Works of 淡波亮作

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希望の夜、絶望の朝
淡波ログにて2016年6月から11月にかけて『ティプトン』と題して掲載された作品を改題したものです。
ティプトンとは、SF作品『ケプラーズ5213』に端役として登場する老人の名前。惑星ケプラー186fを目指して永遠とも思える時の中で航行し続ける巨大宇宙船ティオセノス号で生涯を過ごし、ティプトン・スティーブンスはこの作品を書き記しました。
ケプラーズ5213』の主人公であるソー・カワハラ、ケイト・シルバーヴァーグと交流する中で様々な疑問や想念が生じ、ティプトンはひっそりと詩を書き溜めていました。
本作は、彼が遺した原稿をコントロール・センターが編纂し、淡波亮作が日本語訳して電子書籍化したものです。
漆黒の闇と無機質な白い空間に包まれ、絶望と希望の狭間で揺れる無名の詩人が遺した三千年後のSF叙事詩を、どうかご堪能下さい。 。
(2016年12月12日 Amazon Kindle Storeより発売)

掲載作
希望の夜
絶望の朝
故郷ふるさと
故郷ふるさと 2
新しい知識
生命
未来、人口、嘘

銀色の音楽は

漆黒の虚空

海を知っているか
虚像
ネイチャーという夢
コントロール
ジャンプ
記憶
錯覚
貨幣なる絶対的なもの
時間、季節、空間
絵空事
ピックアップ「光」
あの少女は知っていたのだ

わたしが
嘘の城に隠れ住んでいることを

あの少女は束の間
わたしに見せてくれようとしたのだ

わたしの築き上げた檻は
簡単に抜け出すことができる程度の
やわな造りなのだと

あの少女は束の間
わたしに見せてくれようとしたのだ

漆黒の中にこそ
光が生まれることを

わたしは恥じる

絶望とは
わたしのような者のために用意された
浅はかな言葉ではないのだ

この船は
希望を生むためだけに
あの少女を産んでくれたのだ

少年の選んだ
あの少女こそが
わたしたちの漆黒の中に産み落とされた
新しい光の粒なのだ

あの少女こそが



©Ryousaku Awanami 2017.