家から最寄り駅にいたるまでの遊歩道は、一部が桜並木になっている。
その桜並木は、ソメイヨシノだけではなく、山桜やほかの種類が適度に植えられている。だからサクラの花を楽しめる時間も少しだけ長いし、ソメイヨシノのほんのり淡い桜色以外にも、鮮やかめのピンクや八重咲きの可愛らしい花や、いろいろとあって楽しい。
そして今の時期、勝手になったサクランボが、どんどん地面に落ちては僕らの靴に踏まれ、濃い赤色の染みを石畳に作っている。そろそろ種だけになり、乾いた薄黄色の屍が散乱する季節がやって来つつある。
サクラの種を踏みしめると、
足下でカリカリと音がする。
僕はこの音を聞くと、そろそろと春は行ってしまったのだなと、感じることになる。
その、少し前。
まだ、地面に落ちたサクランボの赤が鮮やかだった日の写真を、どうぞ──。
このサクランボ、タイトルのように食べられないわけではない。本当は。
もちろん食用の品種のように大きくはないけれど、ちゃんと熟れていればしっかり美味しい。
子供たちが小さい頃、かれらは学校帰りにサクラの木に飛びつき、熟れたやつをむしっては食べていた。ぼくも、ちょっと食べてみたことがある。甘酸っぱくて、美味しかった。
でも、近年は食べてはいけないことになっている。
毛虫がついたりするから、サクランボが熟れる前くらいに一斉消毒をやられてしまうからだ。
消毒の薬が身体に悪いから、絶対食べてはいけないと、言われてしまう。
消毒薬を撒く前に、「食べるなら今日までだよ」と言ってくれた学校の先生もいたらしい。
息子などは、夕方まで友達と旨そうなサクランボを探し回っていたそうだ。
今は、どうなんだろうか?
そう言ってくれる先生は、いるのかな?
一日か二日ずれると、子供たちに毒を食べさせることになるからって、もうそういうことは言わないようになったのだろうか?
近所の子供たちがサクランボを食べている姿を、もうずっと見ていない──
地面に落ちているサクランボの輝きを見ていると、つい、手に取りたくなる。
美味しそうだな、と思ってしまう。
でも、誰も食べることが出来ない毒の実が、そこにはあるだけなのだ。
じゃ、また明晩!