いよいよ新作の予告編を公開!

Kate Silverberg in a Fridge.
Kate Silverberg in a Fridge.

12月発売のSF小説、『ケプラーズ5213』の予告編を公開しました!ショット数は少ないですが、思いのほか手間が掛かりました。今日はヒロイン、ケイト・シルバーバーグの髪の毛を延々と描いていました…。
ちなみにこの画像、下記のような手順で作っています。

1. iPod touchのスカルプトアプリiDoughで頭部をモデリング
2. Blenderにインポートし、更にスカルプトと頂点編集で形状を整え
3. Blenderで質感設定し、周囲の環境(冷凍睡眠装置や毛布など)を作成してレンダリング→冷凍睡眠装置は映ってませんね!
4. Photoshopで髪の毛などを追加。ペンタブレットを使って、一本ずつ描きました
5. 顔と髪の毛の全体の明暗と色調をPhotoshopで調整
6. Motionで様々なフィルターやエフェクトをかけ、完成

是非、見て下さいね!

こちらからどうぞ!

Javieを知っていますか?

Javie
Javie

Mac環境で動画にエフェクトを掛けたり編集する為の唯一のオープンソース環境とも考えられるJavieですが、あまり知られていないようで、使い方のチュートリアルなどもついぞ見かけません。ただ、フォーラムは比較的活発に動いているようで、最近一週間でも投稿が見られます。(Win版を使用している人の方が多そうです。シェアの桁が違いますものね)
僕は2012頃からずっと愛用しているのですが、ぱっと見はとてもシンプルでいて、意外に色々と使えます。
一言で言うと、無料でシンプルなAfterEffect系ソフト、ということになるでしょうか。残念ながらソフトウエア自体の更新が止まっているので機能アップなどは諦めなければいけませんが、まだまだ現役で使えます。
各種エフェクト、動画編集、音声の切り貼り、文字エフェクトに文字アニメーション、アルファ合成にキーイングもあれば、連番静止画読み込みもサポート。
派手なトランジションがなかったり、プリセットがなかったりするので、見かけは本当に地味です。が、使い込めば味の出るいいソフトだなあ、とつくづく思います。
もちろん、処理スピードはかなり遅く、凝ったコンポジションを組んでしまうとレンダリングスピードは並みの遅さではありませんが…。
(それが一つの大きな理由で、ごく最近、ある有料ソフトを導入しました…でも、無料のJavieで映像作りに慣れれば、有料のソフトに乗り換えたときに相当覚えやすいと思います。)

Javie エフェクトメニューの一部。キーイングのメソッドがこんなに!
Javie エフェクトメニューの一部。キーイングのメソッドがこんなに!

では、具体的にどんな映像が作れるのかと言うと、こちらをチェックしてみて下さいね。現時点までに載せている予告編など5本の映像は全てJavieでエフェクトと編集をしたものですので!

基本のコンポジットはBlenderで行っていますが、Javieで出来ることと結構被っています。その切り分けについては、今度機会があればまた書いてみましょう。

さて、この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

MAC日本語縦書き環境-続編-

Nisus Writerデモをインストール。あちこち覗いてみました。大変高機能な模様で、メニュー項目が多いです。ところが、15分くらいかけて全メニューを見ても「縦書き」「傍点」「ルビ」と小説を書くために重要な三機能がまったく見当たりません!
駄目かも…。
週末もう少し見てみますが、小説執筆向きではないかもしれません。図形描画やテキストボックス、リスト、表作成など、UIはまるで違いますが、何か「あの」ワープロに近い印象です。デフォルト状態でヘッダとフッタ領域が表示されていたり、おせっかいな雰囲気がちらほら。
エディタ表示があって、入力はサクサクいけそうですが、それだけではね…。

今回は短いです。

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように。(無理)

Mac日本語縦書き環境

先日、iText Proのアップデートで入力がもたつくようになってしまったことを書きました。再度調査です。他に日本語縦書きの良い環境はないものか??

