『淡波亮作』はもちろんペンネームですが、本名を名乗るまでの者でもありませんので、秘密ということにしておきましょう。
小説を書き始めたきっかけは、実はハリーポッターなのです。私はこのシリーズが大好きで、日本語訳が出るずっと前から原書で読んでいました。やがて日本語訳が出版されると家族もみな読むようになりましたが、原書を読んでいる私は常に家族より1年近くも早く読み終わってしまうわけです。
そうすると、「この次の話はこうなるんだ」とか、「あの謎は実はね、」なんてことを話したくて仕方ないのです。
「だったらお話で教えてよ」という流れで、第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』Harry Potter and the Deathly Hallowsの家族への読み聞かせを始めました。<原書を見ながら日本語で読み上げる>というやり方は少々きつく、話がきちんと伝わっていないのではないかという心配も大きいものがありました。そんなことで、3・4章目あたりからでしょうか、翻訳を始めたのです。
毎週、だいたい1章ずつ翻訳し、プリントして家族に読ませる、ということを9か月ほど続けたでしょうか。日本語版が出版されるほんの数週間前に『私家版 ハリーポッターと死の秘宝』は完成し、同時に家族全員が読み終えました。
一度も校正を行わず、英語のよくわからない部分は適当にごまかしたにも関わらず、家族からは高い評価を得られました。本家の翻訳より面白い、なんて言われていい気になったりもしたものです。2008年、春の出来事です。
同時に、この調子で自分の小説も書けるんじゃないかな、と思ってしまったのが、書き始める力の源になりました。
それまではちょっと粗筋のようなものを書き散らかしては放っておく、ということが続いていましたが、「書ける!」という妙な自信を得たことで、きちんと一冊書いてみようかと思えたのですね。
『壁色のパステル』は、ある日見た夢を、かなり忠実に再現したものです。目が覚めた瞬間、そこそこはっきりした結末と、曖昧模糊とした全体のストーリー、それにかなり鮮明な場面場面のイメージが頭にありました。夢には時間の感覚がありませんので、全体の構成はなく、画面としての映像が頭に張り付いていました。
それを忘れてしまわないよう、すぐにMacのワープロを開き、一心不乱に書き進めたことを覚えています。
もしあの夢を見たのが週末でなかったら、そのまま忘れてしまったかも知れません。淡波亮作も生まれていなかったのではないかと思うと、運命とはじつに不思議なものです。
運命だなんて、ちょっと大げさかも知れませんが…。
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