Category Archives: 映像

「あれ」が完成しました!

はい、こんばんわ。
またしても一ヶ月以上経過してしまいました。

この間、こちらに書きたいことがいくつかあったのですが、忙しさにかまけて放置してしまいました。
またいずれちゃんと書くようにしましょうか。

この約一ヶ月に何をしていたかと言うと、まあ、Twitterのフォロワーさんならご存知ですね。
『イン・ザ・フォグ』のPVです。
当初はあまり凝ったことをする予定ではなかったんですが、それなりにいつもどおりな感じに仕上がりました。

PVの完成に合わせてセールと広告を考えていたんですが、今日はそこまで進められない元気残量です。

とはいえせっかく出来上がったので、こちらに掲載しますね!
ぜひ、音声を絞らずに再生して下さいませ。
(フル画面で!)

今回、レンダリング時間の短縮のために二つの試みをしました。

・一つは、eeveeの採用です。
リアルタイムレンダリングでビューポートに表示されたままを書き出すので、レンダリング時間が掛からないだろうと思ったからなのですが……。
結果としてまあまあ高速化はできましたが、自分のMacBook Pro(2013)がもう時代遅れになってなっている事実を痛感してしまうことに。
メドウのシーンと本のシーンの2箇所でeeveeレンダリングにしましたが、メドウでは1フレームあたり約3分、本のシーンでは1フレームあたり約30秒です。これでもCyclesで行なうことを考えれば数分の一に短縮できているので、試みは成功とも言えますが。

・二つめは、A.I.Gigapixelの採用です。
A.I.Gigapixelとは、小さな画像をA.I.の力で大きく引き伸ばすことができるソフトウエアです。
公称では600%まで拡大してもきれいな画像になるという、たいへんすぐれもの。メドウのシーンは上述のように3分かかっていますが、実はこれ、使用したい解像度の半分サイズで行ないました。
960×540ピクセルなので、面積は四分の一です。レンダリング時間もフルHDで計算する場合の約四分の一。つまり、フルHDでレンダリングすると12分@フレーム。メドウのシーンは全部で60フレームなので、実に12時間計算しっ放しにしなければなりません。まあこのくらい仕事だったら普通ですが、一般家庭で12時間計算しっ放しは痛いです。
それを今回は半分サイズで済ませましたので、3時間で済みました。
細かい部分をみると若干のちらつきがありますが、実用上は問題ないレベルだったかと思います。

今後も、ちょくちょく使っていこうと思います。
(デモ期間内に制作が終わったのに、きっちり正式ライセンスを購入したので!)


そう、それからもう一つ。

今回のテーマ曲に選んだのは、2002年に別名義で発表した『Silver Moon』という曲です。
今年前半にアルバムを必ず再発売するつもりなのですが。
(他の曲は映像を作りながらチャチャッと作っただけで、曲名もありません)


『イン・ザ・フォグ』、読んだ方々からは、なかなか評判良いんですよ。
でも、ちっとも売れません。
これを機に、もっと読んで頂けると良いのですが。

では、何卒よろしくお願い申し上げます!

実はすごいApple Motion─2

前回は半端なところで終わってしまったこの記事ですが、予定通り「うまくいったぜ」報告ですよ!

さて、Q&Aスタイルで始めましょう。

Q1:
Motionを購入してから年月が経過してしまい、AppStoreで「アップデート」ボタンが出なくなってしまった。
さあ、どうする?

A1:
1.まずはMacからアプリを削除、ゴミ箱も空にします。
2.AppStoreに行きます。
3.「購入済み」ページに行くと、「インストール」ボタンがイキになっています。
4.最新版をDL、インストール出来ます!

Q2:
3Dテキストの機能って使えるの?

A2:
ばっちり使えます!

では、ちょっとオルタニアのPVのキャプチャを見てみましょう。

これが、現状です。
これが、現状です。

アップデート後のMotionで……

いきなりこれです! すごいです(計算に数十秒かかりますが)。
いきなりこれです! すごいです(計算に数十秒かかりますが)。

こうするのにやった操作はこれだけ。

・3D化したいテキストボックスを選択
・インスペクタのアピアランスで、3Dテキストにチェックを入れる

ここです。調整できるパラメーターがいっぱいあります!
ここです。調整できるパラメーターがいっぱいあります!

文字数が膨大で処理時間が相当掛かってしまうので、オルタニアという文字だけでいろいろと試してみます。

これが2Dの基本的な文字。

cap3

ウエイトを2倍に太くし、前面エッジを「ねじ山」にしました。文字数が少なければ、瞬時に処理されます。

 

「ライティング」で環境光を暗くすると、より宇宙っぽくなります。
「ライティング」で環境光を暗くすると、より宇宙っぽくなります。

 

次に、質感の設定を見てみます。まるで3DCGソフトみたいです。

マテリアルを変えられます。プリセットがいっぱい!
マテリアルを変えられます。プリセットがいっぱい!

