《同盟のセミナー》と書くと、なんだか怪しげな自己啓発セミナーのようですが、そうじゃありません。僕が一般会員として参加しているインディーズ作家のためのNPO法人、日本独立作家同盟が主催するセミナーの第三回目、『大原ケイ「日本の作家よ、世界に羽ばたけ!」』に参加してきましたという報告です。
(本日はですます調で)
最初に言うと、世界に羽ばたくためにはまず《英語に翻訳された本があること》が条件。それがなければ《世界に羽ばたきたいからこのセミナーの内容を知りたい》という作家の希望に応えてくれるものではないということを、お断りしておきましょう。
僕は同盟のセミナーに参加したのが初めてだったので、それを置いてもためになったことがたくさんありました。(第一回を家庭の事情でドタキャンしたのが本当に残念!)
心に残った言葉、参考になりそうな言葉を残しておきましょう。自分の記録も兼ねて。
まずは大原ケイさんのセミナーから。
■(アメリカでは)どういう本がダメなのか
・「絶世の美人」「美少女」キャラや、「紅一点」のグループ
→美人という個性はないよ。どんな美人なのか、どんな人間なのか、それを描かなければ何もアピールしない。
(それを描くのが楽しみなんですよね!)
→男女平等観点、ポリティカルコレクトネスの観点からも、男の中に女が一人というのは、日本で受けても世界的にはNG。
(『孤独の王』のパーティーは女性が二人だ、よし)
・微妙なこころのひだを描いた「ふわっ」とした感性
→これは、日本人の感性にのみ受けそうなものではダメ、ということかな。海外の文学でも微妙なこころのひだを描いたものはありますよね。だけど、それを受け入れて貰うためには、文学として相当高いレベルにあることが求められるのだと理解しました。当然、それはメガヒットするようなものでもなく、《読者の個人的な体験》として少数の読者の心にじんわりと残るものになります。だから、アメリカの出版社は食指を伸ばさないし……ということなのでしょう。逆にインディーズ電子書籍なら、それができるのではないかと思いますが。(高レベルの作品を書いて、それを英語化できれば、ですが)
・「高齢化」「少子化」が社会の標準であるという思い込み
・「日本人はスペシャル」説
→これ、どちらもポリティカルコレクトネス観点からNG。日本の常識は世界の非常識というやつ。これをきちんと書けなければ、世界に出られない。「?」「なんじゃこりゃ?」となってしまう。
では、
■どんな本なら売れるのか
・編集者の答えは“Great Story”
→正解はない。とにかくすごく面白いストーリーを、皆待っている。
そして、ヒント。
・フィクションなら王道の「成長譚」
→まあ、これは小説を書いているひとなら誰でもご存知の基本ですよね。
(僕はそれに反撥して《成長したはずなのにねじれていく主人公:『孤独の王』のセニーロくん》を書いたりしますが、それが王道になれない部分なのでしょうか……w)
・日本ぽくても日本ぽくなくてもいい
→とにかく面白ければ、ということ。例に上げられていたのが「おしん」。
とても日本ぽいと思いがちですけど、アジア・中東圏で相当受けたというのは記憶にありますね。ああいった構図は万国共通。いじめ抜かれて苦労して苦労して成長していく姿に、誰もが涙するのですものね。
逆に、日本ぽいモノ、(僕の理解では、いわゆるジャポニスム)が受けるというのは単なるコチラ側の思い込み。『SAYURI』がヒットして芸者モノがたくさん書かれたけど、柳の下にドジョウはいなかった。芸者が受けたのではなく、成長譚、Great Storyだから受けたんだよ、というお話でした。
では次。第二部の
“映画監督 ヤン・ヨンヒ氏、株式会社ボイジャー代表取締役社長 鎌田純子氏と、編集者の西野由季子氏を交えたトークセッション”から。もちろん、大原さんも一緒です。
「世界一の嘘話を読ませて!」
鎌田氏。
→すんごいホラ話を書きたいな! そう思います。
「孤立の孤にならず、個を大事にしながら繋がっていく」
ヤン氏、大原氏。
→同盟の趣旨・活動が素晴らしいと仰ってました。小説を書いていると、個人作業だけにとかく孤立しがち。自分の個性を大事にしながら、情報交換・意見交換・相互批評などなど、繋がりは大事だよ、ということ。
「デジタルによる自立を大事にしながらコミュニケーションを大事にする」
ヤン氏。
→「編集ソフトを使えるから編集ができるわけじゃない!」と映像コンクール応募者に激怒したというエピソードを話されました。まさにその通り、と思います。ワープロで文字を打てても作家にはなれないよ、と仰ってました。
大事なのは道具でなく《何を、どうやって表現するか》ですよね、当然です。
《形を作っただけで表現できた気になってはいけない》。改めて心に刻みます。
「人の話を聞いたからといって、自分が消えるわけではない」
→これはどなたの発言だったか、ちょっと覚えていませんが、ヤン氏だったかな。
こういう言葉には勇気づけられますね!
全体を通じての感想として残ったのは、
「世界の入り口は英語である。そして、それはアメリカである。世界中に読まれたかったら、まずは英語でアメリカに読まれるものを」
「本当に面白い物語は世界共通である」
「文学は(少なくともアメリカでは)エンターテイメントの一分野である。エンターテイメントとして磨き上げなければ世界に出ることは困難」
「書くことは『心のパンツを脱ぐ』こと」→その通り!
身が引き締まります。
そして、一つだけ残念だった点、これは僕自身のことです。
理事長の鷹野凌さんとは挨拶させて頂きましたが、他の方とは一言も交わすことができませんでした。これは僕の性格なのでしかたがないのですが、懇親会ではぽつんと一人になってしまい、数分で退場してしまいました……。
例えばもし、よくあるビジネスセミナーや展示会のように名刺入れを首から下げるとか、名札を配ることができれば、名前だけ見覚えのある作家同士が声かけあって繋がりを生めるのになあとも思いました。(独り言です)
もちろん、その準備にも経費が掛かると思いますから、必要であれば寄付する心の準備はあるのですが……。
実は、ある独特な方法で既刊の海外進出を目論んでいます。それが、今回のセミナーに出た目的の一つ。方法はまだ内緒ですが、そのヒントになるような話は、残念ながら聞けませんでした。
でも、これから書く新しい物語の参考として、大いに役立つのではないかと思っています!
さて、この記事がいつか誰かの役に立ちますように!