爽やかな感動をもらいました!:くみた柑 著『記憶の森の魔女』

前半を読み、物語に引き込まれながらも、少しだけ不安が頭をもたげていました。まさかこれ、支離滅裂な妄想とか夢オチじゃあないだろうなあと。いやあ、全く失礼きわまりない読者でした。
そうかなと思わせておいて、すべての出来事がピタッと現実に収斂するエンディングは、まさに心の中の霧が晴れるようにぱあっと世界が開けました。訳が分からないようでいて、その実キッチリ構成された澱みのない語り口。処女作ならではとも思える瑞々しい描写と相まって、とっても好感の持てる作品なのでした。

無駄を削ぎ落とした端正な文章の中には、さらりと忍ばせたちょっとしたミステリー味が。ヒロコやマチコというちょっと古めかしい名前の使い方にもセンスと巧さを感じました。
ふむふむ、面白い小説ってヤツは、こうやって謎が物語を牽引するのだよなあ〜と改めて思い出していました。
初心忘るるべからずですね。

20分で読める軽さに潜んだ重いテーマ。そして極上の読後感。それが引いていってしまうのがもったいなくて、僕は電車の中でしばらくのあいだ目を閉じて、物語の世界に浸っていました。

ラストシーンを読んでじ〜んとした後は、あとがきを。
そして、ああ、これはある意味実話だったのだ。体験が書かせた物語は厚みがあるなぁと大いに納得し、さらなるじ〜んを味わった次第。

他の作品をこれから読むのが楽しみな、素敵な作家さんにまた出会いました。もっと早く読めば良かったのに!
それにしても、絵の上手い人は文章も上手いよなあ。

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では!

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