Grunge Stainsにしてみました。

模様もちゃんと立体になっているようです。
模様もちゃんと立体になっているようです。
質感をカッパーにして
質感をカッパーにして断面も穴あきにしてみました。前面に丸みをつけたので、光の反射もきれいです。

 

どうです?

これ、もう完全に3DCGですよね!
疑似的な3D表現ではなく、ちゃんとパースに応じて穴の形も反射も変化しています。

いやあ、参りました。こんな感じに遠ざかっていくだけではなく、もう自由自在にカメラをぐるんぐるんさせて3D表現をすることだって出来るのです。

もっともっと使い込んでいきたいなあと思う、今日この頃です。

じゃ、また機会があったらMotionの機能など、紹介しますね!
(パーティクルの機能とか、そりゃあもう凄いんですから!)

この記事が、いつか誰かの役に立ちますように!

実はすごいApple Motion─1

これまで、CGをベースにした映像のほとんどはBlender完結かそれに近い形で制作していました。
Blenderの動画編集機能を覚える前は、動画編集にJavieを使っていました。ただJavieは残念ながら開発が止まっているようですし、動作速度は遅めです。
《CG制作⇒コンポジット(合成)⇒編集》を一連の操作で出来るBlenderの利便性も大きかったので、Blenderを中心に据えるワークフローにシフトしていました。

でも!

AppleのMotionも結構前に導入はしていたのですよね。ただちょっと使い方に戸惑っていたのと、情報も多くはなかったため、使い方の慣れた方へと流れていました。

それでもまあ、WEBでいろいろと情報を調べる限り、Motionはすごいに違いないという感覚はずっと持っていました。で、簡単なものから徐々に使うようになりましたが、いわゆるAfter Effectsのようにバリバリのエフェクトをかますような使い方はハードルが高いと思っていたのです。

新SF雑誌『現実以外 -オルタニア-』のプロモーションビデオを作成するにあたり、最初は、最近のいつもどおりのやり方でした。

《BlenderでCGを作成し、連番ファイルを書き出してMotionに読み込み、編集とエフェクトを行なう》

これで作ったのが、最初のティーザー・トレーラー2本です(1本は単なる色違いバージョン)。

これですね。

簡単に工程を整理します。

【Blender工程】
宇宙をBlenderで作成
・フライングロゴをBlenderで作成
・宇宙とロゴをそれぞれバラでレンダリング書き出し
・宇宙の画像をBlenderに読み込んで星のエフェクトを作成
・星にエフェクトをかけた画像をBlenderから書き出し

【Motion工程】
・ロゴと宇宙をそれぞれ読み込み
・後半の文字をプラスしてエフェクト
・ロゴにモーション・ブラー(もどき)をかけ、その他雰囲気エフェクトを追加
・動画に書き出し

これはこれで普通のやり方なんですが、プロモーションビデオ第3弾を作成した時、《時間がなかった》のと《疲れていたので出来るだけ簡単に作りたかった》ので、もっとMotionの比率を上げてみることにしました。

出来上がりがこれです。

第1弾と同じような感じですが、格段に省力化されています。工程を見てみましょう。

【Blender工程】
・高解像度で宇宙の画像を1枚だけ作成(アニメーションなし)

【Motion工程】
・宇宙の画像を読み込み、ちょうど画面一杯になるように縮小して配置
・宇宙が徐々に拡大し、空間を進んでいくように見えるようアニメーション
・文字を入力し、3D空間を飛ぶようにカメラを設定
・文字が飛ぶようにアニメーションを設定し、雰囲気エフェクトを追加
・動画に書き出し

合計で2行分の手間が減っています(笑。
(実は、宇宙もMotionだけで簡単に作れるんですよね。僕はまあ、Blenderで作るのに慣れてるし、思い通りに作れるので……)

まあ、何しろ簡単、短時間で出来ます。
無料ソフトにこだわり過ぎる必要はないし、一つのソフトで何でも出来ることにもこだわる必要は全然ないですよね。適材適所。

ポイントは3Dですよね。
これまでは3Dといえば3Dソフト必須。と思っていましたが、Motionで3Dに出来ちゃう。
カメラ設定を3Dにした時、画面上に3Dを示すギズモ(3D空間を3本の矢印で示すアイコン)が出たの見て、マジで感動しました。
うへー、こりゃ3Dだわ!って。
(まあ、普通のことなんですがね……詳しいひとにとっては)

