思わぬところで見つけた《懐かしいお伽話》

それは、平沢沙里さんの『青き国の物語』。(ひとむかし前を思わせる)少女マンガ風の表紙、ラノベ調ファンタジーとも取れる作品紹介。だがその正体は、《ヨーロッパで口承されてきた昔々のお伽話》を収集した童話集で読めるようなテイストの、《懐かしいお伽話》なのだった。
今回、タイトルに作者名も作品名も入れなかったのは、表紙から受ける印象と中身のお伽話に、けっこう大きなギャップを感じてしまったからなんだ。もちろん、そう感じない読者もたくさんいるのだろうけど、この本は《童話》とか《お伽話》として紹介した方が、届けたい読者に届くのではないのかな、と、そう思ったのだ。

粗筋を言ってしまえばすこぶるシンプル。
ある呪いで醜い妖精との結婚を運命付けられた少女騎士が旅に出て成長し、呪いを解く鍵と恋を見つける、というもの。
このシンプルさ加減がいい。今時っぽいテイストが微塵もなく、それは即ち作者が書きたいものだけにフォーカスしている姿勢の表れなんだと思ったのだ。
売れたいとか、受けたいとか、気に入られたいとか、そういうズレた色気をすっきりと排除しきっていて、清々しい割り切りを感じる。文章は決して美文ではないし、人物描写が深いわけでもない。あくまでもすっきりとさらりとしていて、湿ったものが何もない。そうそう、その感じも欧風だ。
でも、そこに流れる落ち着いた気分は、冒頭で書いたようなお伽話全集に収められた小品を味わうような愉しみを与えてくれたんだ。
不思議と上品で、古風な雰囲気、そしてネーミングのセンスが秀逸だなぁと嬉しくなった。
ちょっと油断して現代語が漏れ出てきてしまうようなところもあったけど、全体は上手に抑制された翻訳調。

たまにはこんな長閑なお伽話をのんびり味わうのも、なかなか良いものですよ!

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