし、努力は蓄積されていく。だからこそ、絵は面白い。
アナログは面白い。デジタルで描く手描きの絵も含めてね。
上手くなくても、センスのある人が描いた絵はとっても好きだ。

でもね、僕はもう少しだけ、楽をしてそれなりの見栄えがする画像を作れる方法があるってことを、知って欲しいんだよね。

CGなんて、と思うこともしょっちゅうある。
CGなんて、所詮機械で作ったもの。自分の手で描いた絵とは、そこに込められた想いの質が全然違う。

だけどね……
《やり直しがいくらでもきく》、
《好きなアングルで作り直せる》、
《一旦形にすれば、いろいろとバリエーションを生み出せる》

 それこそがCGらしさ。
 CGの良さ。

CGを作ることが目的ではない人にこそ、CGの面白さ、便利さを知ってもらいたいんだよなあ……と思わずにはいられない。

今週も、そんなことを考えながらちまちまと、CGの記事を書いています。

へっへ。

じゃ、また明晩!