これまでKDPにあったKU/KOLという仕組みは、ダウンロードされた冊数に応じて(10%以上が既読になれば)ロイヤリティが支払われる仕組みだった。これが、Kindle書籍のページ数をカウントする新しい仕組みであるKENPCを利用した《既読ページ数》によるロイヤリティ計算に変更された。
以前の仕組みの場合、KDPセレクトに登録しておくことによってちょっとずつ印税が増えるのは嬉しかったけど、実際にその本が読まれているのかどうかは分からなかった。無料キャンペーンやプライスマッチによる無料本と同様に、DLされて積まれて、そのまま忘れ去られてしまうこともあっただろう。
だから、自分の本が読まれているという実感を得られるのは、誰かがTwitterやブログ(ブクログなど含む)に感想を書いてくださった時か、ごく稀にAmazon上でレビューがつく時に限られていたように思う。
これは結構寂しいものだった。売り上げ自体も《売り上げ》と言えるようなレベルのものではないが、それすら本当に最後まで読まれたのか、知る方法はない。(もちろんそれは、商業作家の紙の本でも同じかもしれないけど)
だけど、このたび始まったKENPCは違う。実際に読まれたページ数が、作品ごとに表示されるのだ(KDPセレクトに登録してある場合)。もしこの数字を毎日ウォッチしていれば、自分の作品が前の日に何ページ読まれたのかも分かりそうだ。これは、凄いことではないか?
印税云々より、この《読んでくださってる!》という実感のリアルさが半端ではない。
例えば『孤独の王』のKENPCを見ると、今月の数字は1,202ページだ。Amazonカウントではこの本は468ページだから、三冊弱がこの一週間くらいで読まれていることになる。『ケプラーズ5213』と『そののちの世界』を合わせると、6〜7冊ほどになる。ゼロのような数だけど、実際に読まれているという感覚は、作者をとてつもなく幸せにしてくれるものなのだ!
売れているかたの基準からすれば
《7/12追記:
ヤマダマコト氏、赤井五郎氏などの情報から、やはりKENPCの正しい数字は“既読KENPC”のグラフに現われているものだそうだ。作品ごとのページ数は、“今月の販売数”にある表で確認できる。残念ながら僕は勘違いしていて、Ver.1の後ろにあるページ数は、あくまでもその作品が何ページありますよ、という数字でしかない。現在のところ、僕の作品のKENPC数は、『孤独の王』が12ページ、以上だ。ぬか喜びもいいところだったようだ……》
その昔、僕にとって音楽こそがすべてだった頃、思っていたことがある。もし夜中に街を歩いていて偶然に、酔っ払いでもなんでもいいから誰か僕の知らない人が僕の歌を口ずさんでいるところに遭遇したら、もうそれで死んでもいいや、と。
それはとうとう実現しなかったけど(今のところね!)、今、ほんの少しでも、僕の全く知らないどこかで、僕の本を読んでいる人がいると思うと、僕はなんて幸せ者なのだろうと心から思うのだ。
この仕組みを構築してくれたAmazonさんに多大なる感謝を込めて!
(この仕組みは作家からのリクエストによって生まれたらしい。世界の作家さんに、ありがとう!)
ところで一つ、気を付けなければいけないことがある。KDPのヘルプ頁にはこのKENPCを用いたKU/KOLロイヤリティの計算方法が載っているけど、実際にこれを弾き出すのはとても難しそうだ。世界中でその月にKU/KOLで読まれた総ページ数が月末にならなければ分からないということもそうだけど、もっと分かりにくくしている大きな要因がある。それが何なのか、ちょっと見てみよう。
まず、実際にKENPCのページを見てみよう。管理ページ内の本棚から各書籍欄の右側にある《アクション》の「…」をクリックする。そうすると、下の画像にあるメニューが現われる。
次に、その中から《キャンペーンと広告》をクリックする。
すると、《本の販促ツール》というページに入る。そこの左下にあるのが、これだ。
この欄の一番下にある右側の数字がKENPCだ。先ほど気を付けなければいけないと書いたのは、この数字の読み方。ページ数で言えば、1,202ページで間違いがないだろう。でも、この数字はロイヤリティとは直結しない。なぜなら、KU/KOLで読まれた本以外でも、KDPセレクトに登録されてさえいればこのカウント数が掲載されているのだ。
無料キャンペーンや、普通に購入された書籍データが読まれたページ数も、ここには含まれていると考えるのが妥当だろうと、僕は推論した。恐らく、間違いではないだろう。というのも、今までに一度もKU/KOLされたことのない本の同じ欄にも、KENPCは載っているのだ。
『サタンと呼ばれた男』が77ページ。この本は32ページだから、約三冊だ。
『五感の嘘』が74ページ。この本は31ページだから、これも約三冊。
『希望の船』が142ページ。この本は61ページだから、これも約三冊。
『未来からの伝言』が172ページ。この本は71ページだから、これも約三冊……。
《7/12追記:
つまりこれは、KENPC計算による作品の総ページ数を示しているだけ。後述の7/9、赤井五郎さんからのご指摘による追記内容がすべてなのだ。もっと読まれたいと、心から思う。でもね、有料版を見てると、ちゃんと第一部に続いて第二部、第三部と購入されてるのだから、これは間違いなく最後まで読まれていると考えていいのだろうな。無料でDLしたひとが途中で読書を止めてしまうのは、しかたがないと考えるしかないし、届くべきでない人に届いてしまっただけだと考えよう。同じセルフ作家のなかでも、KENPCのグラフがじゃんじゃん伸びている方もいるみたいだし、このシステムは正しいのだ》
こんな調子だ。7月に入ってから、こんなに短編が売れた記録はないのだ。どう考えてもこれは、今までにDLされていた本の、今月の読書ページ数だと考えるべきだろう。
ということで、ここで示したページ数は、ロイヤリティには恐らく全く影響しないであろう数字なのだ。
だけど、《読まれた実感》としては、とてもとても大きいものだと、もう一度申し添えたい。
さて、いつかこの記事が誰かの役に立ちますように!
《7/9、公開直後に追記:
赤井五郎さんから、こんなご指摘がありました。
@RyoAwa KENPCのところに表示されているのが、Amazonの考える平等な本のページ数だと思ったのですが……つまり、淡波さんの孤独の王は1202ページの本であるとみなされていると。KENPCが601だったら誰かが半分読んだ(あるいは601人が1ページ読んだ)かと。
— Goro (@red56zzz) 2015, 7月 8
@red56zzz あ、なるほど! その考えが正しいかもしれないですね。今回例に上げたどの本も同じような倍率だし。しかしまあ、ストアのページ数とKENPCのページ数が全く違うというのは解せないですねえ! — 淡波亮作 (@RyoAwa) 2015, 7月 8
ううーむ。難しいですなあ……》
いい勉強になりました。
私も似たような勘違いしており、ストアで120ページの本がKENPCでは二日で260ページという中途半端なページ数読まれているのを見て、重複してカウントされるシステムなのか?
…と気になって検索してこのページに辿りつきました。
はじめは、重複カウントしているのか、先に読んだ人が誰か二人に紹介して、別の二人が140ページほど目を通したのか…のどちらかだと思い込んでいたのですが、結局は一人の人が一冊を最後まで読んでくれていただけ…という事が分かりました。
まぁ最後まで目を通して頂いただけで、めちゃくちゃ嬉しいんですけどね。
うれしさ半分、がっかり半分ですね。
コメントありがとうございます!
今日もKENPCの数字に一喜一憂(ほぼ憂ばかりw)しています!