あの、
幾何学で生み出された
宝石のような結晶が
わたしの手のひらだけで
いく千も
いく万も
きらりきらと
重なり合っているのだ
頭上を舞う
ひとつひとつに
名前を付けることは
叶わぬ数の
たとえどんなに冷たかろうと
もしわたしがここに
顕微鏡を持っていたのなら
幼いこどものような
夢中の眼差しで
きっと
次々に
その宝石を
プレパラートに
そっと挟み込み
目の周りに
赤い丸印ができるまで
ずっと
のぞき込みつづけて
いたいのだ
そして
道ばたの半端な怪物のように
崩れて穴だらけになった
塊の奥にすらも
きっと
ひそやかに
隠れているだろう
あの六角のゆめを
そっと
捜し求めたいのだ
淡波ログに掲載した作品を中心に書き下ろし作品を加えた初の詩集『猫になりたい』。
乾いた心にするりと忍び込む、読みやすい詩編を多数収録しています。