今回のフライングロゴは平面的なものが飛んでいますが、実はMotionで文字を立体化することも出来るんですよね。多分。
海外のチュートリアルと見ると出来るようになっているんですけど、どうもやり方が分からなかったので、いろいろと調べてみました。どうやら、英語版にある3Dテキストの機能が、僕のマックに入っているMotionにはない!
よくよく見ると、僕のはバージョンが一つ古く、5.1。3Dテキストを扱えるのはどうやら5.2以降のようです。
早速App Storeに見に行ったのですが、どうもアップデートが出来ない。
ちょっと、アップデートをしないで方っておき過ぎたのかもしれません。最初に購入したのは2014年で、ずっとハードディスクのこやしになっていましたからねえ……。

調べました。
どうも、App Storeでアップデート出来なくなることが稀にあるみたいです。その場合の対処方法は、アプリを完全に削除して、再度App Storeからインストールし直すこと。ですって!
ええ!
Motionって、2.3GBもあるんですよ、それを完全削除か……かなり、勇気が要ります。
失敗したら、動画のプロジェクトが何も開けなくなる。
とはいえ、先週タイムマシンでバックアップを取ったので、最悪はそこから戻るかと決め、アプリをどーんとゴミ箱に。そして、シャシャッと空に──。
どきどきしますね。消しちゃいましたよ、完全に。
ダウンロードがタイムアウトにならないといいんですが、重いデータをWifiでダウンロードしていると、よく途中で接続が突然切れるんですよね。恐いなあ……。
現在320MBです。

そして、今640MB。

お、1GB超えた!

まあ、大丈夫そうな気がしてきましたね。

ということで、何とも半端な記事になってしまいましたが、今夜はこんなところで。

アップデートに成功したら、今度は3Dテキスト関連の記事を書きますねっ!

じゃ、また明晩!

(続きは10月21日掲載予定です)

新雑誌に参加してますっ!

もう知ってる人は知っている、新SF雑誌が創刊されます。
その名も『現実以外 -オルタニア-』

創刊が決まった頃に編集部さんからお誘いを受けて、二つ返事で参加を決めました。面白そうですもんね、メンバーが強力だし。
でも、実は参加している僕自身も、この「現実以外」ってのと「オルタニア」の関係がよく判っていなかったりします。

第2号が出る時に「現実以外」って付くかどうかで、合わせて一つのタイトルなのか、創刊号のサブタイトルが「現実以外」なのかが判るというふうに思ってます。
まあ、編集長に聞けばいいんですが(笑

で、最近は絡むところ絡むところ、つい動画を作ったりしてるわけで、今回もやっちゃいました。しかも2つ。
もちろん、CGの制作はBlenderです。
バックの宇宙については先日の記事に《超簡単な作り方》を書いた通りですね!

まずはこれ、ティーザー広告として、ちら見せ用で作りました。
ロゴが英語のバージョンです。

それから、情報解禁後にもう少し内容をプラスしたのがこちら。
ロゴが日本語になっています。

まあ、内容はあんまり変わらないんですけど。
最初のトレーラーで興味を持ってくれた方は、次のを見て「おぉっ」と思ってくれるかなあ、と。
(《豪華執筆陣》っていうのは、僕以外の皆さんのことですよ、あくまでも。悪魔デモ……)

ちなみに、このかっちょいいロゴは、山田佳江さんのデザインです。
もちろん、雑誌にも執筆なさってます。
山田さんといえばインディーズ界の人気作家さんですが、本職は映像&デザイン屋さん。《いーブックデザイン》という名前で電子書籍用の各種素材やデザインをいっぱいフリー公開しています。さすが、本職です。
こちらも注目ですね〜。

せっかくですからここで参加メンバーのことをちょっと書いておきましょ。

編集長はあの、隙間社さんです。看板作家のおひとりである伊藤なむあひさんの短編も掲載されてますよ!
それから、『オルガニゼーション』シリーズや『ストラタジェム;ニードレスリーフ』の波野發作さん
『プリンセス・プラスチック』で有名なプロ作家の米田淳一さんも参加しています。
そしてそして、創刊号の特別ゲストとして、あの大滝瓶太氏!
(これはすごい。波野さんが大滝氏を招へいした編集長を褒めてたりしてましたw)

そしてもう一人、謎の人物が参加しているそうです。
こちらはまだシークレット状態で、僕も知らないんですよね……。
どうやら、こちらもかなりの有名人らしいです。楽しみですねえ!

創刊は「10月くらい」とのこと。まだ曖昧のようです。
僕自身の原稿はもう上げてるんですが、校正がまだ途中、という感じです。

未完成の掲載作品をちょっとだけ読ませていただきましたが、面白いですよ〜。
粒ぞろいです、まじで!

