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レビューの星の数って……。

二つ星以下のレビューが付くと、かなり作品の売上げにダメージがあると言う。多くのひとは、星の数を成績表の1〜5のように考えていると思う。3でようやく標準(平均点レベル)という。でも、本当はそれだけじゃないんだよね、実際、星が一つでも褒めているレビューを見ることもある。

そういった場合、レビュアーのひとはその作品をダメだと思っているのではなく、星の数は《+1の褒め具合》になっている。星が何もないのは《評価なし》で、星を付けることイコール高評価という発想だ。
ただし、それを見て判断する人の多くは、《星の数が少ない=ダメ》と思うことが多い。多いというより、ほとんどのひとがそう思ってしまうだろう。
多くのひとの共通認識として、星一つは《最低》ということだ。それは、《星0》という評価が存在しないから、何か悪口を書こうと思った人も星を一つ付けざるを得ないからだ。

だから本当は、一つ星レビューには三つの種類がある。と思う。
・「全くダメだ、この作品は」=内容が評価に値しない
・「作品の評価以前にDL出来ない、or読めない」=そもそも商品ですらない
・「良いと思います」=上述の《+1の褒め具合》

二つめまでの理由で一つ星をもらってしまったら、諦めて出直すしかない。自分の責任なのだから。
さて、この三つ目が問題だ。KDP作品の場合、そもそもレビューが付くこと自体、とても少ない。僕の作品でもレビュー0のものが18冊中7冊もある。レビューがあっても、8冊は1つだけ、2つレビューが付いたのは3冊だけだ。
幸い、星一つの評価はないけれど、星三つのものが一つある。この星三つの本は、やはり売れ行きがかんばしくないように思える。実際のレビュー内容としては、まあ悪いことは何も書かれていないのだけど、星の数だけ見て判断されるとやっぱり辛いものがある。

で、星一つの話に戻ろう。
たった一つしか付いていないレビューが星一つだったらどうだろう?

そのせいで全く売れなくなってしまったという話を他のインディーズ作家の方から聞いたことがある。だから、星をいっぱい付けてくれという話ではないのだけどね。
星に対する考え方っていうのはいろいろあるってこと。これはね、本当はAmazonさんが共通の基準を設けるべきなんじゃないかと、思っている。

星を付けた時、そのデータがアップされる前に確認ダイアローグを出すのはどうだろう?
例えば、こんな内容で:
「『○○作品名』に星一つを付けました。星一つは、点数でいうと100点満点中0〜20点という意味になります。本当にその数で良いですか? 非常に低い評価は、作品の売上げに深刻な悪影響を及ぼすことがあります。もしあなたの評価が《0〜20点》でないのなら、ぜひ、星の数を再考してください。あなたからの客観的な評価を、全てのお客様と販売者は歓迎します」

ね。

あなたは、どう思うかな?

読んだよ:初瀬明生著『エチュード』

この本は、記念すべき例のやつの第一号なのだった。遅ればせながら、ようやっと読みました。
例のやつ?
と思った方は、こちらへどうぞ。
『Kindle用表紙を作成するために最適化したOpen Officeのテンプレート』

ご利用ありがとうございました(!)

こちらがその表紙。

『エチュード』は、『即興劇』『傍観者』という2本のミステリ短編で構成されています。簡単な粗筋は帯に書いてありますね!
日常の中のちょっとした非日常から、背筋がゾクッとするような気持ちを味わい、すっきりと落ちます。前者の『即興劇』は途中で先が読めた部分もありましたが、ちゃんと心の中に踏み込んだ描写があり、《意外なオチ》だけではない味わいがありました。

後者の『傍観者』は、鮮やかなオチがいいですね。ただ、惜しむらくはちょっと前置きが長い。このオチなら、ショートショートでスピーディーに読ませて欲しかったかなあと思います。ちょこちょこと短いエピソードがあり、登場人物がいますが、あまり生きていなかったような……。
半分か三分の一の長さで密室劇に仕立てても良かったのでは、というのは私感ですが。

2作を通じて、ちょっと残念だったのは、文体に流れが乏しいような気がしました。これは感覚的なことなので読者によっても違うと思いますが、もう少し滑らかに読めたら、と思います。難読漢字と平仮名遣いのバランスであるとか、主要な人物とそうでない人物の描写ボリュームのバランスであるとか、そういった部分にも改善点がありそう。

楽しんで読書できましたので、ま、欲を言えば、ということですが。

最新作の『ヴィランズ』はとても評判が良いようですし、僕自身、既にKindleに積んでいます。
こちらも楽しみに読ませていただきますよ!

