光を纏う女
『月刊群雛2015年8月号』に掲載され、好評を博した作品『光を纏う女』を中心に、ふしぎな掌編『波』とSFミステリー風味の短編『瞳』を加えた三編からなる短編集です。
ものがたり
『光を纏う女』
エロティックでちょっと不気味で美しい不思議なサスペンス短編
(『月刊群雛2015年8月号』に掲載され、好評を博した作品です)
こんな調子で始まります。
金糸銀糸を纏う女が、俺を誘惑していた。ダブルオーセブンのゴールド・フィンガーで見たような金箔まみれではない、有機的ななまめかしさを感じさせる不思議な光りかただった。まさに、肉体に直接刺繍を施したように、女の肢体はキラキラとしなやかに煌めき、揺らめいていた。
そうだ、間違いがなかった。女は俺を、誘惑しているのだ。俺は身を乗り出して………
『波』
シュールレアリスム的な掌編
こんな調子で始まります。
砂浜を歩く私の足下には白く泡立った波が渦巻いて、私の角張ったかかとをさらおうとしていました。私は沖へ向かって、少しずつ歩いていたのです。黒っぽい重い砂に少しだけつま先をめり込ませながら、私は歩いていました。
数歩進んだとき、私は感じました。ゆるゆると動く水の屈折を通して見える私のゆがんだ足先が、波のその下へと抜けていたことを。
その下? その下は砂のはずでした。けれども……
『瞳』
SFミステリー風味の短編
右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足!
左手、右手、左手、右手、左手、右手、左手、右手!
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!
フッ、フッ、フッ、フッ、フッ、フッ、フッ、フッ!
飛べ! 無理だ! 曲がれ! 滑るな! 転ぶなアアッ!
真っ暗だ、真っ暗じゃないが、真っ暗だ!
目が合っただけだろう、いや、目すら合ってないだろう、なんなんだ、この男、いや、男かどうかも分からない。サングラスをしてた、帽子を被ってた、俺を見てた、そうだ、俺を見てた!
なんとも、スリリングな始まり方ではありませんか!
続きは、本編にてお楽しみくださいねっ!
©Ryousaku Awanami 2015 - 2016.