『孤独の王』を読んでくださったかたは、《はじめに》を読み終えて、いきなり「おやっ?」と思ったかもしれない。
それはどうして?
今夜の記事は未読の方のための記事なんだから、「読み終えて」とかじゃなくて、ちょっと詳しく書いておかなきゃ!
《はじめに》を書いた日付、つまり『孤独の王』を上梓したのは、2,029年佳日。つまり、この本が書かれたのは未来なのだ。そして、その文章を書いたのは古代ティオル王国の研究者である淡波亮作。今は小説家だけれど、この謎の古代王国への興味を切っ掛けとして、とうとう古代史の研究者になってしまったのだ。これが、『孤独の王』が実在の古代王国を舞台にした《史実》であることを裏付ける仕掛けだ。(これだけでもう、中二病と言われそうですがw)
今の時代、実はまだその発見が表ざたにはなっていないけど、本当に古代ティオル王国というのはあったのだ。だけど現時点では、淡波亮作本人すら、その事実を知りはしない。
その国がどこにあったかは分からないし、存在したのがいつの時代だったのかも定かではない。恐らく紀元前であることは間違いないのだけれど、今までに発掘された数少ない遺物からは、はっきりしたことは何も判断できなかったのだ。のちに『孤独の王』と名付けられたその古代史物語は、本来は石板に刻まれていたらしい。でも、それを発掘した最初の考古学者は、なぜだかそれを再び埋め戻してしまい、その所在は誰にも分からないままになってしまった。二百年ほど前に無名のままで世を去ったその考古学者が誰だったのか、何人だったのかも、もう誰にも分からない。ただ、彼(もしくは彼女)が石板から書き写したと伝えられる羊皮紙だけが、古代ティオル王国の存在を今に伝えているのだ。
日本の作家である淡波亮作は、古代ティオル語を学んで懸命に翻訳し、ようやく2,029年、それを世に出すことになった。それが、物語『孤独の王』になったわけ。ということは、読者はまだ書かれていない物語を読んでいることにもなり、僕もまだそれを書いていないわけで……。ぐるぐる。だから、この物語が史実ではないことを証明できる人は、今のところ誰もいないのだ。うん。
いつの間にかアトランティスやムーのような伝説となっていることを目して、いや、それ以上に現実的な歴史として語られるときが訪れることを目して、未来の誰かが巧妙に仕組み、現代にポンと投げ込んだ本当の歴史。それが『孤独の王』なのだ。(という設定。ふー。ややこしい。自分で書いていてわけが分からなくなってきた)
まあ、そんなことで、お盆休みのお供にどうでしょう?
一見、スタンダードなRPG風の設定で大冒険譚の顔をした児童文学ファンタジー作品だけど、何しろ実話だから、そんなに都合のいいお話にはなりっこない。魔法使いはろくな魔法を使えないし、主人公と目される少年はどんどん捩れて行くし、お姫さまと英雄の恋なんか……。だからこそ、少年少女に読んでもらいたいのだけれどね。
ダークでシニカルで救いのない物語だから、この猛暑を涼しく過ごせること請け合い!
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