背を凹ませ
肩に食い込む荷物は、
思いのほか
俺という存在を意識させる
手がかりなき
崖をよじ登るいま
額に降りかかる小石に
眼を開けることも叶わず
爪は割れ
半月に血がにじむ
こうべを垂れて見下ろせば
闇は、
限りなく広がっている
冷たい霧が
足下から押し寄せる
早く行けと、
俺を急かすのだ
ようやく辿り着いた場所は、
ほんのひと息つくことさえ許さない
内も外も闇に満たされ、
眼が開いているのかさえ
もう
分からないのだ
だが、
俺を拒むガラスの壁が
どこまでも続く絶壁の
冷たい光が
俺に告げる
お前は
眼を開けているが
何も
見てはいないのだと
俺は、
またしても登ることを拒まれ
ただ、
この開いているかどうかも判らない眼で
ガラスの壁を見つめる
壁は、
醜く痩せこけて
哀れに口角を下げる
己の姿を映すのみだ
遥か、
頭上を仰ぎ見る俺の閉じた眼は
青白い光に激しく痛む
俺が属してはいない何かが、
そこにある
決して
属することのできない何かが、
そこにはある
そこで誰かが
俺をあざ笑っているのだろう
横殴りに吹き付ける冷風が
俺のちっぽけな意識を奪おうと
ちっぽけな正気すら
奪おうとするのだ
固く閉じたまぶたに挟まれた
憐れな溝に
砂混じりの涙が滲む
それでも俺は
叫び続けるのだ
それでも俺は
登り続けるのだ
ほんの1センチすら進んでいないのに
忘れられない痛みを
忘れようともがきながら
俺は
叫び続けるのだ
この凍てつく風の中で