『ティプトン』連載第10回

“農民として食料生産に携わるアフタースリープ世代は、この宇宙での放浪生活が永遠に続くと思い込むことで、逃げ場のないこの空間を自分の故郷と考えることもできたのだ。”

『ケプラーズ5213』より


── 10 ──


星などない

窓の外にあるのは
漆黒の虚空だ

星は微塵も動きはしない

わたしは見たのだ

わたしたちの船は
どこにも向かってなどいない

飛んでいるのかすら
怪しいものだ

ジャンプだって?
時空を超えるだって?

知ったものか

あれはきっと
彗星か何かが
近くを通った時の
言い訳なのだ

わたしたちは永遠に
何もない漆黒の虚空で
ただじっと浮かんでいるのだ

目的地などない
星などない

そうでなければこの人生が
このままひっそりと終わってしまうことに
耐えられるわけがないではないか

選ばれたものだけが眠り
《希望の星》との出会いを待っている?

まさか!

わたしの寂しい人生とともに
この世界は終わるのだから!


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。


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