カテゴリー別アーカイブ: 詩

世界はもう終わるっていうのに


世界はもう終わるっていうのに
産休を取るきみは満面の笑顔で
未来のきみを見る

世界はもう終わるっていうのに
何年も先までずっと続く仕事を
取って喜んでいる

世界はもう終わるっていうのに
二十年先のことを語り続けてる
見なかったつもり

世界はもう終わるっていうのに
あいも変わらず希望はそこらで
偉そうに横たわる

世界はもう終わるっていうのに
僕はこうしてとりとめもなく、
明後日を想像して

世界はもうほんとうに
もう明日にでも
終わってしまうんだと
知っているのに

いつもいつもいつもいつも
いつもいつもいつもいつも
変わらず不安に揺れている
いつもいつもいつもいつも
いつもいつもいつもいつも
何も心配などいらないとは
いつもいつもいつもいつも
いつもいつもいつもいつでも

誰ひとり
言い切ってはくれない

世界がもうほんとうに
終わってしまわないのだとしても

これから何かが良くなるとか
そんな嘘は
どこにも届きやしないのだ

 


 


淡波ログに掲載した作品を中心に書き下ろし作品を加えた初の詩集『猫になりたい』。
乾いた心にするりと忍び込む、読みやすい詩編を多数収録しています。


詩?/どこへいった


あれはどこへいった
これはどこへいった
わたしはどこへいった

ありもしないものを願ったからか
与えもしないものを求めたからか

世界はなにで満たされているのか
わたしはなにで満たされているのか
わたしはなにでも満たされていないのか

わたしはからっぽなのか

世界はからっぽなのか

憎しみはどこから来るのか
憎しみはどこへ向かっているのか

時間はどこにあるのか
時間はどこにもないのか

すべては嘘なのか
すべては希望なのか
すべては夢なのか

すべては
愛なのか

すべては
愛ではない
なにかなのか

なにが欲しいのか

どうしたら
嘘を嘘と思わなくなるのか

世界は

愛ではない
なにかなのか

わたしは

わたしは

わたしは

『ティプトン』連載を終えて

先週で連載を無事終えることの出来たSF叙事詩『ティプトン』ですが、当初から読者さんがいるかどうかまったく分からない中でのスタートでした。
『ケプラーズ5213』のサイドストーリーとはいえ、登場シーンも少なく、ほんの脇役をメインにしたこの作品。
しかも詩です、叙事詩。でも、ストーリーらしきものもありません!
連載を始める前から、これは誰も読む人がいないんじゃないか……と考えながら書いていました。

いえ、書いたのは巨大宇宙船ティオセノス号の引退した老人ティプトン・スティーブンス。それを彼の死後、コントロール・センターが編纂して1冊の本にまとめたものです。
それを訳したのが僕。

誰も読まないかも、と思っていましたが、幸い何度かツイートをリツイートしていただいたりしました。感想はまだありませんが……。

一言でいえば、こんな内容です。

はっきりと真実を知らされていない末端の乗組員が詩人の想像力という力を得て、宇宙船の存在意義や目的に疑問を持つことで、あらゆる事象に関して思考の環を広げてゆきます。

いつ、目的地に着けるのかは分からない。もちろん、間違いなく自分は生きてあの星(ケプラー186f)を見ることができない。宇宙を航行しているとは言っても、船外に出ることはない。本当にここが宇宙なのか、本当にティオセノス号は飛んでいるのか、それすらも確信を持つことが出来ない自分。
生まれ育った巨大宇宙船内の環境以外は何も見たことがなく、昔の映像で見た地球という星がフィクションでないかどうかも確かめるすべはない。
自分の存在すらあやふやで、ただ、暗い廊下で銀のレコードを回しながら音楽を流して歩くだけの余生。

そんな詩人ティプトンの感性が、身の回りの全てに対して疑問を持ち、思いを巡らせ、数々の短い作品を残しました。

翻って、現代社会の持つ様々な矛盾や問題点を凝縮して持っているのが、このティオセノス号という閉鎖世界だったのですね。


さて、連載内容に加筆・修正しながらワープロ上で一つにまとめ、表紙を作成しました。
まだもう少し、推敲が必要です。

表紙はもちろん、ティオセノス号です。『ケプラーズ5213』のPVに登場していますし、『そののちの世界』の表紙にも使われています。ケプラーズの世界にもっと広がりを出せるといいな、という思いと、どちらかが既読の読者さんの目に留まればいいな、という思いが半々です。
冒頭のアイキャッチ画像とそっくりですが、違う絵です。ぐるぐる回転しながら飛んでいるアニメーションの、違うフレームを使ってレンダリングした画像ですね。CG、便利です!

