今日は別の記事を書きかけていたのだけれど、先ほど訃報を知った。
僕の愛するDavid Bowieが亡くなったのだ。別の記事なんか書いていられない。
死因は癌だったという。
1/8の新聞で見た記事が、前兆だったんだな。死期を知っていたんだな。来年、『大回顧展』をやるんだもの……。
まじか……新譜出とる! pic.twitter.com/UBmblMFRej
— 淡波亮作@ルルルとリリリ好調連載中! (@RyoAwa) 2016, 1月 7
思えば僕は、彼の比較的「恥ずかしい」と世間で言われているアルバムが好きだった。
最初に知ったのは『Let’s Dance』で、中でもChina Girlが一番好きだった。今でも時々口をついて出てくる。
(歌詞を暗記してはいないんだけどね)
その時点で、世間では、《ボウイは終わった》。という論調が多かった。
売れるためにポップロックな路線に走り、実際にバカ売れして、世界のロックスターになったボウイ。昔から彼を好きだった友人は、
「『Ashes to Ashes』でボウイは終わり。それ以降のボウイはボウイじゃない。まあ、Ashes to Ashesだって、ちょっと大衆に媚びてるけどな。やっぱりジギーだよ」
なんて、分かったようなことを言っていたものだ。
昔のアルバムで言えば『Space Oddity』は一番好きなアルバムの一つだけど、若い頃は、昔の曲にはあまり興味がなかったんだ。
確かに、『Ziggy Stardus』tはめちゃくちゃカッコいいし、エポック・メイキングだし、古くならないし、繊細だし、たまらなく美しい(何年か前にCDで再発売された時に買った。それまでは妻の持っていたアナログ盤を聴いてた。17歳の娘がBowieの曲で一番好きなのは『Andy Wahol』だって言うんだ、信じられる?)。
だけど、彼だってどんどん先に進みたいだろ?
当時、僕はそう思っていた。
『Let’s Dance』の次のアルバム『Tonight』も本当に大好きだった。表題曲の『Tonight』は、バスカーをしていたころの十八番で、もう何百回となく歌っていた。落ち込んだ時、悲しい時、淋しい時、どれだけこの歌が力になってくれたか知れない。
「今夜、すべては上手くいく」
そうやってひたすら言ってくれる曲──。
その次の『Never Let Me Down』は、初めて買ったCDだった(それまでは、ずっとエアチェックで聴いていた。なぜか、アナログ盤を買ったこともなかったんだ)。
このアルバムは本当に評判が悪くて、ヒット曲も『Day-In Day-Out』とせいぜい『Time will crawl』くらい。でもなぜか、今僕の頭の中では、このアルバムの『Beat of Your Drum』が延々と流れている。そんなに好きな曲でもないのにな。
ディスコグラフィーには出ていないけれど、映画のサントラも好きだった。
原爆の恐怖を描いたアニメーション『風が吹くとき』の表題曲、それから、後のファンタジー・ブームを先取りしたような『Labirynth』はほとんどの曲がボウイのものだった。テーマ曲の『Underground』が大好きで、このアルバムはミュージック・テープ(!)を買って、いつもウォークマンで聴いていた(オーストラリアにいたころで、音楽といえばミュージック・テープを買うしかなかったんだ)。結局後でCDを買い直して、今でも聴いてる。
映画も好きだったな。ジャレスという魔王の役でボウイが出ていたけれど、股間のもっこりばかりが話題になっていたっけ──もちろん、そんなことを話題にするのは日本だけだろうけど!──。
そして、『Black Tie White Noise』というとんでもない駄作(あ、もちろん持ってますけど)を出した何作か後、もう誰もがボウイは終わったと思っていた頃、衝撃的なスーパー・アルバムが出た(『Outside』もいいアルバムだけど、内容が確か、シリアルキラーを扱ったストーリーになっていた。とてもグロい写真が載っているライナーのせいで、どうしてもCDを買う気になれなかった。その次のアルバムは聴いてなかったけど……)。
そのアルバムとは、『Earthling』。つまり、地球人、というタイトルだ。彼は英国の旗がでかでかとプリントされたコートを身に着け、自信満々にジャケットに収まっていた。売上げはよく知らないけれど、Rolling Stone誌で三つ星半のレビューが付いたのだからきっと評価も高かったのだろう。シングルカットの『Little Wonder』をはじめ、『Dead Man Walking』や『Telling Lies』などカッコいい曲がたくさん入っている。当時まだ三つか四つだった息子が、『Dead Man Walking』をかけるとノリノリで踊り出したことを思い出す。
2012年頃にデビッド・ボウイは引退した。という話がまことしやかに囁かれ、彼と親しいというジャーナリストのインタビューが新聞に載ったりした。そこでは、「彼はもう人前には出ないし、スタジオワークもやらない。そっとしておいて欲しい」というようなことが書かれていて、とても寂しい思いをしたものだ。
ところが、である。
そのほんの二、三ヶ月後に、突然ニュー・アルバムが発表されたんだ。『The Next Day』だね。引退したなんて噂を広めておいて、実はその間もレコーディングをしていたんだよね。しかも、ミュージシャンや音楽関係者ですら、彼がレコーディングをしていることは全く知らなかったという。
すごいな。やっぱり彼はやることが一枚上手だ。そう、しみじみと思った。
そういえば、クラウドファンディングが流行り出した頃、ミュージシャンとして真っ先に取り入れてあっという間に資金を調達したという話もあったっけ(記憶違い?)。
『The Next Day』。これは、なんと名作『Heroes』のジャケット写真をそのまま使って、しかも顔が完全に隠れるように白い四角が描かれ、そこにシンプルなタイトル文字だけが入っているという、過去の自分に挑戦するようなジャケットだった。
この前の数枚は今一つだったけど、このアルバムはDavid Bowieらしい、いいアルバムだった。
これで最後かも知れない、とも思ってしみじみと聴いていたけれど、まさか、また今年出るとは思わなかった。
『Blackstar』
本当に最後の作品、遺作になってしまったけど、さきほどAmazonで買いましたよ!
届くのは明後日くらいかな?
と思って改めて見たら、在庫切れになっている。再プレスがかかるまでお預けになりそう……。
楽しみに、じっくり聴こうと思います。
とりとめもない話になってしまった。書き続ければいくらでも書けそうだけど、ここらでお終いにしなきゃね。
── 合掌 ──
P.S 本当は過去、ボウイの曲をカバーしたものを2曲PVとして作ったことがあってそれを最後につけようかと思っていたんだ。でも、何だか自分のためにカバー曲を載せるのは嫌だな、と思った。
時間がなくて『Blackstar』以外は何のリンクも貼れなかったけど、どうか今夜は、あなたの好きなボウイの曲を聴いてください──。