では、また明晩!

『孤独の王』について、ちょっとまとめてみた

盛大ネタバレ注意。でも、ネタバレの上で読んだ方が安心して読み進められるかもしれません……。
(今日はですます体です)

まずは、Twitter上でいただいた感想など、貼ってみましょう。最近のもの、と思ったのですが、この1ヶ月で感想をくださったのはお二人だけでした。ので、ここ半年くらいに期間を広げてみますね。
では、古い方から並べますよ。

まずは、『キミコロ』の藤崎ほつまさんから!
(今さら済みませ〜んw)

(この頃までは自分も記憶違いをしていたのだけど、正確には(?)1,232枚というボリューム)

(繰り返しの説明を多めにしたのは、長い時間をかけて読む人が忘れてしまわないようにという考えでした。藤崎さんは一日で読了なさったので、より、重複感があったのでしょうね!)

藤崎さん、ありがとうございます!

お次は『青き国の物語』の平沢沙里さん。

そして、平沢さんが読み終わる前に『ターンワールド』の牛野小雪さんがブログに感想記事を書いてくださいましたね! (こちらは完全に結末まで触れてますので、、)

平沢さんが読み終わってくださり、ブログに感想記事をば。

次はインディーズ作家ではない方から、最近です。

星三つ、ってどうなのかな? と最初は思いましたが、この方の感想をいろいろ読ませていただくと、結構辛口が多く、三つだったら褒めてくださってるんだなぁ、と勝手に解釈したのでした。
普段関わりのある方以外からの感想がとても嬉しく、ちょこっとやり取りさせていただきました。ありがとうございます。

(そうです。本日の記事は、この方からいただいた感想が一つの切っ掛けだったのです!)

では次、行きましょう。 『要約 武士道』など、古典の現代語訳を手がけてらっしゃる水上基地さんです。 ブログに書いてくださいました。

僕自身が書いたこんな解説記事も思い出しましたよ。
『淡波ログ:パラドックスの面白さ(?)』


 

さて、もうほとんどの方はお腹いっぱいかと思いますが、ここからが本題ですよ!

これは、本編を読み終わった方用に《あとがき》として書くようなことなのですが、これを知って読むと理解が深まるかもしれないなと思いつつ、冒険してみることにします。
でも、ネタバレが嫌な未読の方は、読まない方がいいかもしれないません。
騙される悦びというのも読書の楽しみの中で大きなものですから……。

『孤独の王』は、普遍的な歴史を扱った話です。

謎の美女と少年、賢いおじいさんというお膳立てに、穏やかで優しげな雰囲気で幕をあけるけれど、夢いっぱいのファンタジーでは決してない。
全然、ないのです。
(ベルセルクよりダークだと言われて苦笑い)

どんなに繁栄を極めても、崩壊しない文明は決してありません。歴史上、亡ばなかった文明は存在しないですよね。今、存続している文明だって、単にまだその時期が訪れていないからに過ぎないのでしょう。

当初から、本の内容紹介ではこううたっています。
《滅亡した古代王国》
《その最後の数十年を辿る物語》と。

《悲劇》というキーワードを書き加えたのは最近ですが、どうもハッピーエンディングを期待して読まれてしまう傾向もあるようなので、変な形で読者さんを裏切りたくはないな、と思っての処置なのです。
《滅亡》という言葉を忘れてしまった読者さんのために、ね。
もちろん、意図的にギャップを拡大させるためのミスリードをしてるわけでもあるのですが。

そしてこれは、現代の日本を扱った話でもあります。

悪政を敷く王は自民政権、《羽ばたける自由の民》は野党、ジュノレア姫は自民造反組だと、簡単に読み替えられるようにできています。

表向き主人公のセニーロくんは、希望に胸を膨らませて立候補した若き政治家。きっかけはどうあれ、現実と向き合い、やがて何かに染まってゆきます。政権を奪取したまではいいけれど、血で血を洗う政争の果てに、というよりは己の愚かさのせいで、追い落とされる運命にあるわけです。