今回試したのは二つ。

Open OfficeとMariner Writeです。どちらも海外のものですが、縦書きをサポートしています。まず、Open Officeのワード互換ソフトであるWriter。Open OfficeのメニューにはWriterというものはなく、「文書ドキュメント」を選ぶようになっています。

縦書き設定は、以下の通り。
メニューから書式/ページ…/文字の方向 で、右から左へ(縦書き)を選びます。

Writer書式設定

さっそく文字入力。入力スピード自体は問題がないです。試しに現在執筆中の『ケプラーズ5213』全文コピペしてからその途中や後ろに文章を打ってみましたが、全くストレスなく打てます。これは良いかも?

縦書き入力
縦書き入力

次はルビ機能など試しましょう。

あれ?

ルビを振るとルビが網掛けになり、振られる文字が左にずれます。これは読みにくい。傍点機能はあるかな?と探しましたが、どうやらないようです。ルビ機能を使って、とも思いましたが、見栄えが悪くて気持ちが乗りませんねえ。

それでも、まあどうせ後でKindle用に全部変換するんだし、と思い直し、「さしすせそ」に傍点を振ろうとしましたが・・

ルビ
ルビ

勝手に単語を二つに分けてしまう!
そして、傍点を振った結果がこれ。あかんわ。

傍点テスト
傍点テスト

Writerは微妙、という評価にしました。。

次、Mariner Writeです。これ、確か20年くらい前にPascal WriteとかMariner-Jとかいう名前で売っていたものの後継ではないでしょうか?ググりました。その通り。老舗だ!30日トライアル版があるので早速ダウンロード。起動。

(2019年9月追記:本ソフトおよび販売サイトは既に存在しません)

Mariner Write
Mariner Write

早速文章をコピペ。ん?表示がやけに汚い。Retinaディスプレイに対応していないということなのか、必要な解像度の半分で表示されているのではないか、という感じ。あかん。
めげずに縦書きにトライ。落ちます。何度やっても落ちます。文章をコピペせずに、新規ファイルでトライ。
縦書きになりました。しかし、動作がのろく、ちょっとコピペするとすぐ落ちます。こりゃ使い物になりません。残念ながら。

画面
画面

結論:
iText Proが一番いい。ちょっと入力がもたつくことはありますが、一番使いやすく、表示もきれい。
(いや、本当はEGWORDが最高なんですがねえ…。)

(2019年9月追記:EGWORDは2018年?に復活しました。現在も販売されています!)

と、思ったのですが、昔、Nisus Writerというのがあったなあ、と思い、ちょっとググる。
わ。あります。現役だ。しかもMavericks対応とか、iPad云々とか、ePub書き出しとか書いてある。凄いぞ!
しかし、¥14,490もします。デモを落としてじっくり調べるとしましょう。

続きは次回!

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

Blender 101

やはり初心者バージョンのBlender101というソフトウエアが開発途上にあるようですね。Andrew Priceくんがずっと前にTon Roosendaal氏に聞いたという話を、またBlenderGuruで話していました。当分は出来上がらないような感じですが。

ちなみにBlender101をWEB検索すると、初心者向けチュートリアルやトレーニングの動画がたくさん出てきます。BlenderGuruにもBlender 101 seriesというのがありますね。「モディファイヤ百科事典」というものが載っていて、簡単なGIFアニメがたくさん! とても分かりやすいですよ。

僕もAndrewくんと同意見ですが、別ソフトを開発するより、スプラッシュ画面から機能限定の初心者モードが起ち上がるようにすればいいんじゃないかと思うんですが…。Game logicとかText Editorとか、Movie Clip Editorとか、Video Sequence Editorとか、初心者は当分使わないだろうという機能がたくさんありますけど、GUIが変わったりエンジンの部分が違ったりすると混乱の元ですし、そもそも別ソフトが必要になるほどBlenderのコードは肥大していないですもの。3ds Max、Mayaなんかインストーラがとうの昔にギガ超えだし。Blenderは最新の一番大きいMac版でも110MB、Win32だと51MBしかない!
ダウンロードするのもインストールするのも気軽でいいですよね。もっとたくさんの人が使わないかなあ。