と、いうことで、本日はこれまで!


Blender:NPRのちょっとしたヒントに

final

ども、淡波です。

Blenderの習熟度で言えばまだまだ素人の域を出ないのですが、むりやり(w)仕事でも使っている関係上、結構いろいろ試してみたりはしています。

先週のブログ記事『今週の一枚:ん? なんか見たことあるような……』で、あるアニメーションを作っているということを書きました。

ある方から引き継いだBlenderのデータにアニメーションをつけていて、レンダリング時間を短縮するために様々なチューニングを施しているのですが、もし、Blenderをお使いの方が読んでいたら、きっと興味を持っていただけたのだろうなあ……と思い、今回の記事を書くことにしました。

さて、NPRってなんでしょ?
から、ですね。

CGをやっていると、「写真みたいにリアルにする」ことが一つの目的だったりします。NPRというのはその正反対で、ノン・フォトリアリスティック・レンダリング、つまり、「写真みたいじゃない画像化」ということです。

この『とろろ姫の歌』のPVもそうですね。こちらは平面のアニメ調ですが。
 

さて、今回最初にいただいたデータも、どちらかというとNPR系のマテリアル設定になっていました。レンダリング時間を短くするため、反射や透過などの処理は一切省き、ディフューズカラー(=拡散反射色)のみの設定です。こういった設定だと、「写真みたいじゃない」というか、人形劇っぽい感じになります。光沢のない塗料で人形を塗った感じで、ある意味リアルになるんですよね。

さて、その状態でレンダリングした画像がこれ。
レンダリング時間は約1分50秒です(core i7 dual Macbook pro)。
ノイズをある程度減らさなければならないので、サンプル数は100です。これでも、ちょっと絵がノイジーですよね。

先週より一人増えてますね。進行してる、という主張だったりして。

そして、今回チューニング済みのレンダリング結果がこれ。
レンダリング時間は約5秒で、実に22倍に高速化しています。サンプル数はたったの4です。
Cyclesレンダラーを使用していますが、これならInternalレンダラーと全く遜色のない計算時間ですね。むしろ速いくらい?

4s96

 

普通なら、ノイズだらけで見られたものではありませんが、こちらの画像だと、むしろオリジナル状態のレンダリングよりノイズが少ないですよね。

もちろん、オリジナルの自然な光の感じはまったくありませんし、雰囲気もかなり壊れています。でも、アニメーションを作る以上、レンダリングにかかる時間は最も大事な要素のひとつです。4,000フレームを100秒レンダリングすると、実に111時間もかかります。個人で、しかも「お手伝いで」作るCGのレベルではありません……!

雰囲気については手法を変えることで逆にプラスできる部分もあります。地面や山、背中のタンクなどは、面白い感じになっていると思います。しかも、絵はこれで完成ではありません。こちらをもとにしてコンポジットを行なった画像が冒頭にあげたもの。コンポジットのレンダリングにかかる時間は約1秒です。もちろん、オリジナル版を使う場合もそのまま完成ではなく何らかのコンポジットが必要なので、この時間は同程度ということになるでしょう。

好みはありますが、これはオリジナルの作者からもオッケーを貰いましたし、NPRのレンダリングとしては面白いものになったのではないでしょうか。

さて、前置きが長くなりましたが、本題です。

【超スピーディーにレンダリングが終わるNPRなんだけどちょっとリアルっぽいシェーダー】

タイトルも長いですね……。

ではまず、手前の人物の肌シェーダーを見てみましょう。

画像は幅2Kを超えていますが、プレビューレンダリングはなんと0.81秒です(左側の表示参照)。

この設定のミソは、基本となるシェーダーにすべてエミッション(発光)シェーダーを使っていることです。発光させれば光を受けませんので、GI計算は不要です。影も不要です。

だから、レンダリングの設定も、Light Pathsの値にすべてゼロを入れています。普通では考えられませんよね。

render
これぞ究極のレンダリング設定(?)

