「出掛ける時にはいつも、ローズマリーと握手する」
何のことか分かる人は、植物好き、かな。
確か、イギリスの学者か、文学者か、な。誰だったか分からないけど、なぜかずっと心にあった。
そして僕は、もうずっと何年も毎朝のようにローズマリーと握手している。
庭にもあるんだけど、わざわざ出掛ける前に庭には寄らないので、出勤途中の遊歩道にあるローズマリーとちょっとだけ手を触れ合うのだ。そうすると、ローズマリーの良い香りがほんのりと手に残って、会社に着くまで時々その香りをそっと嗅いだりする。
ちょっとした、朝の楽しみ。
実は昨年、この遊歩道のローズマリーが短く刈り込まれてしまった。
膝を曲げて手を伸ばせば葉っぱに触れることができるのだけれど、もっと、さりげなく触れたいんだよなあ。
だから暫くの間は、一応、付近に人がいなさそうなことを確認してからぐっと手を伸ばして触れていた。
でも、ほんの僅かしか触れることができなくて、指先に移る香りもほんの少しだけ。
最近少しずつ暖かくなってきて、少しずつ、少しずつ、枝が伸びてきた。
ような気がする。
もう少しで、またしっかりと握手できるようになるかな。
春よ、来い!