新作の執筆状況6

新作『ケプラーズ5213』、まだ三回目の校正中です。もう少しなのですが、Kindle化までにはまだまだ時間が必要で…。そこで、ということで、予告編の一部が少しずつ出来てきていますので、Work in Progress動画をちょっとだけお見せしますね。←音はまだです。

マシンパワーが<これ以上は無理!>というので、これ以上の画質アップはご勘弁(最終はQHDサイズになります)。本当はもっときれいにレンダリングしたいのですが、やはり1フレーム1分以内のレンダリング時間に抑えたいですし。
このカットは全体で二十秒(=600フレーム)あるので、満足いく画質になるまでサンプル数を上げると100時間前後はかかってしまうのです。電気代はもちろん、愛機にそんな無理をさせたくないですもの。
ディティールをDisplacement Mapping で出しているため、Cyclesだけではかなり酷いノイズでした。それを少しでも目立たなくしようと、Blender Internalのレンダリングとハイブリッド・コンポしています。(あ、もちろんCaustics offとか、Filter Glossy、Multiple importanceとか、ノイズ軽減の基本は押さえた上で、Despeckleもかけて)

この記事は、誰の役にも立たないかなあ…。

改めて、Blender.orgのCyclesリファレンスページで、ノイズを減らす方法を読み直しました。

上記で書いた他に、マテリアルの色値を1(真っ白など)にしてはいかん、とか、透明の影に気を付けろ、とか、ありますね。これらの基本でしたね。このシーンは透明物のない、減衰光のない、遮蔽空間のない宇宙のシーンなのであれですが、インテリアシーンなどでFireFlyやノイズに困っている場合、先ほど上げたページを読んでみるといいかもです。

いつか、誰かの役に立ちますように!

iText Proがアップデート

全然気が付いていませんでしたが、愛用のMac用エディター、iText Proが11/6にアップデートされていました!
いつもMacOSからのアップデート・ノーティフィケーションが入ると、取りあえず明日、また取りあえず明日と伸ばしていたので、気付くのが三日間遅れたようです。丁度いま、『ケプラーズ5213』の三度目の校正中で、何か便利になったらいいなあと思いましたが、ぱっと見は変わらなさそうです。
ちょっと触ってみて気が付いたのは、
1.保存メニューが変わって、「別名で保存」がなくなっています。「複製」をしてから「保存」するという方法がありそうですが、「名称変更…」というメニューも加わっており、編集中のファイル名を変えられるようになっています。タイトルバーのファイル名をいきなり変更できるんです。これは新機軸かも。ファイル名を変更してから保存すれば、別名で保存と同じことですね。その後⌘+Sで保存でき、保存ダイアローグが出ません。これは面白い。効率アップになるかもです。

2.文字を編集すると、「編集済み」という表示がタイトルバーに出ます。ちょっと気が利いていますね。

(残念な部分)
ルビや傍点の機能が便利なのですが、これがePubと互換性がなく、html書き出しをすると変なリンク埋め込みになってしまいます。他の独自機能もそんな感じで。ここがePub互換になるといいのになあ、とずっと思っていましたが、まだお預けのようです。ただ、WEBページにはちょっとだけePubに関する記述がありましたので、作者さんもひょっとして気にして下さってるのかも、なんて期待を持ってしまいます。

これから使ってみて、別の新機能に気が付いたら、また書きますね。それにしても、アップデートが止まっていなくて良かった。

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

そうそう、書き忘れていました。Alt キーを押しながらファイルメニューをクリックすれば、従来のようにファイル名を変更して新規ファイルを保存出来ますよ!
(1/6追記)

好きな Podcast Best 3 その3

99% Invisible
99% Invisible

第1位. 99% Invisible

99%の目に見えないもの。といったところでしょうか。何と示唆に富んだタイトル。星の王子様の「大事なことは目に見えないんだよ」と似ていますね。

この番組のプロデューサーであり語り手のRoman Mars氏は、2013年の最もクリエイティブな100人(63位)に選ばれているそうです。また、ジャーナリストとしてこれまでに最も成功したキックスターターとしても有名だそう。