 

では、シェーダーの内容を簡単に解説しましょう。すべてエミッターなのに、ちゃんと立体感がありますよね。ノード・ツリーの左端に注目すると、「Geometry」ノードがあり、それが「Seperate RGB」に接続されています。
そう、先日恵比寿で開かれたBlendxJPに出ていた方はご存知の、「ノーマル」を使って上下の色を塗りわけるテクニックを使っています。
形状から面の向きの情報を拾い、その下向きの面にはちょっと暗めの肌色シェーダーを、それ以外には明るめの肌色シェーダーを当てています。
この二つが、Mix Shaderで混ぜられています。そして、何となく輪郭線らしきものを出すために、その先にはこげ茶色のエミッションシェーダーが合成され、ています。FacにFresnel(フレネル値)がインプットされているので、Fresnel値で制限された部分にだけこげ茶色が現われます。IOR(屈折率)が1.0未満だと、色の境目にグラデーションがつかず、塗り分けたようになります。0.95〜0.99くらいの範囲にあると、輪郭線のような効果が出ます。曲率と太さが比例するので、小さなオブジェクト(指など)ではほとんど線が見えないのが弱点で、逆に大きな面が同じ方向を向いていると、ベタ塗りになってしまう欠点もあります。

ゲームで良く使われる裏ポリテクニックを使った方が線は均等できれいかとは思いますが、この方法ならデータ量が倍になるのを避けられます。Freestyleの線は美しいですが、レンダリング時間が増えてしまいますし(「トロロ姫」は超ローポリなのでFreestyleを使っています)。

ちょっとFresnel値を変えたものを見比べてみましょう。

フレネル値=0.90
フレネル値=0.90
フレネル値=0.95
フレネル値=0.95
フレネル値=0.99
フレネル値=0.99

使いようによって、面白い効果を出せそうですよね。

今回は肌を例に取りましたが、どのシェーダーもほぼ同じ作りです。
もう一つ、ちょっと違うものを見てみましょう。地面のシェーダーです。水っぽい球を置いてみました。

このシーンの中で最も重いシェーダーです。
このシーンの中で最も重いシェーダーです。

まず、基本色の茶色です。左上ですね。
2色のエミッション・シェーダーを使ってFresnelで混ぜています。カメラから遠ざかる(角度が付くと)と明るい色になるようにして、距離感を出しています。
散在する岩と水球を見ると、地面への反射があります。反射の他にも地面への影のようなものがあります。不思議ですね。普通に考えると、発光している地面に影が落ちるはずはありません。

そこで活躍するのが、図中オレンジ色の枠で示したアンビエント・オクルージョン・シェーダーです。環境から遮へいされている部分に疑似的な影を落とすものですね。これは少々レンダリング時間を増大させますが、あるとないのではオブジェクトの接地感がまるで違いますから、ここは我慢です。
このアンビエント・オクルージョン・シェーダーも、単色だと地面の色をのっぺりさせてしまうので、2色に塗り分けて、地面の基本色と同じFresnelノードをつなぎます。

その先に繋がっているのが、反射を出すGlossyシェーダーです。あまりにもツルツルにすると反射がわざとらしくなりますし、反射をぼけさせ過ぎると、きれいに見せるためのレンダリング時間が増大します。映り方が自然になるようにRoughnessの値を調整し、これも遠ざかると自然に消えるようFresnel値で制御します。

さて、いかがだったでしょうか?

ちょっとまとめてみます。

・BlenderのNPRレンダリングは、実はCyclesでも素早くレンダリングできる
・基本シェーダーを全てEmissionにすることでノイズレスになる
・GI不要、レンダリング設定の値は全てゼロでOK
・立体感は形状のノーマルをうまく利用して出せる
・地面への影はアンビエント・オクルージョンで出す

■注意点です。
 全てが同値で発光しているので互いに影響を与えませんが、一つでも発光しないシェーダーがあると、それが光を受けてしまい、突然そこだけおかしな見栄えになりますし、ノイズが増えるので結果としてレンダリング時間が増大します。

僕の経験上、このやり方を使えばInternalレンダラーよりも速くレンダリング計算を行なわせることが出来ると思います。
シェーディング画面のキャプチャ動画とは異なり、DOFを調整できる(遠くをぼかせる)、反射を入れられる(しかもぼかせる)、という表現上の利点があります。

もちろん、OpenGLレンダリングでその中間の表現を目指す方法もあるのでしょうが、そこはまだ僕には未知の領域で(笑

また、進行状況を報告しますね。

では、今回はこれまで!

今週の一枚─やっぱこれでしょ……

tororo

KENPのキャプチャだと思ったあなた、ハズレです。
今週一番のアワナミ的トピックは、やっぱりこちら。
『トロロ姫の歌』で決まりでしょう!

白井市の非公式ゆるキャラ《ジネンジャー》と、作家淡波亮作のコラボ企画第2弾。白井地底王国から姿を消してしまったトロロ姫の切ないテーマ曲です。

まあ、世間の人気動画と比べると(比べるな)、再生数は1億分の1くらいですが。僕のモノの中では最速での100再生突破のような気がします。
高評価が5つついてるし!