鎖国を敷く内向きなティオル王国は、多神教というかアニミズム信仰を持ち、一神教世界の侵略によって滅びます。これを日本に当てはめると……そこは想像にお任せしますけれど。

このまま行くと日本は……ってね。

そう考えるとごくごく簡単でスタンダードな構造なのですよね。

さて、かなり反則技なこの解説をどう読んでいただくかは、あなた次第。

未読の方、お待ちしてますよ〜!

年末にかけてのリリースなど予定を少々

これからのリリース予定をちょっとだけお知らせしておこうかな。

まずは、例のやつ。

『フックフックのエビネルさんとトッカトッカのカニエスさん』は12/6頃の刊行予定。
それまでに、主題歌をサウンドクラウドで公開します。します。絶対します。──きっと。
『ルルルとリリリ』は同じ頃、ここで連載開始予定。

それから、初めての詩集(こっぱずかしい?)『猫になりたい』も年内に刊行予定。
タイトル作の『猫になりたい』は、淡波ログでは5篇載せています。これは、今のところ全10篇の予定で書きためています。

そしてもう一つ、これは間に合えば、ですが、短編集『光を纏う女』を刊行予定。
あ、ご存知の人はご存知ですね。月刊群雛に初めて掲載していただいた短編、僕の初めての“完全に”大人向きの小説である『光を纏う女』を中心に、全3話の短編・掌編集になる予定です。
群雛掲載時は結構評判が良かったのですが、きっと、未読の方が多いのだろうなあと思います。この機会にぜひ、“大人向けの淡波”を味わっていただきたいなあなんて、思っているわけで。
そしてもし気に入ってくれたら、雑誌の群雛にもぜひ手を伸ばしてみて欲しいな、と。

さてさて、どこまで実現できるかな?
連載も含めてこれからあと4冊出すだなんて、ちょっと欲張りすぎだろうか──。

じゃ、また明晩20時にお会いしましょう!!

価格改定の件をアップデート

そう言えば、10月1日から有料本の価格改定を行なう予定だったのだ。でも先週は、急に星新一賞に応募しようと思いついて新作を書いたり、それが長過ぎたために相当苦労して縮めたりしていた影響で、時間があまり取れなかったのだな。おおかたの表紙は修正し終わったのだけど、どうも平日の夜に著作全てのデータをストアで更新できる気がしないのだ。(ちょっと弱気……)

出版社表記を全て差し替えるので、無料本も含めて全冊を更新する予定なのだ。そうすると、全18冊ある。このうち11冊は楽天さんにも出してるから、全部で29冊分。しかも、一部は表紙を変えてるから、その準備もあるのだった。

と、まあ、そういうことでね、今度の週末中に、価格が変わります。たぶん10月2日(金)の適当な時間までは、まだ現在の価格かもよ、というのが本日のお知らせ。まずは無料本からどんどん差し替えて行くので、もしウォッチしていれば、タイミングが分かるかも。
(いやいや、そんなとこ見てるひとがいるわけないか……)

以前の記事を読んでくださった方はご存じかと思うけど、本当に大幅改定なので、興味のある方は今のうちにダウンロードしてくださると嬉しいな。

「まじか?」と思われてしまうような価格になりますので、請うご期待!

そうそう、せっかくだから、週末に作った新表紙を1冊、お見せしちゃおうかな。
(別に見たくないですけど、って言わないでさ)

絵まで変えたのはこの本くらいですが。
絵まで変えたのはこの本くらいですが。

 

では、20時更新の『フックフックのエビネルさんとトッカトッカのカニエスさん』も宜しくお願いしますなみ〜〜〜!

表紙に理想的なサイズはない!