内容は、建築・デザインなどの歴史を美しいアンビエントミュージックと不思議なミックスの語りでつづります。一番好きなpodcastなのですが、内容は高度で一番難しいです。ゲストも多く、街角インタビュー的なものもあり、ナチュラルスピード+ナチュラルスタイルで喋ったりしますので、インタビューを受けている人の話は結構聞き取りづらいです。でも、長さが大抵20分ほどなので、頑張ってリスニングするには丁度いいのです。
これが全部分かるようになりたいなあといつも思いながら聴いていますが、気が付くと何も聴いていなかったりします。それでも何とも言えず美しいので、つい聴いてしまいます。

例えば、
「エレベーターの歴史」:子供の頃万国博覧会でエレベーターの原形を見たオースチンの創業者が、常識外れと思われながらエレベーターを作っていくお話。
「バーコードの歴史」:最初に考案されたバーコードは同心円状だったらしいです。確か、モールス符号をヒントにして考案したと言っていたような気がします。当時は色んな形のバーコードがあって、中々統一されなかったそうで。存命中の発明者へのインタビューあり、どうして今の形に落ち着いたのか、バーコードからQRへの進化へ、とか、これがなければスーパーマーケットは無茶苦茶になる、といった話とか、大変面白いです。
「台のない銅像と銅像のない台」「牛を運ぶためのトンネル」「ビルの回転ドアはどれほどいいものか」「落書きアーティストの人生」などなど…。
ほとんどのエピソードは一回きりしか聴かないので、聴いたそばから忘れてしまいますが、何となく思い出すだけでもこれだけ出てきます。
(あ、内容は間違っているかもしれませんよ、ご容赦くださいね)

もう2年くらいは聴いているのですが、未だに最新エピソードに追いついていないので、楽しみが一杯あるということで!

アルファマップを使うな!

BlenderGuru podcastでのお言葉。
The Third and The Seventh解説書の復刊にあたり、その中から大いに学んだ点の一つとして上げられていたもの(Andrewくんは初版千冊の読者)。

大量の樹木を扱う時、葉っぱにアルファマップを使うと、積み重なった透明度の計算でレンダリング時間が2倍にもなってしまうんだそう。目からウロコ。max+V-Rayなら参照オブジェクトとProxyを使えばポリゴン量はそれほど気にせず、レンダリング時間の圧縮にフォーカスできますね。

Blenderの場合、やはり外部リンクオブジェクトを使って、パーティクルで配置すれば相当行けますよね。たしか、その昔Macbook Proの古い機種で通算一億ポリぐらい行けた記憶がうっすらあります。勘違いかな?

念のため、知らなかった方のために。

The Third and The Seventh:2010年ころ発表のショートフィルム。当時、世界最高のCGと呼ばれていました。今見てもやっぱりすごい。作者のAlex Roman氏は、これ一本で超有名人に。その後CMの映像作りなどやっています。

解説書 From Bits To The Lens:The Third and The Seventh の制作解説書。出版当時、千部限定であっという間に売り切れ、復刊の声が凄かったそうです。maxとV-Rayのテクニックについて書かれたものですが、Andrewくんによると、CGと写真についての知識を得られるので、Blender使いにもとっても役に立ちますよ、ということです。私は読んでいないんですが。当時、Alex氏のサイトでチュートリアルを見た程度で。

さて、この記事がいつか誰かの役に立ちますように!

『それから』を読了

書き込みが遅れましたが、漱石の『それから』を読了しました。例によって、何が起こるのか分からないまま何も起こらないような気がして、ただその文章と表現を味わうように読まされ、気が付いたらワナにはまっている。そんな物語の構成でした。
そして、終盤にかけて怒濤のように盛り上がり、結論なく突然終わります。この終わり方、これぞ文学の余韻というやつでしょう。ハリウッド映画に慣れた脳みそに納得させるのは難しいラストシーンです。これを尻切れトンボ的なラストと思ってしまうのか、余韻に浸れるのかというところが、昔の純文学を楽しめるかどうかの別れ道なのかもしれませんね。

三四郎ーそれからー門、で初期三部作といいますよね。どれも恋と愛が主題なのかなと思いますが、主人公の年齢が少しずつ上がり、片思いー不倫ー夫婦、と男女間の心のかたちが変化します。登場人物は一切関わりがなく、三作は全く別の話ですが、後の人が初期三部作と分類したがるのも何となく分かります。(素人がこんなこと書いて、研究者のかたに怒られそう!)

