初めて見たのは十数年前だったと思う。この十年くらい、こいつのはびこり方は異常と言ってもいいくらいではないか。
心配したほど「際限なく増える」ということもなかったけど、何しろもう、この季節にこの花を見ない場所はないのではないかと思われるほどだ。植栽がきちんと手入れされた土地以外では。
それで何が言いたいのかというと、別に「ナガミヒナゲシを追放せよ!」と言いたいわけではない。もちろん、あんまり増え過ぎるといやだし、決して好きではないけど。
最初に日本で確認されたのは1960年代だというけれど、僕が子供のころはもちろん見たこともなかったし、こんなに増えてしまったのはここ15〜20年くらいなのではないかと思う。
だからなのか、【近年はびこった厄介な外来雑草】というイメージがかなり強い。在来種を脅かし、枯らしてしまう悪者のイメージだ。
でもきっと、生まれた頃からこの花に親しんでいる子供たちのイメージは、きっと違うのだろうなと思う。
例えば、「侵略的外来種ワースト100」に入っている植物の中で、きっと今の大人世代にとって子供のころからどこにでもあった普通の雑草にはこんなものがある。
・セイヨウタンポポ(既に在来種は片隅に追いやられてしまったというのは有名な話)
・ヒメジョオン、ハルジオン(いわゆる貧乏草ってやつだ)
・オオオナモミ(とげとげの実を服に投げつけ合うやつ)
・セイタカアワダチソウ(空き地に高々と伸びる黄色い花の)
これらは駆除しようとしたってもう完全に無駄な努力にしかならないくらい、どこにでもあるし、もう「日本の雑草(雑草という言い方の善し悪しはさておき)」になってしまっている。
ナガミヒナゲシは、このリストには入っていない。ロゼットで冬を越すので、ちゃんと駆除しようとすれば出来るからなのかもしれないし、根が強力なわけでもないので抜くのは簡単だ。実を付ける前に抜けば、その場所からは駆除できるかもしれない。もちろん、一つの花に1000以上のタネが出来るから、どこからでもまたタネはやって来るけど。
(wikiで見ると、在来種に対しては相当な悪さをするらしい。まだリストに入っていないだけで、ワーストの植物に匹敵するかそれ以上の悪者のようだ)
きっと、今の大人はこのナガミヒナゲシに嫌な顔を向けるけど、今の子供たちが大人になった頃、きっと普通の雑草として受け入れられているのだろうなと思うのだ。陽当たりの良い場所で咲いていると、花の色が鮮やかになって、それなりにきれいだったりする。そもそも、園芸種のヒナゲシとも大きな違いは感じられないし(素人目では)。
僕らは今、セイヨウタンポポに嫌な顔を向けない。
あの黄色い花を見ると、あ、春だな。と思う。花が終わると、綿毛をふうっと吹きたくなる。
ナガミヒナゲシの花が終わってタネが熟れると、中に入っている無数の黒いタネが案外美しい。指でつまんでみると、そのシャリシャリとした手触りも心地いいものだ。あんパンなんかについているケシの実と似た感じだ。これもケシの実だから。
あれ? ひょっとして食べられるのかな?
(もう一度検索。どこにも食べられるとは書いていないので、食べられないのだろう……)
この、無数に入っていていくらでも出てくる感じが、子供のおもちゃとしては面白いんじゃないか、と思ったりする。
(タネをばらまいちゃダメだけどね)
時代は変わり、植物は生きている。
──世界は、徐々に混じり合う。
まあ、そんなことを考える、春。
じゃ、また明晩!