ちょうど同じ時期に出した本で有料のものとプライスマッチによる常時無料の作品がある。同じシリーズを構成する作品だから、文章のボリュームもテイストも似通っているし、ジャンルも同じだ。その中でも、雰囲気の近い作品同士を比較してみようと思う。
無料作品:
『夜啼く鳥』
『プロテイン・パック』
『段ボール箱の中の人形』
同シリーズの有料作品:
『完全なテロメア』
『可愛くてしかたがない!』
『フローラ』
『サタンと呼ばれた男』
『五感の嘘』
『希望の船』
『未来からの伝言』
1.『段ボール箱の中の人形』VS『サタンと呼ばれた男』
ちょっとダークっぽいテイストで、かなりエンタメに振った両作品。
この2冊は第6巻と第7巻なので、10日違いでの発売。だからほぼ同時期に無料キャンペーンを行なった。段ボールは2月末から月またぎだったので、キャンペーンでの合計数はサタンの1.5倍ほどあったということになる。そのキャンペーンで読まれたものが割と好評で、段ボールについてはその後も有料版がちょぼちょぼと売れることになる。サタンについても(グラフでは見えない程度だけど)、まあ、ちょぼちょぼとは出ていた。
そして7月のプライスマッチ発動。段ボールはDL数をぐんと伸ばしたけど、サタンはちょぼちょぼのまま。ここで無料キャンペーンを打てばその違いが分かったのだろうけれど、《有料で買った人がいるのに、その後で無料にするのは失礼だ》という方針にしたため、キャンペーンはしないことに。
結果として、段ボールはサタンの数倍DLされているということになった。ま、当然だよね、ずっと無料なんだから。
2.『プロテイン・パック』VS『希望の船』
どちらも見るからに未来のSF。ちょっと懐かしい感じの雰囲気も共通している。
希望の船は無料キャンペーンとしてシリーズ中で最高のDL数を記録。しかし、その後は超低空飛行だ。一方でプロテインは、常時無料作品の中でDLは低い方だ。だが、11月現在まででは(このグラフにはないけど)、ほぼ希望の船と同数のDLを記録している。もちろんこれからも無料が続くのだから、近いうちに抜いてしまうのは間違いない。
■一つの簡単な結論:
読まれたいなら(積まれるだけかもしれないけど)、無料キャンペーンより常時無料。常時無料を続けることによって、DL数がTwitterでのフォロワー数、ブログの読者数を大きく上回ることになる。これは、いわゆる《電書クラスタ》《インディーズ作家クラスタ》以外の読者に、本が届くことを意味するんじゃないか?
無料キャンペーンで数百冊DLされたとしても、それはたった五日間の出来事に過ぎない。だから、《電書クラスタ》《インディーズ作家クラスタ》にくまなく行き渡って、つまり元々自分を知っていた人に行き渡って、それで終わる可能性が高い。読者層を広げるためには、やっぱり常時無料作品を複数用意しておくことが重要なんじゃないか、な。
■もう一つ、あるとしたら:
絶対数が少ないのでグラフからは読み取れないけど、無料キャンペーン後〜5月までと、常時無料開始後の有料作品DL数同士を比較すると、概ね同じ月数でも常時無料開始後の方が約1.6倍多く購入されている(価格アップ後を含めてもね!)。
無料キャンペーンを定期的に行なっている場合、「また無料になったら落とせばいい」という気持ちが、読者のなかにあるのではないかな、とも考えられる。
僕は「発売直後以外はもう無料キャンペーンをしないよ」と宣言しているわけだけど、それをどれくらいの人がご存知なのかは全然分からない。
それでも、《無料の作品は常時無料、有料のものは新発売の時だけ無料キャンペーン》という方針を取ることで、有料のものをきちんと買ってもらえるような気が、しないかな?
まあ、はっきりとした傾向はないし、半ば強引な結論、しかも較べなくても分かるようなことだけど……。
もし、どなたかの参考になれば嬉しいな。
では、また明晩!