今回の動画のテーマは、ずばり《絵になる》PV。
え、なってないって?
それは言いっこなしですよ、ダンナ──。

・児童文学っぽい雰囲気で
・絵本になりそうなビジュアル
・3Dを使うけど、あくまでもベタ塗りのアニメっぽく
・線画の味と温かみを感じさせる
・どのフレームを切り出してもそれなりに絵になるもの
(もちろん、トランジション中は除いて、ね)

そしてもう一つ大事なのが、短時間で計算できる設定。これです。
この動画は1分40秒ほどの長さなんですが、通常、このくらいのものを作ろうと思ったら、数日間レンダリングしっ放しになってしまいます。
この暑さでそれは辛いし、レンダリング中は他の作業もあまりできなくなってしまうので……。それから、締切り。
まあ、こういったものを自作する場合、いつもは締切りなんてあまり設けないのですが、今回はジネンジャーさんに言ってしまったんですよね、
「遅くともお盆までには仕上げますー!」って。

歌のレコーディングは日曜日に無事終わり、映像の編集も半ばまで終わった状態でしたが、まだシーンが足りず、レンダリングの必要がありました。
いつもならこれで諦めるんですが、今回は最短2秒弱@1フレームのレンダリング設定(しかも初のフルHDサイズ)なので、手作業さえ追いつけば何とか終わりそうだ、と思って頑張っちゃいました。

Blenderで、Cyclesでレンダリングしてると、何しろきれいな絵を出すためには計算時間が膨大です。
ここで、今回のようなアニメ風限定のレンダリング時間削減Tipsを書いておきますね。

・マテリアルはすべてEmitterにします。
自分で光を出すことで、陰影のない絵になります。GIが不要なので、バウンスは0回設定でオッケー。ベタ塗りなので、リフレクションも透過もすべて0設定で。

・Freestyleは手書き風の味があるライン・スタイルにします。
サンプル数を極限まで減らしても、アンチエイリアス処理のかからないがびがびな線が逆に味になるのです。
⇒これ、超裏技でしょ?

今回はカリグラフィーのラインを使い、3D形状に沿うエッジの表情が、さらにいい雰囲気を出しています。

さすがにジネンジャーが登場する後半はポリゴン数も多いので、15秒〜最大2分くらい@フレームというものもありますが、お城やトロロ姫のシーンは1秒台でした。

このシーンでもフルHDで15秒くらい!
このシーンでもフルHDで15秒くらい!
このシーンは1分間に80フレーム計算出来ているので、1秒未満@フレームでした!
このシーンは1分間に80フレーム計算出来ているので、なんと1秒未満@フレームでした! アップで見ると、まるでインクが滲んだように線がざらついています。

 

そうそう、いちばん重かったのが、花畑のフライスルーです。どんどん花が開いていくシーン。レンダリングの時間自体は大したものではないんですが、事前計算とFreestyleの準備計算がかなり重かったですね。

このシーンで2分@フレーム。35フレームのシーンに2時間超です。
このシーンで2分@フレーム。35フレームのシーンに1時間超です。茎はパーティクル(Hair)でばらまき、花の部分は開くタイミングの調整があるため、一輪ずつ手で載せています。

それから、今回特筆すべきは、コンポジットを行なわなかった点。
通常、レンダリングを連番静止画で書き出して、それをコンポジターに読み込み、各種合成やカラコレを行ないます。
今回は、全フレーム、レンダリングしっ放し(仕事ならぜったい許されない、あり得ないって──笑)。
あとは編集ソフトで組み上げるだけという省エネながら、最初のカラー設計通りに出来上がりました。これも、Emitterマテリアルのみを使った2D調表現にしたから、最初から最後までイメージにずれが生じなかったんですよね。
今後、このやり方はかなり可能性があるなあと、結果にホクホクしている今日この頃です。

あ、歌はね……ちょっと濃すぎましたかね?
前回のテーマ曲とはがらりと変えて優しい感じに歌ったつもりだったのですが……。

最後に、Youtubeの動画を埋込んでおきますね。まだご覧になっていない方は、是非!

じゃ、また明晩!

観てきた:映画『フィレンツェ,メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館』

ああ、またハズレを引いてしまったよ。楽しみにしてたのになあ。残念。ここまでひどいとは……。

まず3Dが意味不明すぎる。彫刻、建築はいい。ちゃんと効果が出てる。だからどうだという程の効果は感じないけど、まあ、立体だから、多少はその場で見るような迫力があった。特に建築は。

彫刻は微妙。カメラワークが悪くて、まだるっこしい。じっくり見せたいからじっくりカメラを動かしてるんだけど、見たいところは人それぞれだからね。うーむ、もっと工夫のしようがあるでしょ、と思わずにいられない。
(例えば、2画面に分割して、片側は全体像を常に見せ、もう片側で特徴のあるところのズームアップを順に見せるとか?)

