読んだよ/長谷川善哉著『月に泳ぐイルカ・こんぺいとうの星降る夜に』

ひょんなきっかけでこの方と音楽(特にNew Order)の話で盛り上がり、長谷川さんの人となりを少しだけ知りました。80年代のイギリス音楽が好物な人ってあんまり出会ったことがないので、とても嬉しい出来事でした。

でも、実はそれがきっかけで著作を読んだのではなく、1話目の『月に泳ぐイルカ』は、もっとずっと前に読んでいました。
長谷川さんは以前から淡波ログを時々読んでくださっていると仰っていたので、それも頭にあったし、長谷川さんの作品の評判は藤崎ほつまさんなどからも伺っていましたから。

『月に泳ぐイルカ』を読んで、「いいなあ、次の話も早く読みたいなあ」と思いながらもどんどん月日だけが流れて行ってしまった頃、偶然前述の盛り上がりがあって、俄然、《長谷川善哉さんを読みたいレベル》がグリリとアップしたというわけなんです。


さて、作品です。1話目の方は読んでからちょっと時間が経ってしまったこともあり、具体的な話はあまり覚えていなかったりします(記憶力のなさを棚に上げ……)。でも作品の持つ空気がとても好きだと思ったこと、次を読みたいと思ったことは忘れません。何も紹介しないと興味を持ってももらえないかもしれないので大ざっぱに言うと、恋の話です。田舎から東京に出てきた主人公が恋をして、少しずつ大人に……という流れは二作に共通していますね。
内容を詳しく覚えていたところでネタバレになるので、いつも通り《雰囲気感想》で。

『こんぺいとうの星降る夜に』は、漫画家を目指して上京した恋人を追ってきた女の子の話。彼は現実の壁に阻まれて才能をすり減らしていき、彼の影響で絵を描くようになった彼女はやがて……という甘く切ない物語です。
(説明になってないか……)

全体に言えることは、上品で良い香りがする文章・作品だなあということ。それから瑞々しい。優しくて、柔らかい物語。ときに辛辣な現実を突きつけられるけど、全体を覆う空気は優しい。読んでいて気持ちが良く、安心できる。強烈な個性はないかもしれないけれど、これはとっても大切な美点なのではないかと思います。
ちょっと下世話でポップなところ、ありきたりに陥りそうなところを半捻りして。

あれ?
これはNew Orderの音楽と通じるものがあるんじゃないか?
と、思ったりしました。
好み、センス、性格、面白いですね。当たり前ですが、表現って、自分がボロッと出てしまうもの。
New Orderが果たして万人向けの音楽かどうかは判らないけれど、長谷川さんの作品を嫌いだって言い切る人は、少なくとも《自分自身が個性的な表現者》か《個性の強いものでないと認めたがらないタイプの人》以外にはあまりいないんじゃないかな、と思ったりしました。読みやすいということをネガティブに捉える人もいますけど、ポジティブに読みやすいです。

感想に、なったかなあ……

ポップさと切なさ、分かりやすいんだけど軽くもない。
なんか、この曲の雰囲気と似てません?
(サビの歌メロの美しさよ!)

じゃ、今日はこれまで!

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