本日、作家のくみた柑さんからのツイートを読んで、驚いたことがあった。Amazon KDPの出版者用サイトにある「カタログ・表紙画像の作成」コーナーに、こんな記述があるというのだ。

そう、Kindle用の推奨表紙サイズが、また変わってしまってるという。
先日の記事で書いた推奨サイズは1,563×2,500ピクセルだったけど、新しい情報を見ると、これが変わっていた。縦横比は1:1.61で、1,590×2,560ピクセルが推奨サイズとなる。これまでより若干大きくなったことに加えて、わずかに縦長になった。そして、これまでよりわずかに黄金比に近づいた。

なんでなんだろう?
こんなに微妙に変えなくても、黄金比ピッタリにすればいいのに。とも思うけど、ちょっと調べてみた。
新しいKindle Paperwhiteの画面サイズは1,072×1,448ピクセル。比率で言うと、1:1.35だ。まあ、よくあるパソコンの画面比率に非常に近いもので、Kindleの表紙比率とは何の関係もないように思えた。まあ、例えば画面上の本棚に並んだ時のレイアウトとか、そのあたりも関係しているかもしれないけど、ね。

と、いうことで、またまた釈然としないのだ。でも、これは逆に言うと、比率なんて別にどうでもいいということなのだ。A版、つまり文庫本などの比率(白銀比)が好きなひとはそれで作ればいいし、パソコン画面の比率がいいと思う人はそれでいい。黄金比がきれいだと思う人はそうすればいい。それだけなのだ。

画面(=表紙)の中で、
《書籍のタイトルやイメージが魅力的に見えること》
そして、
《手に取ってみたいと思わせること》
これが一番大事なんだから。

新しい比率の三分割法デザイン用テンプレを用意したので、もし使いたい人はこちらのリポジトリーからどうぞ。ちなみに、大きさこそ違うけど、見た感じではまず前回のものとの違いは分かりませんよ。

では、この記事がいつか誰かの役に立ちますように!

新作は三つのバージョンを用意するかも?

現在執筆中のお伽話、『フックフックのエビネルさんとトッカトッカのカニエスさん』は童話版、絵本版、そして、もしかすると大人語翻訳版も作ろうかと思っています。

そもそも、童話の電子書籍って、読まれるのだろうか? という疑問点があったりするのです。
専用電子書籍端末を持っているのは大人だし、契約するのも購買するのももちろん大人ですよね。スマホで読むのも、まず大人がメインでしょう? 中学生以上なら自分のスマホを持っているかもしれませんが、やはり電子書籍ストアのアカウントを自分で持っているとは考え辛いです。
小学生のお子さんが電子書籍で童話を読むシチュエーションを考えると、家にあるタブレット端末に親が書籍データを入れておいて、それを子供さんが読む、というパターンでしょうか。

そう考えると、大人が読む童話という選択肢もありなのではないかと、考えたわけです。まあ、大人語翻訳版は一番あとになるかとは思いますが……。

今のところの予定はこんな感じで考えています。

【童話版】:淡波ログで毎日一話連載!
 いきなりすごい発表だ、自分ながら。概ね2〜3枚程度の分量で一話をまとめています。全体で45話、4万数千字程度。現時点で一応は全体を書き終えていますが(現在校正中)、少々ボリュームに変化はあるかもしれません。
 こちらで掲載後は、適宜作品ページに移していきます。ここだけだと読み辛くなりそうですし。連載終了後はAmazonなどで発売、という流れですね。

【絵本版】:連載終了の翌月あたりをターゲットに考えています
 とはいえ、まだ何もない状態。かなり遅れる可能性は相当あり、でしょうか。童話版の文章量をぐっと絞り、何とか絵本化したいと思っています。できなかったらご免なさい。。

【大人語翻訳版】:絵本版と同時進行できれば……
 ルビを全て省き、もう少し表現を大人っぽく、深めたいと思っています。大人が楽しめるようにシニカルな側面をちょいと強調したりして?
 うーん、これもまだアイデアレベルなのですが、ね。

童話版ですが、早ければ明日の夜、第一回目を掲載しようかと考えています。まだ決まっていないのが痛いですね。全ての漢字にルビを振っているので、その作業に思いのほか手間取っているのです……。

さて、もう一つ。
このプロジェクトもメディアミックス的な展開を考えています。主題歌(イメージソング)も大体頭の中では出来上がっていて、歌詞は完成済み。ちょっとお間抜けな雰囲気にして、子供たちが喜ぶものにしたいと思っています。
PVは絵本版の絵を使おうと思っていますが、果たしてそこまで作る時間を取れるのか? そこが一番問題だったりします。
物語の中に挿入歌もあるのですが、これも何らかの形で発表しようと思っています。SoundCloudと作品ページに載せる感じですかね。

一人でも毎回のお話を楽しみにしていてくれるひとがいるといいなあ……と思いつつ!

