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まるきりの失敗だったなどと
誰に言えよう
私の人生が
大人になり、
そして年老いた
決して着くことはない地
ずっと教えられ
子供時代を過ごし
この、
白く美しいガラスの棺は
もう、
老いさらばえた肉体を包むことは
美しい少年よ、
少女たちよ、
いずれきみたちは迎えるのだろう
緑に包まれた星に降り立つ日を
栄光の日を
白い靄に包まれ
二百年の時を過ごし
私と同じさだめの老人が
いく百人も宇宙に打ち捨てられた後
きみたちは、
悠然と、
その美しい肢体をもって
柔らかな土を
私たちの知らぬ色の土を
踏みしめるのだろう
この分厚い鉄の檻に護られ
育まれた私たちは
あの《地球》という名の星を、
《母なる星》、
そして、
《本当の心の故郷》であると
教えられて育った
映像でしかない星を
私たちは
心に刻みつけられ続けた
繰り返し繰り返し、
茶色く汚れゆく地球の姿を
私たちは
恨むようにと
学習を強いられ続けてきた
母なる星を死に追いやった
科学技術を
文明とは何であったかを
文化とは何であるべきだったのかを
──この、科学技術の粋を集めた冷たい檻の中で
いや、
いや、
ここは、檻などではない
決して、
ないのだ
この場所、
この船こそが、
私たちにとって
ただ一つの故郷なのだから!
本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。
地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。