詩集・猫になりたい
淡波ログにて掲載の作品を中心に、新作、書き下ろし作品を多く加えた詩集です。表題の『猫になりたい』は十篇で、半数は新作になります。
全体が三部で構成されており、《人の世》《小さき世》《猫になりたい》と、少しずつ視点を変えて世界を見つめる内容になっています。
掲載作
1.ひとの世
たからもの
あの夢 この夢
ハピネス
小さな声で
冷たい雨
いついつまでも
いろいろあるから
ダウンロード
月を見つめて 思うことがある
謝り続けた日
谷と山
混じり合う
愛
インディゴ
ほんとうに世の中には
それは詩じゃない?
日曜日の午後だというのに
2.ちいさき世
五つの花
小さな戦い
花と種
石
破壊者
さくらのかおり
3.猫になりたい
猫になりたい
ごろごろごろおん
たぷたぷ
今だ
ぱくり
うるさいあいつら
わたしは逃げる
しゅっぱつ
変わらない
だから私は 猫になりたい
ピックアップ「猫になりたい─3」
お腹がこんなにたぷたぷしていても
めやにはなくそたっぷりたまっていても
生まれてこのかた
一度もお風呂にはいっていなくても
一日、何もしないで転がっていても
食べたい分だけ食べて放っておいても
好きなときに好きなように鳴いても
トイレの砂をぐちゃぐちゃに散らかしても
障子をびりびりに破っても
カーテンをびりびりに破っても
ソファをばりばりに破っても
柱や扉にぎりぎりと傷を付けても
じゅうたんを毛だらけにしても
一張羅を毛だらけにしても
撫でられて嫌な顔をしても
おいでと言われて逃げても
爪を立ててちょっとした怪我をさせてしまっても
花瓶を倒してじゅうたんを水浸しにさせてしまっても
もしわたしが猫だったら、
誰にも叱られることはない
もしわたしが猫だったら、
何も気にせず
ただ愛されて
幸せな日々を過ごせるのに
©Ryousaku Awanami 2015 - 2016.