ちょっと久し振りにKDP作品を読みました。
この弍杏氏の俗称『かみうた』はちょっと前に読み始めていたのですが、なかなか続きを読む時間が取れずにいました。
好きな作品だし、とても面白いので、なかなか読めなかったのは単に僕がさぼっていたせいです。
念のため。
半分弱まで読んで止まっていましたが、このGW、一気に読了しました。
(一気に、って言うほどのボリュームじゃありませんが)
さて、この『かみうた』ですが、簡単に言うとこんなお話。
──ちょっとネタバレですが、そんなことで魅力が半減する小説ではありませんので、問題ないでしょう──
世の中にはもう面白い小説なんかない。だから、もう小説なんか滅ぼしてしまえ!
そう、小説の神様が言いました。
主人公は逆らいます。自分は小説に救われたのだ、面白い小説っていっぱいあるんだから!
と。
(前半を読んだのはもうだいぶ前なので、詳細の記憶はおぼろげです)
主人公の部屋の押し入れに勝手に居着いてしまってポテチをむさぼる小説の神様は、言います。
では、面白い小説を十冊、わたしにプレゼンしなさい。もしそれが本当に面白かったら、小説を滅ぼすのは止めてもいいよ、と。
そして、主人公はかつて愛した小説の数々を神様にプレゼンします。
というもの。
何しろ小説愛に溢れていて、ここで紹介される作品はどれもこれもたいへん魅力的で(実は、僕は一冊も読んでいなかったのですよ。何とも情けないことにね……)、この小説自体がすぐれた評論のようです。
紹介されている作品は、
安倍公房『箱男』 神坂一『スレイヤーズ!』 江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』 大槻ケンヂ『くるぐる使い』 小林泰三『酔歩する男』 乙一『夏と花火と私の死体』 佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』 ドナルド・バーセルミ『雪白姫』 そして……。
となっています。
(これはAmazonの紹介文からの引用なので、ネタバレではないですねw)
詩的でスピード感のある独特の文体で書かれた世界に浸る時間は、とても心地のよいものでした。
弍杏氏のファンにとってはバックグラウンドを知ることが出来るので、特にオススメですね。
章ごとにある扉のRin氏によるイラストもかわいらしく、ハイセンスです。
この本を読むと、本を読みたくなること請け合いですし、あなたが作家なら、「もっともっと面白い作品を書かなきゃ!」って、うんうん唸ってしまうこと請け合いです。
GWで遊び疲れた体に、こんな作品はいかがでしょうか、ね。