叙事詩『ティプトン』連載第20回

“フリッジで眠る人間は皆平等であり、裕福であった者も貧しかった者も等しく守られなければならない。新天地には貨幣経済も土地所有も持ち込まぬのだから、そこに到着するまでの間に人と人をすべからく対等な関係に戻さねばならない”

『ケプラーズ5213』より


── 20 ──


貨幣価値とは何だ
バランス、だろうか

貨幣経済というものが
かつての母なる星にはあった

多数の貨幣を手にしたものは
富裕層と呼ばれ
そうでないものは貧困層と呼ばれ
世界は二つに分断されていた

貨幣は食べ物や着るものを手にするためのみならず
住む場所とすら交換することができたそうだ
本当に、そんなことが?

(電子書籍化にあたり、公開を終了しました。本連載記事における公開分は、全体のごく一部になっています。ご興味のある方は、電子書籍版をお買い求めくださいますと幸いです)


本連載は、原則として毎週木曜日に掲載します。

晩年の詩人ティプトンは、SF作品『ケプラーズ5213』にちょっとした脇役として登場しています。本当にちょっとした脇役ですが、案外存在感があって、作者のお気に入りキャラクターなのです……

地球を旅立って三千年後、人類は尊い犠牲を払いながらも、計画通りに492光年彼方の惑星ケプラー186fに到着した。
人類は惑星の各地に入植キャビンを送り込み、水と緑に溢れた美しい新天地に入植地を築きつつあった。
だが、人類の生息環境として申し分ないその惑星に、先住生物が存在しないはずはなかった。

 

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