では、明晩の第一話をお楽しみに!

山田佳江著『ボタニカルアリス』を読んだ件

何を隠そう、AR関連の小説にはあまり没入することができない。仕事でARコンテンツ開発をやってるせいもあって、数年後の未来までは見えているんじゃないかと思っている。で、その先は、現在の延長の技術では越えられないハードルが存在していることを知っている。そこが、知識としてのサイファイと現実の境界だ。
一般世間の人が思っているARより先が見えていても、いや、だからこそ、だろうか……。(もちろんそれを越えていくのが技術の進歩なのだけど、)それにはあまりにも大きなブレークスルーが必要だから、サイファイの中で繰り広げられるAR的な出来事には違和感が大きくなるばかりなのだ。

だから、ARを扱った小説にはその辺りの説得力が感じられなくて、どうにも冷めてしまうことが多い。
特に、これでもかとIT知識を捲し立てているものに対しては、そこへの抵抗感がどうしても大きくなる。
ARは嘘を吐くための方便なのだから、「ファンタジーでいいっしょ」と割り切って書いてくれればいいのだが、《こんなに詳しいんだぜ》とか《説得させよう》《知識でねじ伏せよう》《科学的にこんなすげー予測してみた》みたいなものが透けて見えてしまうものは、読んでいて正直ツライ。
あんた、そこまでガチガチに理論組んどいてさ、その子供みたいなファンタジーは何よ? そもそも予測のバランス悪いし、そのズレに気付かないでえらそーな顔しないでよ。となってしまうのだ。(まあ人のことは全然言えないけど)

さて、前置きが長くなった。

山田佳江さんの『ボタニカルアリス』には、それがない。
全然ない!

かなり荒唐無稽な設定もあるけど、全体としてバランスが整っていて、楽しく納得できるファンタジック・サイファイになっているのだ。主人公が美男でないというのも好感が持てる。あ、これは関係ないか?
物語も設定も無理せず、美味しいところを上手くつまんでいる。中編という長さも丁度いい。理屈に流れず、ストーリーと人物が主役の座をきちんと守っているのだな。

人工生命、AR、デザインド・クリーチャー。そして、近未来のネット世界。植物園という舞台設定も申し分ない。
植物園舞台のサイファイというだけで、こりゃもう傑作間違いないだろ。と思って説明文も読まないでポチってしまったのは僕だ。大当たりだった。
最新ぽいキーワードで構築された世界観が、とてもセカンドライフっぽいのはご愛嬌。なんだか可愛らしささえ行間に漂っているんだもの。

とても楽しい三日間を過ごさせていただきました(読むの遅い!)。
あの大御所の例の作品より読後感は良かったなあ。何しろ、無理のあるところも無理のないようにホンワカ読める文体に五つ星、かな。

みなさん、コレはお薦めですぞ!

この表紙、さっきリンクを貼っていて気がついたんだけど、ARのイメージになってるんだ。バラの花に重畳表示された人物(上下逆?)。これ、山田さんだったりして?
あ、ちなみに、重畳ってのはAR用語なのかな? 同じ位置に重ねて表示するってことですね。

ではまた!

実を言うと、最近ほとんど書いていない_2

さて、昨日の続き。
ほとんど書いていないながらも書いているお話は──?

これまで書いてきたお話は、書くごとに結構振り幅が大きかったりする。
中年女性が主人公で身の回りのことしか出てこない《暖かい家族小説》の次は、近未来のジャーナリストが主役で《世界を舞台にしたSF》。その次が《実話仕立ての古代史ファンタジー》かと思ったら、次は《遠い未来のサバイバルSF》だったり。で、前作の『光を纏う女』が初の《ちょっとエロチックな大人向けサスペンス・ホラー小説》だもんだから、その対岸にある次作はというと……?