もしかしたら、もう少し手を入れるかもしれませんが
もしかしたら、もう少し手を入れるかもしれませんが


そうそう、タイトルは『希望の夜、絶望の朝』に改題しました。
もともと、連載時にもこのタイトルでコントロール・センターに蔵書していた本という書きかたをしていましたし、それがいちばん自然なかたちかな、と。


最後に、名前について。

通常、ティプトンというと名字なんですよね。
この方の場合は名前がティプトンです。名字はスティーブンス。スティーブンスといえば、「ス」を取れば名前になりますね。

人種も国籍もない世界。親も知らず、自分の名前の由来も分からない。名前と名字の順番も完全にごっちゃになった世界ですから、彼の名前もそんな混沌を表わしていたりするのです……よ。


では、今晩はこれまで。

また、発売日が決まったら告知しますね!

叙事詩『ティプトン』連載第21回

“だが、ケプラー186fには可能な限り多くの人類を送り届ける必要があるのだ。人種・文化の多様性が失われてはならなかったし、人類が未来永劫生き続けるためには、やがて必ず辿り着く未開の惑星に十万人規模のコロニーを築きあげることが必須の条件である。というのが、多くの科学者が導き出した結論であった。”

『ケプラーズ5213』より


── 21 ──


人種という概念もまた
理解することは困難だ
とてつもなく
困難だ

常に暑い大陸と言われても
思い浮かべられるのは
オーシャン・シリンダーの海が
せい一杯だろう

人類の生まれた場所は
アフリカという名の大陸だった

そこまではいい

アフリカには

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)

keplers_eyecatch


本連載は、今回で終了です。
4ヶ月半にわたり、ご愛読ありがとうございました。

後日、内容を改訂し電子書籍としてまとめたものを出版予定です。
出版の際にはまた、こちらでお知らせします。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

叙事詩『ティプトン』連載第20回

“フリッジで眠る人間は皆平等であり、裕福であった者も貧しかった者も等しく守られなければならない。新天地には貨幣経済も土地所有も持ち込まぬのだから、そこに到着するまでの間に人と人をすべからく対等な関係に戻さねばならない”

『ケプラーズ5213』より


── 20 ──


貨幣価値とは何だ
バランス、だろうか

貨幣経済というものが
かつての母なる星にはあった

多数の貨幣を手にしたものは
富裕層と呼ばれ
そうでないものは貧困層と呼ばれ
世界は二つに分断されていた

貨幣は食べ物や着るものを手にするためのみならず
住む場所とすら交換することができたそうだ
本当に、そんなことが?

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

叙事詩『ティプトン』連載第19回

“俺も、そうだな……。ケプラーの植物をこの目で見たい。ここのネイチャー・シリンダーなんかにはない、圧倒的に多様な生態系があるんだろうな。俺も、この足でケプラーの大地を踏みしめたいよ”

『ケプラーズ5213』より


── 19 ──


季節という概念は
概念にすぎない
この季節しか知らない
私たちにとって

それが
天体の軌道によって起こるものだと
頭では理解している
つもりだ

しかし
(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

叙事詩『ティプトン』連載第18回

“「きれい……誰も知らない場所で、ずっとずっと、光り続けるのね」
二人は、しばらくの間じっとして、火花と、その遥か向こうの宇宙を見つめていた。ふと、ケイトの頬を涙が伝った。
「私も、一人だけで、誰も知らない場所で生きているんだ。どうして私だけ生き残ったのかしら……」”

『ケプラーズ5213』より


── 18 ──


足の下に地面というものがあった頃
地震という自然現象があったそうだ

私が体験したあの揺れが
地震でないとしたのなら

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

叙事詩『ティプトン』連載第17回

“二百五十年のスリープ期間で、船は二十五回のワープ航法を繰り返すことができる。ティオセノス号の能力では、一回のワープ航法で三光年を飛び越えることが可能だった。現在位置からケプラー186fまでは概ね五十~七十光年の間であると考えられていた。無論、コントロール・センターでは正確な距離が分かっていたが、一般の民衆にはそれも知らされていなかった。”

『ケプラーズ5213』より


── 17 ──


私にも若い頃があったのだと
年老いた私は思う

だが、
それは本当のことなのか

とみにこのところ
過去の記憶が曖昧になっているのだ

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

『ティプトン』連載第16回

“アフタースリープ世代はこの宇宙での放浪生活が永遠に続くと思い込むことで、逃げ場のないこの空間を自分の故郷と考えることもできたのだ。”

『ケプラーズ5213』より


── 16 ──


あと何年、歩き続けられるだろう

もし本当にジャンプが起きれば
その時、私の寿命は突如として終わるのだ

私の生きている間に
それは

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

『ティプトン』連載第15回

“この美しい姿を目に焼き付けていよう、ずっと恋人もできず生きていくことになっても、それでいい。”

『ケプラーズ5213』より


── 15 ──


1%の狂いもなく
恋愛はコントロールされる

それが許されないことを知ったのは
恋愛という感情を知ってからのことだ

それが

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。