圧倒的にダメなのが絵画作品。
全く意味のない3D化。
おいおい、そこをわざわざ立体にしてどうするの?
元の作品と全然違うじゃん。のオンパレード。

当然、《絵のすべての部分を完全に立体化してからそれに絵画をマッピングして、世界を再構築するような手間》は取られていない
何となく程度のレベルでZデプス(=奥行き情報)ぽいグレースケール画像を起こして、疑似的に立体にしている。曖昧なところや前後の逆転、切り抜くべきところで曖昧に誤魔化されていたりして、もう、手抜きの極致。

デッサン、ステンドグラス、果ては作者の肖像画まで擬似立体で見せられた日にゃあ、もう冗談としか思えない。
本当にまじめに作ってんのか?
単に「3Dにすると客が喜ぶだろう」くらいに思ってやってないか?

そこに追い討ちをかけるのが、無駄にうるさい音楽。全体的にはクラシカルな構成なんだけど、盛り上げるためなのか低音部には変なシンベが加えられて、もう安っぽいミステリーのよう。何しろうるさい。
美術館を再現するような映像なら、音楽なんかいらないんじゃないか?

さらにさらに、ダメダメポイントはまだまだ続く。

メディチ家の当主が案内役をしてるんだけど、無駄な芝居や裏話が多く、目を塞ぎたくなった。
(実際、3Dで見ていると目が疲れるので、この人のパートは半分くらい目をつむっていた。吹き替えだから、内容は分かるし)
おいおい、もっと作品を観賞させてくれよ〜。

それから、ウフィツィ美術館の元館長による解説がもう、押しつけがましすぎてあんまりだ。
いわく、美術を鑑賞するだけじゃだめだ。ちゃんと学んで、そこに込められた深い意味を理解しなければ、観たことにならないとかなんとか。
大きなお世話でしょ!

美術作品を生み出した人が、鑑賞者にそんなことを望んでいるとでも言うのかい?
作家は美しいものを生み出したくて作品を生み出しているんじゃないのか?
これは○○の象徴で、裏の意味はこう。それを知ることが一番大事で、それを知らなければ作品を見たことにならないなんてこと、作家が僕らに望んでいたとでも?
裏の意味って、「そういう理解もあるよね」、「そういう楽しみ方もあるよね」っていう程度なんじゃないのかな。
そもそも、後世の研究者なりが勝手に言ってることに過ぎないんだから……。

ああ……無駄無駄無駄。

美しい作品の数々を、その場にいるように鑑賞させてくれる映画だと期待して観に行った自分が馬鹿だった。
反省しますよ。
内容を事前に調べていたら、絶対観に行ってない。

それからね、駄目押しで編集がまずい。
意味のない(いや、深い意味を込めてるんでしょ、きっと)ロングショットの挟み込み。頻繁に行われるフェードアウトでは色相が破綻してるし、これじゃ素人じゃん……。
(あ、もちろん、これはお金を払った観客としての感想。別に、自分ならもっと上手いとか、そんなことは言ってないので念のため)

余計な部分なしで作品をきっちり丁寧に見せてくれる映画だったらどんなに良かったか……作品数もきっと倍は入れ込めただろうな。こんな無駄な演出を観客が喜ぶと思ってやってるんなら、客を馬鹿にしているにも程がある。

エンドロールの後でおまけについていた、登場作品の目録のような映像。あそこが一番良かった、と、妻も言ってました。

あ、一つだけ良かったこと。
前半の建築の見せ方や紹介の仕方はとても良かったかな。
アップにロングに空撮にCGに図面に、このあたりはかなり効果的だったし、これは現地で見るよりいろいろな側面を見る・感じることが出来た。

はあ……。

済みません……毒を吐きすぎたかな。
あんまりがっかりしたんで。
(一緒に行った家族も同じ感想だったので、念のため)

じゃ、お休み!

最新作2連発!!

あ、煽りました。
最新作といっても小説ではありません。

一つはこれ。

スクリーンショット 2016-02-09 23.11.50

短編と掌編二作で参加させていただいた別冊SF群雛のプロモビデオです。元はと言えば、王木亡一朗さんの詩に曲を付けさせていただいた『欠伸なんかして』を作っている時に、何となく曲を付けたのが始まり。
ノリで歌詞を書いて、日曜日の朝にふと映像も付けちゃえと思いついて2〜3時間で仕上げました。歌録りは映像を作ってから夕方に、という突貫作業でした。


歌詞はこんな感じですよ〜。


Quails, quails go writing stories
Quails, quails go reading masterpieces
Quails, quails go writing plots and dialogues
Quails, quails
Quails, quails


 (一応、応援歌になってるつもり!)