さて、読みながら気になった、気に入った表現をKindleでクリップしておいたので、ちょっと引用しましょう。

“三千代は美くしい線を奇麗に重ねた鮮かな二重瞼を持つてゐる。眼の恰好は細長い方であるが、瞳を据ゑて凝と物を見るときに、それが何かの具合で大変大きく見える。代助は是を黒眼の働らきと判断してゐた。三千代が細君にならない前、代助はよく、三千代の斯う云ふ眼遣を見た。さうして今でも善く覚えてゐる。三千代の顔を頭の中に浮べやうとすると、顔の輪廓が、まだ出来上らないうちに、此黒い、湿んだ様に暈された眼が、ぽつと出て来る。”

― 女性の美しさを描写するために、参考になるかな、と思いました。美しいという言葉を使っていますが、三千代を美しいとは言っておらず、「二重瞼の線」が美しいと言っています。特別美しいとは言っていないのですが、主人公の代助がこの女性に対して持っている感情を端的に表しているのかなあ、と。

“昨夕の夢を此所迄辿つて来て、睡眠と覚醒との間を繫ぐ一種の糸を発見した様な心持がした。”

― 夢とうつつをつなぐ…うつくしい表現ですね。

“夜、蒲団へ這入つて、好い案排にうと〳〵し掛けると、あゝ此所だ、斯うして眠るんだなと思つてはつとする。すると、其瞬間に眼が冴えて仕舞ふ。しばらくして、又眠りかけると、又、そら此所だと思ふ。”

― その、睡眠と覚醒の境界を見届けよう、という気持ち。視点が面白いですね。

“気に入つた家へ這入らうと思へば、株でも遣るより外に仕様がなからう。此頃東京に出来る立派な家はみんな株屋が拵へるんだつて云ふぢやないか”

― 儲けているのは株屋ばかり。今の時代と同じ!

“日本は西洋から借金でもしなければ、到底立ち行かない国だ。それでゐて、一等国を以て任じてゐる。さうして、無理にも一等国の仲間入をしやうとする。だから、あらゆる方面に向つて、奥行を削つて、一等国丈の間口を張つちまつた。なまじい張れるから、なほ悲惨なものだ。牛と競争をする蛙と同じ事で、もう君、腹が裂けるよ。其影響はみんな我々個人の上に反射してゐるから見給へ。斯う西洋の圧迫を受けてゐる国民は、頭に余裕がないから、碌な仕事は出来ない。悉く切り詰めた教育で、さうして目の廻る程こき使はれるから、揃つて神経衰弱になつちまふ。話をして見給へ大抵は馬鹿だから。自分の事と、自分の今日の、只今の事より外に、何も考へてやしない。考へられない程疲労してゐるんだから仕方がない。”

― ちょっと長いですが、時代に対する考察が、今の時代ととても共通した空気を感じさせますね。

“日本国中何所を見渡したつて、輝いてる断面は一寸四方も無いぢやないか。悉く暗黒だ。”

― 夏目漱石の時代、日本史の知識が全くない僕は、海外の文化が押し寄せて西洋化がどんどん進み、誰もが訪れつつある自由な時代を謳歌しているようなイメージでした。こんなに行き詰まった時代だったんですね。今みたいに。

“茫然と、自分の足を見詰めてゐた。すると其足が変になり始めた。どうも自分の胴から生えてゐるんでなくて、自分とは全く無関係のものが、其所に無作法に横はつてゐる様に思はれて来た。”

― 今度は面白い表現です。別の本であった、「ある字をずっと見ているとその字には見えなくなってしまって困る」というのがありました。これ、よく分かりますね。そんな感覚を自分の足にまで感じるなんて、この感受性の鋭さ!

引用したい表現はもっともっとたくさんあるのですが、長くなり過ぎるので、今日はここらで終わりにしましょうか。

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淡波亮作の作り方