はい。
お分かりですね。
で、今書いてるのはこんなお伽話なわけ。

タイトルは、
『フックフックのエビネルさんとトッカトッカのカニエスさん』
ね、タイトルからして子供の絵本ぽい。

せっかくだから、書き出しをちょっとだけ紹介しちゃおうかな。
こんな感じ。

 フックフックの国に住んでいるエビネルさんはやせっちょで、お酒が大好き。トッカトッカの国に住んでいるカニエスさんは太っちょだけど、お酒はぜんぜん飲みません。いいえ、飲めないんです。だからなのか、やせっちょエビネルのお腹は出ていて、太っちょカニエスのお腹はぜーんぜん出ていないのです。

エビネルさんは洋服作り(テイラー)の見習いで、まいにちまいにち美しい生地にアイロンをかけて暮らしていました。お金持ちのご婦人がたと、店のご主人はいつも楽しそうにおしゃれの話をしていたけれど、お給金の少ないエビネルさんは、余った生地を上手に組み合わせて使い、自分でぬった服ばかりを着ていたのです。エビネルさんはいつもいつも、楽しそうに話すご婦人がたとご主人を見て、思っていたのです。僕もいつか自分のお店を持って、ご主人と呼ばれるようになるんだ、って。

そう、これは完全に子供向け(の顔をした)お伽話。一度書いてみたかったんだ、こういう懐かしい香りの漂うお伽話を。
例えば、『香水』のジュースキントが書いた『ゾマーさんのこと』や、フィリップ・K・ディックの『ニックとグリマング』のような、ね。

とは言え、気まぐれな僕のことだから、このまま進むかどうかも分からないのだけど。もちろん、淡波らしい毒はそこここに潜んでしまうと思うし──。

まあ、楽しみに待ってくれる人が、一人でもいてくれたらいいなって思いながら。

では!

実を言うと、最近ほとんど書いていない

最後に作品と言えるものを仕上げたのは群雛8月号の締め切りの時だったから、半月くらい前。その前はその『光を纏う女』の下敷きになった掌編で、2ヶ月くらい前? で、その前と言ったら『未来からの伝言』だから、もう4ヶ月以上も前だ。おっそろしい!

で、僕はスランプなのか、書けないのか、と自問するとね、全然そんなこともないんだけど……。
ただ、牛野小雪さんのスランプ分析によると、最初は《否認》だって言うし、自分の答えもあてにはならないかもしれない。
僕もこの記事を書こうと思っていた日に、ちょうどいいタイミングで牛野さんがスランプの記事を書いてくれたわけだけど、針とらさんもそんなこと呟いていたし、セルフ作家界ではスランプがブームなのかな、それを分析する自分自身を晒すことも含めてね……。
(「スランプと執筆は表裏一体なのさッ」という声も聞こえる)

僕はスランプじゃないよって、言い切っちゃおうかな。だってさ、僕はまだ、スランプに陥るほど小説を書いちゃいないんだ。書き始めてまだせいぜい5年くらいだし、ネタ切れになるほどいろいろ書いてないし、やってみたいことや書いてみたいことが山ほどある。書くことで、ちょっとずつ山か坂を登ってるような感じかな? これからの自分にはどんな小説が書けるのか、まだそれもぜーんぜん見えていない。

僕が書いていない原因は単に、小説以外にやってることが多過ぎて、小説を書く時間が取れないことなのだ。それも間抜けだけど、それが小説を売るためにやってることとなれば、もっと間抜けなものだ。まあ、ようやっと小説以外のことで時間を取られるものがひととおり片づいた気もするので、そろそろかな、と思っていた矢先……。

本業が……!
これを言うと言い訳くさくなっちゃって超カッコ悪いんだけど、今はなんとか睡眠時間を確保して、身体を保たせるだけでせいいっぱいなんだなぁ。情けないことに。
あとひと月以上は本業超繁忙が続くので、カタツムリのごとくゆっくり書いている今のお話が少しでも進んだら、淡波えらいじゃん、やってんじゃん、って思ってくれないかな……と思う今日の淡波。

やれやれ、なんちゅう記事だろう。

その、執筆中作品については……

続く!