で、上述の『欠伸なんかして』も同日の録音。
これはもう、詩を読んだ瞬間にサビのメロディーが浮かんでしまったので、王木さんに頼んで曲を作らせていただいた、という感じです。作っていてとても楽しかったですし、《詩に寄り添う》という経験が新鮮でした。
英語の詞に曲を付けたり、曲を先に作ったりすると、基本的になるべく字余りにならないようにするんですが、これはもう全然曲にすることを想定していない詩(当然!)。場所ごとに結構字余りや字足らずが出てしまい、最初はどうやっても二番以降が歌えず、苦労しました。

結局、無理やり詩をメロディーに当てはめるのは止め、場所ごとに少しずつメロディーを変えて洋楽っぽい作りにすることで、全体がまとまりました。
メロディーをそれぞれ変えることで言葉の持つイメージを大事にできて、むしろ面白かったなあ、と思います。

しかしまあ、こんなにも違うもんですかね、同じ日に同じ人間がやって(笑)。

Sound Cloud上の僕のページに載せています
Sound Cloud上の僕のページに載せています

お耳汚しにて失礼──
 では、また明晩!



木陰の中の光を見る(イメージと現実−2)

今回は純粋に視覚的な話をしよう。CGの人にしか参考にならない話とも言えるけど、もっと雑学的な位置付けで気軽に読んでくれたら嬉しい。夏らしい話題だし。

この夏、天気の良い日が多いようだ。毎日強烈な日差しが照りつけて、これでもかと光を反射する地面には、樹々の、つまり葉の影がくっきりと映えている。

葉の形は概ね紡錘形とか雫型なわけだけど、その影が多数重なり合った時、隙間に形作られる光はどんな形をしているだろうか?

下から見上げると、こんなような見え方なのだから、地面に落ちる影もまあ概ねこんな感じだと思う人が多いことだろうと思う。
丸っこい葉っぱの連なりに削り取られた光なのだから、凹んだ感じのカーブで囲まれた形になりそうだよね。

見上げたときに見える葉っぱの連なり
見上げたときに見える葉っぱの連なり

 

でもね、ちょっと違うんだ。
はい、ここで身を乗り出して。

葉と葉の隙間が大きい場所であれば、まあこんな感じにも見えるだろう。でもね、樹は立体。葉っぱは幾重にも重層的に重なっているのだ。平面的に見れば凹んだ形に見える隙間でも、太陽の光から見れば、その形はもっとずっと複雑なもの。
そして、そこを光がすり抜けられる隙間は、実は結構狭い。ぱっと見で光が抜けていないように見える隙間を、太陽の光は順々に反射し、屈折しながらくぐり抜けるのだ。そして、地面に像を結ぶ光の形は、こんな風になる。

葉と葉の隙間にある光は、真ん丸いものが多い!
葉と葉の隙間にある光は、真ん丸いものが多い!

 

ね、真ん丸い光が幾つもあるのが、分かるかな?
光って不思議でしょ?

何かの形に似ていることに気が付いたひと?

そうそう、海とか、太陽の光で遠くにキラキラ輝くものを撮影した写真に、こんな感じの丸い光がたくさん写っているよね。あれも光の反射と屈折が生みだしたもの。

ちょっと、面白いでしょ?

イメージと現実は、時に異なった顔を見せるのだ── 淡波亮作w

植物ネタだから、本日の自著紹介はこれにしておこう。

『奇想短編集 そののちの世界4 フローラ』

フローラ
フローラ:一番強いのは、やっぱり植物なのだ!

 

では、この記事がいつか誰かの役に立ちますように!

ケプラーズ5213の作品ページを更新

今日はごく短い記事です。
ずうっと放っておいた『ケプラーズ5213』のCG ブレイクダウン映像 for ブックトレイラーがようやく完成しましたので、ケプラーズの作品ページにリンクを追加し、リンク画像も新規作成して差し替えました。
作品ページに行かなくても下記からどうぞ!

 

CG制作のWIP画像とレンダリングされた各要素を時間軸で並べたブレイクダウン映像はこちらです
CG制作のWIP画像とレンダリングされた各要素を時間軸で並べたブレイクダウン映像はこちらです

 

いつもどおり、CG制作とコンポジット(合成)はBlender、映像編集はMotionで行なっていますが、まだMotionの機能がよく分からず、実は大半の編集はBlenderの映像編集機能で行ないました。Motionでやったのは文字入れや最後の仕上げ程度になります。

では、ぜひご覧くださいませ〜!