文体と作風

《文体》っていう言葉をよく聞くけど、これは他の芸術における《作風》とはちょっと違うのかな、と思っている。
そうそう、文体と作風ってのは似ているようで別物なのだろうかな?

例えば、「美味しそうなりんご」。
これを、「美味しそうなりんご」という言葉を使わずに文章で表現しろと言われれば、きっと、人によって千差万別の書き方が生まれるだろう。
だけど、「りんご」自体の書き方は、漢字・カタカナ・ひらがな・英語、せいぜいフランス語止まりで数種類しかないだろう。日本語の文章の中で、日本人が共通認識として理解できる表現としては、ね。

そこが、きっと文学という芸術の特殊性なのではないかな、と思う。

しかも、だ、電子書籍に限って言えば、書体も色もそのサイズも、何も決めることができない。読者の環境によってさまざまだから、青くて硬い書体で「りんご」と書こうが、赤くて優しい書体で「りんご」と書こうが、読む人には関係ない。まあ、ある場合もあるけどさ。
だから、文章で個性を出そうと思ったら、内容で差をつけなければならないわけだ。

美術で考えてみる。
「どんな」と言わなくたって、「りんご」は多種多様なものになるだろう。それこそ、技術の巧拙も含めて、全く同じりんごの絵にはなかなか、いや、決してお目にかかれないだろう。
ある程度上手い人に対して画材を指定し、どんな風に見えるかを指定し、描き方すら指定しても、同じりんごには決してならない。
“ある程度”上手い人の絵は“ある程度”似てくることがあるけど、それを超えた人たちの絵はまた異なってくる。それが、自分の画風を獲得するということでもある。

音楽もそう。
もちろん、同じ楽器を使えば(特にデジタル楽器)、ある程度似た表現にはなるだろう。が、まあそもそも音楽でりんごを表現することはできないから、比較するとすれば歌になるのかな?
(インストの音楽で「りんご」を感じさせるように表現するのは至難の業だろう)
歌は、それこそ人それぞれだよね。声が全く同じ人は一人としていないし、元の声が似ていたって、歌い方、声の出し方、音程……、もう、全然違うものになるための要素が山ほどある。

そして、文学だ。
文学では、りんごを書かなくてもりんごを感じさせることができる。りんごについて書くことができる。
でも、直接「りんご」と書いてしまうと、そこには個性も何もない、誰でも同じになってしまう。
そこが一つの、文体作りのヒントなのかもしれないね。

作品によって、それを表現するための作風によって、それを書く文体をコロコロ変えられる天才みたいな作家がいる。作風と文体は密接にリンクしているけど、イコールではなさそうだ。
(ああ、文学を学んだ人に笑われそうだな──)

僕の文体は、どんな話を書いてもそうそう変わらないような気がする。そんなに器用じゃないしね。でも、作風は、書くジャンルによっていろいろ変えられるような気もする。
(まあ、ハード風のSFと童話を同じ作風では書けないよね)

素人作家が自分の個性を確立していくために、文体を作っていくことはとても重要なのだろうなと思う。でも、それをどうすればいいのかは分からない。
(ああ、文学を学んだ人にとっては「基本のき」だったりするのかな? いや、それはきっと、永遠のテーマなんだろう。美術や音楽だってそうだもの)

書き続けて、読み続けて、書き続けて、直し続けて、また読んで、書いて、書き続けて……。そうやって少しずつ、自分のスタイル(=文体)を獲得していくのだろうか、な?

そうだ、美術における画風とか、音楽における作風なら、僕にも少しだけ分かることがある。
とても若い頃、それは作るものではないと思っていた。
「そういう風にしかできないから、それがその人の作風になる」
そう思っていた。

だけど、それはそうじゃない。
上手い絵を描けば描けるけど、一見下手な絵を描く人がいる。それはなぜだろう?
目立ちたい?
人と違うものを描きたい?
────いや、それはちょっと違う。

自分の表現したいものは何か?
どうやって描いたら、自分の表現したいものに近づけるか?
それは、そのスタイルは、《今まで自分が好きになったもの》、《触れてきたもの》、《考えたこと》、そういったことの全てが、自分の心の奥底に働き掛けて、生まれてくるものなんだと思う。
いや、自分で生み出していくものだと思うんだ。

待っていても勝手に自分のスタイルは出来上がらない。
だからと言って、闇雲に「こうしよう」と思っても自分らしさが欠けてしまう。
そういうものだ。
それは、自分の心とずっと対話し続けて、《目指すもの》と《できること》が一致した時にこそ生み出せるものなのかもしれない。

誰の役にも立たない、困らせるだけの記事──。
だったかな?

じゃあまた明晩!

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