Works of 淡波亮作

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壁色のパステル
紙の本を想定した長さ:約204ページ
(38文字×19行の文庫本サイズでレイアウトした場合。紙の本はございません。Amazonさんの長さ計算は単純な文字カウントによるもので、改行、改ページを考慮していないようです。実際のレイアウトに出来る限り近い形であれば上記のページ数となります)

概要
淡波亮作の初作。妻、夫、それぞれの孤独と、不器用な家族の小さな事件をやわらかい筆致で描く、ほっこりと心温まる家族小説です。
ストーリー
彰子しょうこはいったいどこへ? なぜ?
何ひとつ不自由なく、だが無為な日々を過ごす専業主婦の瀬口彰子。ある時突然姿を消した彰子に、夫である建築士の瀬口広平は戸惑い、自らを責める。妻が隠すように持っていた伝説の抽象画家ヒルダ・ヴーハーの額を見つけるが、娘の言葉から、それが自分の不在時にのみ飾られていたことを知る。一抹の寂しさを感じる広平だが、失踪の理由を見出すことは出来なかった。

妻の失踪をきっかけに、平凡で平和な家族に訪れた小さな危機と再生を描きます。

小説について
初めての小説には、やはり自分の色が濃く出るようです。主人公の彰子はもちろん女性ですが、私自身の姿がかなり投影されています。中でも美大受験のシーンは、私自身の芸大受験経験そのものに近いエピソードとなっています。

環境問題の感じ方もそう。私は若い頃に環境コンサルタントの勤務経験があり、日々、アセスメントの調査や報告書作成を行っていました。環境を保全したいという気持ちと、アセスメント報告書の結論は必ずしもイコールではありませんでしたが、少しでも環境に優しい方向へと様々な開発計画を導けるよう、対象地域の環境を正確に把握できるように腐心していました。

地球環境を守りたい、というナイーブな気持ちから働き始めた環境コンサルタントでしたが、現実と理想はやはり大きなギャップがありました。それでも、南の島の酋長ツイアビの『パパラギ』や、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読んで以来持ち続けている開発や科学礼賛への疑問は、今も変わりません。

また、不器用で青臭く、生真面目な夫の広平もまた、私自身の投影にほかならないでしょう。自分の二流さ加減を痛いほど理解しながらも何とか社会と折り合いを付けていく姿は、多くのサラリーマンの方々の共感を呼ぶものではないかと信じています。



©Ryousaku Awanami 2014.